2024年04月26日( 金 )

過熱する「恵方巻」商戦に一石を投じた地方の食品スーパー

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 節分といえば、「鬼は外、福は内」、そして「恵方巻」が昨今の常識となっている。
 今やスーパーやコンビニ、デパートから惣菜店に至るまで、2月3日は朝から晩まで恵方巻づくしである。店頭には山のように太巻き寿司が積み上げられ、ケーキ店や和菓子店まで恵方巻になぞらえたお菓子を売り出す始末。毎年この時期は、恵方巻一色となる。

 もともとは近畿地方の一部で「恵方(めでたい方角)を向いて巻き寿司を丸かぶりすると福がめぐってくる」として始まった習俗だというが、ここ数年コンビニなどが主導するかたちで全国的に恵方巻ブームがつくり上げられた。たしかに、豆まきに使う煎り大豆に比べれば、商品としての利幅はずいぶんと大きい。「新しいビジネスの潮流を作った」という意味では、発案者は称賛されてしかるべきだろう。

 しかしここ数年の恵方巻ブームの過熱は、もともとスーパーやコンビニが持っていた問題を浮かび上がらせた。「食品の大量廃棄」である。廃棄、食品ロス、消費期限・賞味期限などについて、本稿で深く触れるつもりはない。ただ、生鮮食料品である巻き寿司はその日のうちに売れなければすべて廃棄せざるを得ないという現実がある。クリスマスケーキやバレンタインのチョコレートであれば値引きして翌日売る、などといった手もあるが、生ものである寿司はそうはいかない。積み上げられた恵方巻は、売り切れなければすべてゴミになってしまうのだ。

 恵方巻商戦の過熱は、そのまま廃棄される恵方巻が莫大な量におよぶことを意味する。その流れに、販売側から一石を投じた企業がある。兵庫県のヤマダストアーだ。
 「もうやめにしよう」と謳った同社の広告では、恵方巻は「昨年実績分しか用意しない」と宣言。資源を守る観点から、恵方巻は売り切れても追加せず、無理に売らないとした。これがSNSで大きな評判を呼んだ。

 ヤマダストアーに取材を申し込んだところ、担当者は「現在新聞やテレビなど、さまざまなメディアから取材依頼が殺到している。正直予想以上の反響で、このままでは私たちが意図しない状況になってしまう」として取材を辞退した。あくまでヤマダストアー独自の判断で、従来通り恵方巻の販売を行っている同業他社を批判するような意図はまったくない、ということだ。それだけ、恵方巻ブームに思うところがある人は多かったということだろう。

 地方の食品スーパーが投じた一石が、過熱する一方の恵方巻ブームに大きな波紋を起こしている。

【深水 央】

 

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