2024年05月03日( 金 )

国交省が技術者制度見直しへ

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国土交通省

 国土交通省は12月22日、「第5回適正な施工確保のための技術者制度検討会(第2期)」(座長:小澤一雅・東京大学大学院工学系研究科特任教授)を1年8カ月ぶりに再開。技術者制度における「企業集団制度の合理化」と「働き方改革推進への対応」の2点を議論した。2023年度内に結論付け、関連通知やマニュアルを改正、24年度からの運用を目指す。また、中長期的な5つの検討課題は24年度中に一定の方針を整理する。

企業集団制度の合理化 背景には合併促進

 今回の検討会では、日本経済団体連合会(経団連)や住宅会社などから、企業集団制度の合理化について連結子会社間、親会社と持分法適用会社間の在籍出向の緩和などの要望が寄せられた。

 まず、建設現場に配置する監理技術者は、所属会社との「直接的・恒常的」な雇用関係が必要となり、派遣や在籍出向者の配置はできない。特例として企業集団制度を利用すれば、親会社とその連結子会社の出向社員を「直接的・恒常的」な雇用関係があるとみなし、出向先会社が監理技術者として配置可能となる。親会社と連結子会社は、親会社の支配力の下で両社は一体とみなすことが可能で、事業でも一定のノウハウの共有がなされていると考えられるため、技術者が組織の持つ技術力を活用し、円滑に工事の管理が行うことができるからだ。国交省は2023年9月末時点で企業集団として製造業(37)、建設業(25)など全部で104グループを認定している。一方、連結子会社同士や非連結子会社などでは配置できないため、緩和策を求めた。

 緩和策要望の背景には、企業再編や合併の促進がある。合併後の急激な転籍を実施するには給料体系も変化するため、現行はハードルが高く、雇用条件を変えずに在籍したまま出向するケースも多い。また、建設会社は子会社も多く、親子会社両社が経審(経営事項審査)を取得している事例があるケースも多く、企業集団制度の合理化を求めた。
 検討会では、連結子会社間の在籍出向や経審について何かしらの緩和要件が必要との議論がなされた一方で、非連結子会社は親会社による一体的な連結企業としてみなすことは困難であるため、慎重に判断すべきとの意見もあった。そのため今後、経審の有無と連結子会社同士の監理技術者の在籍出向配置については、何らかの緩和策を検討していく。

明確化を検討 専任での遠隔施工

 働き方改革の関係では、「監理技術者などの専任の取扱いの明確化」や「支援する者の配置」の2点がテーマに上がった。「監理技術者制度運用マニュアル」は専任の定義として、常時継続的に当該工事現場に係る職務にのみ従事することを置いており、必ずしも当該工事現場での常駐を必要とするものではないとしている。一方、同マニュアルでは「短時間に現場を離れることが可能になるよう適切な施工体制を確保する」とも明記し、さらには建設業課長通知では専任の明確化として、現場で業務を行うことが基本としている。現場管理の基本が強すぎると、遠隔での配置は法令違反ではないかとの懸念も寄せられ、通知とマニュアルの整合性を図ることが重要との視点があり、建設現場の遠隔施工管理における大きな課題といえた。なお、建設テック事業者で構成する建設DX研究所(岡本杏莉代表)は、現行の通知・マニュアルを改正し、「遠隔」での施工管理でも配置について許容の明確化を提起している。

 「専任による遠隔施工は現行も否定していないが、認められていないと解釈される方もいる。明確化していないため、どういう場合に使ってよいかわからないとの声もある。有識者の視点では、専任では現場で見るのが基本との意見がある一方、遠隔施工という新たな技術を取り入れるべきとの2つの視点があり、今後検討していく」(国交省)。

 また、働き方改革の観点では、現行の通知・マニュアルでは配置技術者が常時対応することが基本だが、育児を含む休暇の取得や勤務時間インターバルによる柔軟な休暇の取得も重要なポイントだろう。「監理技術者等を支援する者の配置」の項目では、現場技術者に加えて建設ディレクターや書類確認作業の委託化などといった後方支援が効果的な事例も増えており、バックオフィスの位置付けを明確にしていく。

 このほか、中長期的な検討課題として、「専任要件のさらなる合理化・在り方等の検討(元請と下請に混在する主任技術者を区分の再整理含む)」「工事経験の見える化の検討(難易度の高い工事等の施工管理が、より高い技術を有する者によりなされる方策)」「悪質な不正行為に対する技術者への罰則規定の検討」「主任技術者の確認について、第三者機関による統一確認方法の検討」「対応する施工管理技士がない業種についての検討(機械器具設置工事業等)」も議題に挙がった。

【長井 雄一朗】

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