2024年05月09日( 木 )

【徹底追及】国税圧力の目的は還付金詐欺か 鳩山二郎氏元秘書と金塊密輸犯を結ぶ、点と線(後)

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 故・鳩山邦夫元総務相とその次男・鳩山二郎衆議院議員に仕え、「金庫番」と呼ばれてきた小澤洋介元秘書の会社が取引していたのは、金塊密輸で逮捕された人物が代表を務める会社だった。
 宝石販売で発生した消費税の還付請求を巡り、国税庁幹部に圧力をかけたとされる小澤氏。金塊密輸犯の会社を含め、宝石販売に関わったすべての法人及び代表者を取材したところ、「架空取引」と断定せざるを得ない、関係者の実態が浮き彫りとなった(前編中編)。

(株)国際東日ジュエリー

宝石の流れと、関係する法人の実情

 国税庁に圧力をかけたとされる鳩山二郎衆院議員の元秘書、小澤洋介氏が代表を務める国際東日ジュエリー(東日)。登記上の本社は墨田区内のマンションの一室で、表札は確認できたものの何度呼び出しても応答はなかった。

 一方、同社HPに記載されている渋谷区の住所をたずねると、商業ビルの2階に同社が入っていることがわかった。ポストに貼られた社名は、ビニールテープで作成した簡易なもの。事務所を訪ねると、男性4~5人がテーブルのうえに書類を広げて何事か話し合っていた。

 対応に出た男性に来訪の趣旨を告げると、テーブルに座っていた男性が「なんの用?」と強い口調で尋ねてきた。その男性こそ小澤氏本人で、国税庁幹部を呼び出した件で話を聞きたい旨を告げると、「いま会議中だから、帰って」と拒否。記者が重ねて取材の趣旨などを告げると、「取材するならアポをとってくれよ!」と恫喝的物言いに変化した。

 その後、記者の再三の説得に、「アポイントをとれば取材に応じる」と軟化した小澤氏。後日、関西地方に出張中という小澤氏と電話で話すことができた。電話に出た小澤氏は終始興奮した口調で、「宝石を仕入れた当時、自分は国際東日ジュエリーと無関係だったので何も知らない」と主張した。しかし、同じ電話で小澤氏は、「(宝石を)仕入れた時期は知らない」とも話しており、発言に矛盾が生じている。

 つまり、「いつ」仕入れたかは知らないにも関わらず、知らないはずのその時期に会社と無関係だったと主張しているわけで、発言の整合性がとれない。さらに小澤氏は同社顧問を務めていたにもかかわらず、宝石を仕入れた当時の代表について「誰だかわからない」とも話している。小澤氏発言の信ぴょう性は、極めて低いと言わざるを得ない。

新声会の収支報告書には、小澤氏の名前が

 小澤氏は国税庁幹部を議員会館に呼んだ際、同じ部屋に鳩山二郎議員が同席していたことは認めたものの、具体的なやりとりについては「いまは私人であるため、話す必要がない」と回答を拒否した。架空取引疑惑のある宝石の仕入れや販売の経緯など、詳細については現在も在籍する社員が把握しているとも認めたが、社員の名前などは「答える義務がない」として突っぱねた。発言内容の矛盾を問う記者に対して最後は、「取材拒否と書いてもらってかまわない!」と、コワモテ秘書の片鱗を見せながら、突然”キレ”て、小澤氏は電話を切った。取材拒否は自由だが、小澤氏が言う「いまは私人」は本当なのか。

 総務省と福岡県選挙管理委員会に確認したところ、小澤氏は現在も、鳩山二郎衆院議員の資金管理団体「新声会」及び「自由民主党福岡県衆議院支部」の会計責任者。秘書を辞めた形にはなっているが、実態はいまだに「金庫番」なのだ。さらに、自民党の支部は税金を原資とする政党助成金の受け皿となっており、そこの会計責任者が完全な私人であるはずがない。小澤氏については、永田町の議員会館とは別にある鳩山二郎氏の事務所に、出入りしていることも確認されている。

中国人観光客への宝石販売4社

 東日から宝石を仕入れ、中国人観光客らに転売したとされる会社は4社。まず、東京都荒川区に本社を置く「(株)クラウン・ジェイ」(クラウン)を訪ねたところ、登記上住所に同社は入居しておらず、その場所にはなぜか貴金属関係の組合事務所が入居していた。
 組合事務所の職員は、クラウンについて「聞いたことがない」と話し、自社の住所がクラウンの登記上本社になっていることも知らなかった。

 同じく、東日から宝石を仕入れた「(株)信宇」は、都内港区のテナントビルの一室で免税店を営業中。2人の中国人女性が応対したが、「代表者は不在で答えられない」と回答した。体のいい取材拒否だった。

 3社目の「(株)インターナショナルビジネスネットワーク」(IBN)は、登記上の本社所在地から退去していた。ビルの管理会社は、IBNの代表者が「昨年末に韓国へ帰ったはずだ」と証言。登記上の旧住所に表札だけ確認できたが、ビルの受付は、「部屋にはほとんど姿を現さない」と証言した。

 「(株)パプリカ・エージェンシー」(パプリカ)は、登記上住所(東京都中央区)にあるビルで社名のプレートを確認できたが、インタホンに出た外国人らしき男性は、「別会社の人間だからわからない」とそっけない。しかし、パプリカの代表者に取材したい旨を告げたとたん、「お前、何だ!うるさい!」と対応が一変し、一方的にインタホンを切られた。

還付金詐欺事件で問われる鳩山氏の説明責任

 東日から宝石を仕入れた4社は、仕入れ時に発生した消費税分約2億円を還付請求し、国税当局から「架空取引」と断定されて、還付を保留された。一連の取引には実態がなかったとみられており、東京国税局は4社に重加算税を含めた約3億円を追徴課税している。宝石の取引に介在したのは、報じてきた「創造」「AQUA」「国際東日ジュエリー」「クラウン・ジェイ」「信宇」「インターナショナルビジネスネットワーク」「パプリカ・エージェンシー」の7社。すべての関係者が、架空取引による還付金詐欺に関わったということになる。

 小澤氏は、鳩山二郎衆院議員の秘書として国税幹部を呼び出し、自分が「国際東日ジュエリー」の顧問であることを告げたうえで、説明を求めたという。「説明を求めた」というが、実態は圧力だ。金塊密輸犯とつながる会社の代表となった同氏が、いまだに鳩山二郎衆院議員と関係をもち続けていることも明らかとなった。「私人」を理由に、取材を拒否するとは言語道断だろう。

 今年1月、自身の事務所を舞台にした国税への圧力について問われた鳩山議員は、記者団に「還付制度についてのレクチャーを受けてくれと言われて同席しただけ。それ以上でも以下でもない」とコメントしている。
 本当にそうなのか――。自分の金庫番が国民の血税を詐取しようとした事件について、説明責任があると思うのだが……。

(了)
【特別取材班】

 
(中)

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