2024年04月26日( 金 )

まちづくりへの貢献が本格化 「都市をデザインする」デベロッパー(前)

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西武ハウス(株)

 2017年2月期に売上高が100億円を突破した西武ハウス(株)は、18年2月期でさらなる増収増益を達成する見通しだ。創業35周年を迎え、別次元の経営へシフトする同社は今年、「都市デザイン」という新たなステージに突入する。

本社前に美しい街並みを

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 今年で創業35周年を迎える西武ハウス(株)は、創業以来、福岡の地で着実に実績を積み重ねてきた。分譲マンション「モントーレ」ブランドは広く浸透しており、地元を代表するデベロッパーとして名を馳せている。現在の長浜地区に本社ビルを新築し移転したのが2014年のこと。現在は同地区で「都市をデザインする」との視点から、地域に貢献する本格的な「まちづくり・住まいづくり」に着手している。

 本社ビルの隣には、すでに同社が開発し分譲した「モントーレ セントラルベイコート」がある。その斜め向かい側には「モントーレ舞鶴ベイプレイス」が建設予定であり、本社前の通りに同社が開発したマンションが立ち並ぶ通りができることになる。この通りを桜並木にすることも計画しており、一部の歩道の桜並木は福岡市に寄贈済みだ。今年、来年とさらにウミネコザクラを寄贈予定で、2街区にわたり一連の桜並木ができることになる。また那の津通り側の土地1,050坪は、17年12月にケネディクス系のファンドに売却した。マンションが立ち並ぶ一方で、同地区にはスーパーなどの商業施設が存在しない。入居者の利便性を考えれば、商業施設開発に長けた企業に売却するのが望ましいと判断したためだ。その隣接地には同社が賃貸マンションの建築を予定している。

 自社が開発したマンションが並ぶ通りに、商業施設ができ、同社へ向かう通りには美しい桜並木ができる。「住まいづくり」に加えて、地域の活性化を目指した地域貢献の取り組みで、「まちづくり」と呼ぶに相応しいものだ。これまでも「まちづくり」を標榜して開発を進めようとしたデベロッパーはあったが、実際にその水準に達した企業は、福岡には存在しない。浮き沈みの激しい不動産業界で、長期間にわたって業績を維持し、都市開発の企画を具現化することがいかに難しいことかの証左である。地域密着で「住まいづくり」に取り組み、大規模プロジェクトなども数多く手がけてきた同社だからこそできた「都市のデザイン」だ。

売上100億円を突破し安定性も向上

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 同社は17年2月期決算で、初めて売上高が100億円を突破した。15年には40億円台だったが、16年には60億円台となり、17年についに大台を突破したのである。18年2月期ではさらなる増収増益が見込まれており、売上高は116億円を超え、過去最高益を計上する予定だ。増収の要因は、マンション販売が堅調であることに加え、所有していた不動産を売却したこともある。同社は昔から不動産市況を読む目が鋭く、割安感があるときに収益物件を購入し、高値になったところで上手に手放す。活況を呈する不動産市況で、売り時と判断した収益物件の売却額が売上高に加算されている。

 財務内容についても見てみよう。貸借対照表(B/S)を見ると、ここ3期、現預金は着実に10億円ずつ増えている。デベロッパーの宿命として規模の拡大とともに借入金も増加するが、自己資本比率も増加しており、事業利益が財務体質の強化につながっていることがわかる。経営指標を見てみると、目を引くのは総資産経常利益率の上昇だ。15年、16年と4%台だったものが、17年には12%台へと大きく伸びた。解析すると、総資本回転率が大きく好転しているわけではないため、利益率の向上が最大の要因だ。経常利益率は8%台だったものが18%台へと大幅に上昇した。利益率の向上から自己資本比率、固定長期適合率の数値が向上し、会社としての安定性が強化されている。

 浮き沈みの激しい不動産業界では、バランス感覚に優れ、上手に資金を運用する能力が必須である。前述したように不動産価格が下がったときに収益物件や、開発ができる土地を取得し、価格が高くなったときに売る。スキームとしては単純だが、効果的に利益を確保するにはファイナンスの能力に長けていなければ難しい。緻密な財務戦略とバランス感覚が同社の秀でた特徴である。

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【緒方 克美】

<COMPANY INFORMATION>
代 表:豊福 清
所在地:福岡市中央区長浜3-16-6
設 立:1985年7月
資本金:3,000万円
売上高:(17/2)101億793万円

 
(後)

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