近年、九州北部では記録的な大雨が相次ぎ、河川氾濫や土砂災害への備えが一段と重要になっている。2017年7月の九州北部豪雨では、福岡県内で37人が命を落とした。今年7月28日には、熊本県熊本地方を震源とする最大震度7の地震が発生し、県内でも柳川市と大川市で震度5弱を観測した。福岡県には、風水害と大規模地震の双方を見据えた防災・減災対策が求められている。
大雨と地震 福岡が抱える災害リスク
近年、九州北部では風水害が頻発している。福岡県においても、線状降水帯による集中豪雨が河川氾濫や土砂災害を引き起こし、各地に大きな被害をもたらしてきた。一方で、今年7月に発生した熊本地震のように、大規模地震の対策も軽視できない。福岡県内にも複数の活断層が存在している。
被災直後の桂川(朝倉市)
近年の風水害を振り返るうえで、2017年7月に発生した「平成29年7月九州北部豪雨」は避けて通れない。対馬海峡付近に停滞した梅雨前線へ暖かく湿った空気が流れ込み、次々と発生した積乱雲が線状降水帯を形成。福岡県と大分県を記録的な大雨が襲った。両県には、13年の運用開始以来、九州で初めて大雨特別警報が発表される事態となり、最大24時間降水量は、朝倉観測所で545.5mm、日田観測所で370.0mmに達した。いずれも、わずか24時間で7月の平年降水量を上回る雨量だ。福岡県内では232件の土砂災害が発生。大量の土砂や流木が河川へ流れ込み、筑後川水系の赤谷川などでは、洪水流に河岸侵食や河道への堆積が重なったことで被害が拡大した。県内では37人が死亡し、2人が行方不明となったほか、道路や橋梁などの土木施設に加え、住宅、農業用施設、商工業の生産施設も甚大な被害を受けた。
その後も、大雨による被害は続いている。18年7月の西日本豪雨では、北九州市や飯塚市などで道路冠水や土砂災害が発生した。19年8月には、久留米市など筑後地方を中心に浸水範囲が拡大。20年7月には大牟田市の市街地で内水氾濫が起き、21年8月にも久留米市や小郡市などが河川氾濫による大規模な浸水に見舞われた。23年7月には久留米市で土石流が発生。25年8月と今年7月上旬にも、線状降水帯による大雨が観測されている。
地震災害に目を転じると、16年4月の熊本地震が九州各地に与えた衝撃は大きかった。4月14日の前震では熊本県益城町で震度7を観測し、同月16日の本震では益城町と西原村が震度7に見舞われた。同一地域で短期間に震度7の揺れを2度観測した初の事例である。福岡県内でも最大震度5強を観測し、福岡市や北九州市を含む広い範囲が強く揺れた。
この地震では関連死を含め277人が死亡し、2,809人が負傷した。18万人を超える人々が避難を余儀なくされ、建物や交通インフラも大きな被害を受けた。九州自動車道や九州新幹線、JR九州の在来線が被災したことで、物流や人の移動は停滞。その影響は被災地にとどまらず、福岡県を含む九州全体の経済活動へ波及した。
国指定名勝「松浜軒」
熊本県はその後、九州北部豪雨やコロナ禍などの困難に直面しながら復旧・復興を重ね、半導体関連企業の進出を背景に新たな成長へ動き始めていた。しかし、先の熊本地震から10年が経過した26年7月、再び最大震度7の地震が発生。大型商業施設の爆発事故をはじめ、多くの建物が再び被害を受けることになった。有明海と八代海沿岸には津波注意報が発表され、福岡県内でも柳川市と大川市で震度5弱を観測。影響は広域におよび、その被害規模の大きさを物語っている。
福岡県内での地震リスクは、熊本地方を震源とするものだけではない。福岡県下で大規模地震が発生する可能性も十分にあり得る。なかでも警戒されているのが、福岡市中心部付近を通る警固断層帯だ。この活断層は玄界灘から福岡平野を経て、筑紫野市付近まで延びている。マグニチュード7.0、最大震度6弱を記録した05年の福岡県西方沖地震では、このうち北西部海域側が活動したものだといわれている。地震調査研究推進本部によると、この警固断層帯の南東部で、今後30年以内に地震が発生する確率は0.3~6%だ。また、福岡県西方沖地震を引き起こした北西部と市中心部付近を通る南東部が連動してマグニチュード7.7相当の地震が発生した場合、福岡市や春日市、大野城市などを震度6強から震度7の激しい揺れが襲うとされている。直接死は最大約1,800人、建物の全壊・全焼は約3万6,000棟、避難者は約31万9,000人に達する見通しだ。高層ビルや地下街が集まる天神・博多地区では、建物の損壊だけが問題になるわけではない。ガラス片や看板などの落下、火災、交通機関の停止、多数の帰宅困難者の発生といった大都市特有の被害が重なる恐れがある。沿岸部や埋立地では、地盤の液状化にも注意が必要だ。このほか、県内には宇美断層、西山断層帯、福智山断層帯など複数の活断層が存在する。将来、高い確率で発生するとされる南海トラフ地震も含め、福岡県は地震災害と無縁ではない。
頻発する風水害に加え、都市部の直下で大規模地震が発生する可能性もある。福岡県は、性質の異なる双方の災害を想定し、平時から備えを重ねる必要がある。
(つづく)
【若松大生】

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