2004年、日本に宅配水ビジネスを普及させた（株）アクアクララジャパンが、民事再生法を申請した。フランチャイズ戦略で日本に宅配水事業を普及させた同社の破綻により、フランチャイジーたちは袂を分かつもの、再生したアクアクララと歩調を合わせるものなど、さまざまな戦略的選択を迫られることとなった。そして現在、宅配水業界はネットショップやスーパーなどでのミネラルウォーターペットボトルなどとの競合を余儀なくされている。
＜アクアクララジャパン経営破綻の後に＞
2004年、（株）アクアクララジャパンが経営破綻に追い込まれた。海外で普及し始めていたウォーターサーバーを日本で広めようと、2000年に三井物産の社内ベンチャーとして設立された同社は、フランチャイズ加盟事業者（フランチャイジー）を募り、日本全国に広がっていった。
ところが、日本は蛇口をひねれば質の良い飲める軟水が手に入る土地柄。普及にはなかなか厳しい環境だった。その結果、04年11月、負債総額122億円を残し同社は民事再生法を申請することとなる。
以後、フランチャイザーとしてのアクアクララジャパンの破綻により、フランチャイジーたちは独立して業を継続するもの、廃業するもの、アクアクララの継続を期して待つものに分かれた。翌05年、東京に本社を構えるレモンガスが事業を譲り受け、アクアクララ（株）として再出発を切ることとなる。そして、現在に至っているのだ。
アクアクララなどが行なっている宅配水事業とは、水を家庭、もしくは事業所などに届けるというものだ。水を精製、もしくは採取し、それを顧客のもとに配達する。顧客のもとには専用の水を冷やしたり温めたりすることができるサーバーが設置されており、そこにボトルをセットすることで、いつでも冷水もしくはお湯が得られるという仕組みだ。顧客は宅配水業者に対して、サーバーのレンタル料金と水の代金（通常ボトル１本いくら、という契約）を支払うこととなる。事業成否の重要なポイントとしては、水の入手方法と宅配方法が挙げられる。
＜天然水か、RO水か＞
水の入手方法として、アクアクララなどは、RO水にミネラルを足した商品を取り扱ってきた。水を目の粗いフィルターから逆浸透膜（RO）と言われる極めて微細で特殊な膜にまで通し、純水に近い水を精製する。この純度の高い水にミネラル分を足すことで、健康的（とイメージされているが実際の効果効能は不明）で、味の良い水にすることができる。純水に近い水ができるため、原料となる水はどのようなものでも、たとえば水道水などでもよい。これは宇宙ステーションなどでも利用されている方法で、極めて信頼性が高いものだ。ただし、純水はそれこそ本当の水、H2Oの味ということになるので、おいしいか否かと問われると素直においしいとは言えないものだ。それゆえミネラル分を追加して味を整え、また健康に良いとされるものに仕上げるのである。RO水の生成は方法論が確立されているので、どの業者がどのようなメソッドでやってもそこまでの差は出ない。従って、ミネラル分の配合バランスこそが各社の腕の見せどころということになるのだ。
また、ミネラルを添加せず、RO水のまま販売しているところもある。味をあえて付けないことで乳児に与える粉ミルクを溶く水として安心して使うことができたり、あるいは余計な味がない分、おいしくコーヒーを淹れることができたりする、という指摘もある。そういったミネラルを添加しない方向の需要も少なからずあるようである。
宅配水業界は、このようなRO水を用いるグループともう１つ、天然水を用いるグループも存在する。天然水を用いるというのは、文字通り、天然の水を井戸などから汲み上げ、ボトルに詰めて販売するというものだ。こちらの場合は、天然という安心感、水がおいしくてきれい（というイメージを多くの人が持っている）な場所で採取して販売するため、満足感が高まるといったイメージ的な利点がある。地層を抜けて濾過されてきたクリアな水に適度に天然のミネラルが混ざり、おいしい水となって汲み上げられるのである。前述したように、日本には硬度の高すぎる水などは極めて少ないため、さまざまな場所で採水することができるのも特徴だ。地域ごとにミネラル分のバランスが異なるため、自分に適した水を探すことができるという特徴もある。実はミネラル分の過多、つまり水の硬度の差異で、料理の味やお茶の味などが変化すると言われている。また、pHなども地域ごとに異なるため、味に（多少の）変化がある（かもしれない）。それゆえ、自宅の水道水に満足できない方も顧客になっていっているようだ。
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