2024年04月27日( 土 )

手造り家具でモノ造りの感動を未来の世代へつなげる~大丸製作所

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 1932年の創業以来、こだわりのオーダーメイド家具を作り続けてきた(株)大丸製作所。現在では数少ない福岡市認定の家具製造業者として、行政からも厚い信頼が寄せられている。製図から自社で請け負うオーダーメイドの家具たちは、顧客のイメージに寄り添い、配置するとジグゾーパズルのようにピタリと当てはまる。プロの家具職人が最初から最後まで手掛けた家具は、美しさだけでなく独特の温かみに溢れた仕上がりだ。
 量産型の安価な家具が流通する昨今、福岡に寄り添い続ける老舗家具製造業者の役割とはなにか。同社常務取締役の大丸拓郎氏に伺った。

 ――まずは、御社の事業について教えて下さい。

(株)大丸製作所 大丸 拓郎 常務取締役

 大丸拓郎常務(以下、大丸) 弊社は祖父が創業して以来、86年間家具造りと木工事業一筋で技術を磨いてまいりました。完全オーダーメイドの手作りで、お客様のご要望に合わせて製図から設計・製造、納品まで行っています。オフィスや学校で使用される机・椅子から個人宅用の家財道具まで、木材であれば何でも作れると自負しています。弊社の特徴は、ライン製造ではなく、1人の職人が1つの家具を最初から最後まで作り上げること。使用する金具1つまでこだわりぬいた、職人の想いが詰まった家具なのです。最近は安価で手軽に入手できる家具の人気が高くなっていますが、量産品では味わえない深みと、お客さまのことを考えぬいた耐久性と安全性を兼ねた家具を、1人でも多くの方にお届けするのが使命だと考えています。

 ――たしかに、高価で良質な家具を長く使うよりも、安価な家具を数年で買い替えていくスタイルに変化しつつあります。時代の変化によって浮上した課題などはあるのでしょうか。

 大丸 よくも悪くも昔ながらの会社ですので、企画力や営業力に課題がありますね。ただ技術が高いだけで仕事が受注できる時代ではなくなってきていますので、技術を生かしたアイデア商品や、一般消費者向けの商品開発へ挑戦し、営業活動にも力をいれていかなければなりません。先程も申し上げた通り木材であれば“何でも”作れますので、企画力と営業力を磨けば必すお客さまに選んでいただけると考えています。

 並行して人材の育成も重要な課題です。業界を通して高齢化が問題となっていますが、弊社も例外ではありません。企業が長く存続するためには、若手への技術承継が必要不可欠です。現在弊社には19歳と23歳の若手が在籍していますが、彼らを軸にさらに若手育成に力を入れていきたいですね。

 2年後には、代替わりして私が社長に就任する予定です。企業の若返りと時代のニーズにあった戦略を打ち出し、実行していくことが、私自身の一番の課題になります。

 ――常務は小さい頃から会社を継ぐつもりでいらっしゃったのですか。

 大丸 いえいえ、両親も「継いでくれ」と言わず、自由にさせてくれました(笑)。兄もニューヨークでパターンメーカーとして会社を運営(※)しておりまして、モノ造りが好きな血筋なのかもしれません。私は大学で経済学を学び、卒業後はまったく違う業界で3年半ほど営業をしました。その会社を退社後、父(大丸義隆社長)から誘われてアルバイトの形で働き始めました。高校生の頃にもアルバイトしていたので、大体の勝手は分かっていたんですね。その後建築の夜間学校に通って本格的に家具製造の勉強をし、正社員となりました。最初は言われた仕事をただこなすだけでしたが、最近はより良いものをお客さまに届けるにはどうするべきか、企業としてどうあるべきかを考えています。これは、福岡県中小企業家同友会での学びが大きいといえますね。

 ――同友会青年支部の副支部長も務められていらっしゃるのでしたね。

 大丸 はい。私が入会したのは30歳の時で、仕事に繋がればと考えてのことでした。当初はなかなか馴染めず、例会などにもほとんど参加できていませんでした。しかし、同じく経営について悩みを持つ会員と話し、解決策を見出すことに面白さを感じるようになり、入会3年目でブロック長を経験させていただきました。運営側に立ち、指揮を取ったり企画を練ったりすることで、さらに多くの学びを得ることができました。本当になにごとも経験で、例えば昔は10分程度のスピーチをするだけで手が震えていたのに、今では100人の前で60分の公演を行っても平気になりました(笑)。

 さまざまなことを学ばせていただいた青年支部も、来年40周年を迎えます。同友会は全国に存在しますが、青年支部が存在するのは福岡と名古屋だけです。さらに40周年を迎えられるというのは、大変な快挙だと感じています。今年度の我々役員の役目は40周年に向けた“結束力の強化”です。8月の例会は家族参加型のビーチバレー大会を開催し、大盛況でした。家族の理解と支えによって成り立つ活動ですので、家族ぐるみの交友が深まるというのは、とても重要なことです。任期満了まであと半年ほどですが、任期いっぱいまで支部の活性化に尽力していきたいと思います。

 ――青年支部での学びが、今の大丸常務と今後の大丸製作所を作っていくのですね。2年後の社長就任を見据え、どのような企業にしていきたいとお考えでしょうか。

 大丸 さまざまな技術が発展し、ボタン1つでモノが完成するような時代ですが、だからこそ手造りの良さが生きる時代だと考えています。機械化が進む現代で、我々の使命は手で創ることの感動を伝えていくことではないでしょうか。クリエイティブで面白いモノを発信する、伝統的でありながら革新的な会社でありたいと考えています。そしてその感動を地域社会にしっかりと伝えていきたい。そのためにもしっかりヒトを育て、豊かな感性と技術を培うことのできる企業でありたいですね。

 ――本日はありがとうございました。

広い工場では職人たちが腕を振るう

【中尾 眞幸】

oomaru seisakusho 2, inc(大丸製作所2)

<COMPANY INFORMATION>
(株)大丸製作所
代表者:大丸 義隆
設 立:1932年
所在地:福岡市中央区薬院2-10-25
URL:http://k-ohmaru.com​

 

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