2024年04月26日( 金 )

ブラック労働に支えられた文明生活の甘味

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 NetIB-Newsでもすでに触れたように、ヤマト運輸の労使交渉で荷受量抑制が議題に上った。宅配便最大手の動きがどうなるかはまだ不明だが、荷受量抑制が実現すれば日本の物流状況に大きな影響が出る可能性は高い。
 荷物を受け取る時間や場所の指定ができる、受け取り側が不在の場合は何度でも再配達してもらえる…。現代の我々は当然のようにこのサービスを享受しているが、この「宅配便」というビジネスの歴史はそれほど長いものではない。

 ヤマト運輸が個人向けの荷物配送サービス、後に「クロネコヤマトの宅急便」と呼ばれるサービスを開始したのが1976年のこと。取り扱い荷物は79年には1,000万個、84年には1億個を突破した。

 1960年代のモータリゼーションを経て、国鉄の鉄道貨物、郵便局の郵便小包から個人向け貨物輸送の主役を完全に奪い取ったヤマト運輸をはじめとした宅配便業者だが、ここにきてそのビジネススキームにほころびが生じてきた。原因は、ネット通販ビジネスの予想外の伸長と再配達・時間指定配達などサービス過多による宅配ドライバーの疲弊である。

 今回の荷受量抑制に続いて、ヤマト運輸では数億円単位の未払い残業代があるとして調査を開始した。経営側は確認できた残業代は支払うとしているが、「働き過ぎ」対策となる荷受量抑制と「働いたら支払う」という残業代支払いの徹底は、2010年代の「働き方」の新しいスタンダードを作る礎になるのかもしれない。

【深水 央】

 

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