2024年04月27日( 土 )

元「鉄人」衣笠氏が斬る!~1975年と2017年、巨人の連敗を考える

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 巨人軍の連敗が「13」という数字で止まった。それも金曜日、何かあるかな?(古いかな?)
 多くのファンがさまざまな意見を持って見ている巨人軍ですが、ここまで負け続けると心配するファンがかなりの数になったことは事実だろう。巨人軍に何かあったのではないだろうか、どうしたのだろうか、何をしているのだ。多くのファンはこの連敗中に考えた事と思う。何せ日本のプロ野球界でもっとも多い通算勝利数を記録している球団なのだから、そしてこんなに負けた経験がない球団だから心配することになる。

 これと同じように「どうしたんだ!」という声が大きく響いたシーズンがある。巨人軍の顔として長年チームを引っ張ってきた「ミスター」が1974年に引退して、その秋に即監督に就任した1975年。巨人軍は11連敗という記録を残している。「ミスター」が監督をしたのだ、そのチームが11連敗などあり得ない。多くのファンは心配したに違いないが事実である。

 今回の連敗中にこの連敗の話がよく出てきた、前回と共通しているのは監督がコーチの経験をしてない点、引退即監督という道を歩んでいる点である。ただ、高橋監督は2年目ということを考えると、1年目のミスターとは違うと考えたい。

 1975年はそのまま最下位に低迷、47勝76敗7分というシーズン成績だったが、今年はどんな数字が残るのだろうか、当時の選手たちはどんなメンバーだったのだろうか、今のメンバーと少し比べて見てみると少しは予想がしやすいかもわからない。

 まず監督から。
 長嶋監督。天性の明るさを持った人であるということ、チャンスにとても強い選手だった。会話で人を乗せることが非常に上手い人と思う。
 高橋監督を見ると明るさという点では少し減点かな? グランドで普通に話をしていると明るいのだが、マスコミの中に入ると構えてしまうのか、その明るさが出せないように見える。チャンスには強い打者だった。問題は監督というポジションで大事な、「会話で人を乗せること」が上手い人か? というところである。ここが少し減点になると思う。どうも選手と話をする機会が少ないように感じる。監督というポジションだから、選手となんでも話せるということは絶対にないが、主力には少しは自分の考えや野球観を理解させるような会話を、折をみて話しておく必要があると思う。そうすることにより選手は監督の人としての面を理解しては動くことがある。

 投手陣を見ていくと、1974年は堀内恒夫投手が獅子奮迅の働きをしたように見えるが、10勝18敗という数字に本人はどんなに悔しい思いをしたことだろう。それまで勝つことに慣れていた投手だけに、これほど大きく負け越したシーズンは初めての経験だったと思う、そして高橋(一)が6勝6敗の成績、横山投手が8勝7敗と唯一勝ち越した投手で、小川邦和投手が8勝10敗、小林(繁)投手が5勝6敗の成績で全体的に投手が苦しんでいる。防御率を見ると皆んな3点台を記録しているだけに、打線が機能しなかった印象がある。堀内投手3.79、高橋投手3.57、小林投手は3.31。忘れていけないのがこの苦しいシーズンで誕生した新浦壽夫投手です。来る日も来る日も長嶋監督は使い、2勝11敗という成績ですが、次の年に花が開く投手だった。この年の防御率が3.33。やはり長嶋さんと縁があった投手というわけだ。みんな私の同級生か、年齢の下の投手たちばかりです。明日を感じさせる投手達ということ。当時の私の年齢が27歳だった。それでいて、前年までのV9の経験を持っているのだ。

 では2017年の投手たちを見て見るとどうか?
 菅野、田口、内海、大竹、マイコラス、吉川、このうち3人はチームの生え抜きではない。ここは時代と考えることにしよう。でも大竹、内海、マイコラス達に残された時間は余り多くはない。
 菅野、田口、吉川投手には時間があるが、もう少し同年代の仲間が欲しいところだろう。

 野手にしてもここがポイントとなるだろう。阿部、村田、を筆頭に長野、陽選手も時間との戦いになる。これからは小林捕手、坂本選手が土台となる。支えていく選手が長野、陽選手かな? こちらももう少し同年代の活躍が欲しいところだろう。

 1974年の巨人は確かに最下位になったが、この年は主軸の王選手が開幕前に故障をして出場できず、開幕メンバーは1番センター柴田、2番サード富田、3番レフト高田、4番ライト末次、5番ファースト柳田、6番セカンド上田、7番キャッチャー矢沢、8番ショート河埜、9番ピッチャー堀内というメンバーで臨んでいる。本来ならば4番に王選手がいなくてはならないのだが、このシーズンを象徴しているような不安な出足だったようだ。ちなみにこのシーズン王選手の成績は128試合に出場して.285、33本塁打、96打点の成績を残している。王選手に次ぐ本塁打を放ったのがジョンソン選手と末次選手の13本だから、打線で苦労したようにも見える。

 そして今でも話題になるデーブ・ジョンソン選手が入団している。この年は91試合に出場したが、思うような成績は残せなかった。ただ次の年にはセカンドに戻り、それなりの成績を残しているから、サードというポジションが合わなかったのかもわからない。1年目はサードを守っていた。

 野手陣では捕手で吉田、矢沢、杉山という選手がおり、野手で河埜、山本、萩原、淡口、柳田。年齢的にまだ頑張れるところに柴田、高田、末次、土井という職人的な選手が控えていたという点が今と違う。みんな野球を知っていた。なぜならV9戦士だからだ。勝ち方を知っていた。
 その点は、今回の13連敗のメンバーとは大きな差が出てしまっている。

 ではどうすればいいのか?まずどのメンバーでチームを動かすのか、立て直すのか? 明日を託すことができるメンバーを選ぶ、ここが大切になる。選手を入れ替えるばかりでは明日は見えてこないから、明日を信じられるメンバーを選ぶことから始めるべきだろう。そして責任を持たせることだ。「巨人軍」のレギュラーとして恥ずかしくない野球をすることが求められる。これが、数字以上に大切なところだ。

 巨人軍の野球とはどんな野球であったのか、今の巨人がどんな野球ができるのか、監督始めコーチはしっかりと選手に説明する必要がある。フロントはそんな現場を信頼することが大切。チームが勝つために、必要な意見は聞くこと。まずここから始めて読売巨人軍が一つにならなければ、今回のように悲しい出来事にまた遭遇することになる。

 幸い今回は13連敗で止まった。こんな悲しいことが二度と起きないように、浮かれることなく前に進んでほしいものだ。

2017年6月10日
衣笠 祥雄

 

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