新鋭の地場総合建設業がさらなる地域貢献のために進化するには（後）

（株）スエナガ

土地オーナーと新規開業医とのマッチング

　現在の同社の顧客の中核となっているのは、JAである。JAの組合員が保有する不動産の有効な活用法を、提案する事業を展開している。「これまで、賃貸マンションを建てて、家賃収入による運用を提案してきましたが、収益性が平凡なこともあり、有効な受注につながっていません。そのようななか、懇意にさせていただいている不動産会社から『医療分野で活路を見出さないか』と提案されたのがきっかけで、個人開業医のための不動産活用事業に着手いたしました」（出口代表）。

　新たに開業する医師のニーズに応えるべく、土地のオーナーであるJAの組合員に提案をすると興味をもってもらい、土地活用の提案に賛同してもらえた。事業の仕組みは、JA所有の土地に医療機関を建ててもらい、その賃料を医師が支払う。開業を志す医師は、医療機器への初期投資など、開業資金に数千万円を要するケースがほとんどだ。そのうえ、土地・建物へのコストを含めると億単位になる。

　新規開業医にとって初期投資で億単位の開業資金を捻出するのは、かなり難しい。そこで、土地のオーナーに土地を医師に賃貸してはどうかと提案した。土地のオーナーにとっては空室のリスクがほとんどないというメリットがあり、同社からの提案に応じるオーナーが続出した。医師側も土地購入のコストが抑えられ、初期投資が軽減される仕組みがつくられた。同社の医療関係の建築によるJAの土地オーナーと開業医を志願するマッチング事業は、安定した受注がもたらされ、土地オーナー、開業医ともに好評を博している。

　土地の有効活用とともに、力を注いでいる分野が、建物の改修・改築＝コンバージョン、リノベーション、リフォームである。現在同社の改修・改築事業は、完成工事高の約20％を占めるまでに成長している。「現在築30〜50年の建物が増加し、それらを超える年数の建物が存在します。スクラップすることなく、建物を最大限いかすことを目指し、安心・安全な建物に再生させる仕事をつくっていきます」（出口代表）

　そのほか、戸建の賃貸ニーズに応える新たな土地活用の取り組み、従来のRCや鉄骨の建設を手がけながら、来期をめどに官公庁の案件に進出する。「とくにRCのマンションにおける建築コストは高騰し続けておりますが、総合建設業の事業を通して地域の明るいまちづくりに寄与することが、我々の使命ですので、幅広いニーズに応えていく所存です」（出口代表）。

地場建設業がより発展するために

　同社は、5年後に20億円の完成工事高を目標に掲げている。今期（19年2月期）完成工事高は、13億5,000万円の見通しだ。「おかげさまで、すばらしいお客さまに恵まれまして、順調に事業が展開できております。そして我々の仲間である専門工事会社などの取引先にも支えられ、充実したなかで施工がなされております。何よりも当社の社員一同が、一丸となって前向きな姿勢で、それぞれの仕事に挑戦しております。本当にありがたいです」（出口代表）。

　とくに品質管理においては、専門工事の協力会社と密な連携をとりながら、現場単位での教育の機会を1カ月に1度程度、定期的に設けている。「何よりも工期の厳守と高い品質を遵守することです。そのためには、現場の方々とのコミュニケーション、リレーションがとても重要です。こちらから出向いて、現場ごとの教育会を当社主催で実施しております」（出口代表）と、技術力と品質のさらなる向上に取り組んでいる。それでも、「当社だけの課題ではなく、業界全体で技術職が不足しております。とくに施工管理は、人材不足は顕在化しており、人材の高齢化が進むなか、どのようにして新たな人材を確保するかを吟味しています。今後、さらに施工管理の業務については、厳しくなってきます。早急に策を講じていく所存です」（出口代表）と業界全体が抱える課題にも前向きだ。

　出口代表は、「これから福岡市内と周辺の地域は、新たなまちづくりや再開発など、あらゆるニーズがあります。残念ながら、これらの分野は、大手ゼネコンの寡占状態となっています。地場の建設業でも大きなプロジェクトに挑んで、再開発などを地場の手でつくり上げていくという風土を醸成させることが、我々に求められています。そのためには、私自身もっと学んでいくことが肝要です」（出口代表）と、同社はこれからも誠実に実直に謙虚な志向で、挑戦を続ける。

（了）
【河原　清明】

＜COMPANY INFORMATION＞
代表：出口 洋一
所在地：福岡市城南区堤1-30-1
資本金：3,700万円
完工高：9億6,623万円（17/2）
ＴＥＬ：092-874-4545