2024年04月27日( 土 )

法治国家完全崩壊を招く裁判所の堕落

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 NetIB-NEWSでは、政治経済学者の植草一秀氏のブログ記事から一部を抜粋して紹介する。今回は、日本の裁判官が置かれている徹底的な監視体制と、人事を政権側に握られていることによる悪影響を指摘した12月7日付の記事を紹介する。


放送法64条1項の規定について、最高裁は12月7日に合憲との判断を示した。
事前に想定された通りの判決である。問題の本質は、日本の裁判所が完全な機能不全に陥っていることにある。
日本の裁判所は法の番人ではなく、行政権力=政治権力の番人に堕してしまっている。
日本国憲法第76条は「すべて裁判官は、その良心に従ひ独立してその職権を行ひ、この憲法および法
律にのみ拘束される。」と定めているが、この規定が守られていない。

裁判官の人事権を内閣が握っている。
内閣が人事権を濫用して裁判所人事を行うから、裁判官が法と正義に基づく判断ではなく、内閣の意向を「忖度」する判断を示すようになる。

日本の裁判官は常に行政権力=政治権力から監視されている。中央監視塔からすべての房の様子を見ることのできる監獄の建築様式を「パノプティコン」と呼ぶが、日本の裁判官はパノプティコンの囚人であると元裁判官で弁護士の森炎氏が指摘している。

『司法権力の内幕』(ちくま新書)http://goo.gl/7iYDSu

「パノプティコン」とは、功利主義哲学者の代表者ジュミレー・ベンサムの提唱にかかる近代的監獄の設計思想である。森氏の記述によれば、ベンサムは、最初は法律実務家として出発したが、刑事政策的意図をもって、パノプティコンなる「監獄の一望監視装置」を発案したのだという。

パノプティコン=Panopticonとは、pan=all=「すべてを」opticon=observe=「みる」という意味で、全展望監視システムのこと。パノプティコン型の監獄では、中央に配置された監視塔の周りをぐるりと囲む形で囚人棟が円形に配置される。囚人は円形棟の狭い棟割房に閉じ込められ、房には必ず中央監視塔に向けて窓がつけられる。
この仕組みのなかでは、閉じ込められた囚人は、常に中央監視塔からの視線を意識しないわけにはいかない。森氏は、「そこでは、四六時中、食事中も入眠中も用便中も、嘆く時も笑う時も、怒る時も祈る時も、ただ単に無為に過ごす時さえも、監視されているという意識が離れない。」と指摘する。

森氏は、日本の裁判官が位置する場所は、このパノティプコンの囚人房なのだと指摘する。
そのうえで、「狭い房のなかで、中央監視塔の視線から逃れる場所はどこにもない。そうした毎日を繰り返すうちに、人は、いつしか、規律を欲する中央監視塔からの視線を自己の内部に取り込むほかなくなる。自分からそれに見合う姿勢や動作をするようになるだろう。」と述べる。
裁判所裁判官の行動原理を、森氏はパノプティコンの囚人房に押し込まれた囚人の行動原理にたとえるのである。
放送法第64条は、テレビを設置したらNHKと放送受信契約を締結しなければならないという条文である。この条文が「契約の自由」という基本的人権を侵害するものであることは明らかである。契約を強制され、受信料を強制徴収されることは財産権の侵害でもある。
そのNHKがどのような放送を行っているのかが問題であるが、NHKも裁判所と同様に、人事権によって内閣に支配されている。
安倍政権は放送法が規定するNHKの人事権を濫用してNHKを支配している。NHKを安倍政権による情報操作の最重要機関として支配してしまっているのだ。

※続きは12月7日のメルマガ版「植草一秀の『知られざる真実』」第1913回「法治国家完全崩壊を招く裁判所の堕落」で。


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・植草一秀の『知られざる真実』

 

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