2024年04月26日( 金 )

厳しさを増す調剤薬局業界 1,200億円企業の次の一手は(前)

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総合メディカル(株)

 2006年から16年までの10年間で、日本の医療費はおよそ9兆円増加した(32兆4,000億円→41兆5,000億円)。増え続ける医療費は国の財政にとって大きな負担になっており、医療費を含めた社会保障費をどう抑えるかは国にとっては喫緊の課題である。総合メディカル(株)が主な業務としている調剤薬局経営は、この問題の最前線に位置している。同社は創業以来、時代の変化と国の健康保険制度の変遷に対応しながら、着実に業績を伸ばしてきた。

リースから調剤薬局へ 全国7位にまで成長

 総合メディカル(株)は、1978年に現・取締役相談役の小山田浩定氏ら6名によって創業された。小山田氏は三共(株)での営業、(株)日医リースでの営業幹部を経たが、勤務先の会社が資金難に陥り、銀行管理となるのを契機に独立。37歳での起業であった。当初は元職での経歴を生かした医療機関向けのリース業を主力とするが、1988年には直営の調剤薬局「そうごう薬局」1号店を筑紫野市に開業する。これが、今日600を超える直営の調剤薬局を抱え、全国7位の調剤売上を誇る総合メディカルグループのスタートラインだといえるだろう。
 総合メディカルについて見ていく前に、現在調剤薬局が置かれている状況を概観しておく。

診療報酬改定で調剤の現場は大きく変わる

 病院を筆頭に、調剤薬局、介護施設などの医療に関連する法人にとって、最大の取引先は「健康保険」という公の機関である。親方日の丸で安全安心な取引先という見方もできるだろうが、実際には医療機関や関係機関は、2年に1度大きな「仕様変更」に直面させられているといえる。厚生労働省が行う「診療報酬改定」である。国は、薬剤師による投薬や、医師による診察や手術などの医療行為にどのような点数を付与するかによって、我が国の医療体制の行方をどの方向に導こうと考えているかを示している。ある薬剤師は、「自分たちの仕事は、厚労省の意向1つでいくらでも、しかも根本から変わる」とため息をついていた。
 厚労省が診療報酬改定を通じて示しているビジョンは、長期的には医薬分業の徹底、ここ数年のトレンドとしては地域医療の充実と病院機能の分化が挙げられる。近年紹介状がなければ大病院では診察を受けられない、という例が増えているが、これも病院の機能分化を徹底しようとした結果である。
 診療報酬改定のうち、調剤薬局に直接的な影響を及ぼすのが調剤報酬の改定だ。2016年の改定では、主に以下の項目が改定の対象となった。

 1.かかりつけ薬剤師・薬局の評価
 2.薬局における対人業務の評価の充実
 3.後発医薬品の使用促進策
 4.門前薬局の評価の見直し

 このなかで、調剤薬局のあり方に大きな影響を与えるのが、「かかりつけ薬局・薬剤師」構想である。これは医療制度全体が推し進めている地域医療の充実と深いかかわりがある。従来は病院で診察を受けて処方箋をもらうと、病院のすぐそばにある薬局(いわゆる門前薬局)に処方箋を渡し、処方を受ける場合がほとんどだった。つまり、通っている病院ごとに薬局が決まっている、というイメージだ。一方かかりつけ薬局という考え方は、患者は自宅近くに行きつけの調剤薬局をつくり、病院でもらった処方箋はすべてかかりつけ薬局で処方してもらう、というもの。こちらは患者それぞれが行く薬局を1つに絞ることを狙っている。また、服薬の管理や指導を徹底して行うことが求められる。患者にとっての直接的なメリットとしては、処方される薬の飲み合わせによる副作用やダブりによる過剰投薬を防ぐことができる、というもの。16年の診療報酬改定では、かかりつけ薬局としての機能を果たせない調剤薬局は、収入のベースとなる調剤基本料を大きく減額するという厳しい規定が追加された。将来的には、国はかかりつけ医とかかりつけ薬局を中心に、ケアマネージャーや訪問看護ステーションなどと連携しながら、地域ぐるみの医療体制を構築しようとしているのである。

 かかりつけ薬剤師の仕組みは、16年からスタートした。かかりつけ医と同様、患者と薬剤師が一対一となり、服薬指導や薬歴管理を24時間対応で行うことが求められている。かかりつけ薬剤師になるためには必要な研修を受けて資格を取得していること、地域医療に積極的に参加していることに加え、特定の調剤薬局に長期にわたって在職していることが求められる。薬剤師の人材難が叫ばれて久しいが、各調剤薬局チェーンは在宅服薬指導やかかりつけ薬局・薬剤師制度に対応する人材採用・育成を急ピッチで始めている。
 かかりつけ薬局にかかわる制度変更は、大手調剤薬局チェーンのなかでもとくに総合メディカルに大きな影響を与えている。総合メディカルは医業支援部門の目玉としてDtoD(医業継承・医療連携・医師転職支援システム)を掲げ、独立して開業しようとする医師を支援している。同社にとっては支援した結果開業したクリニックの近隣に薬局を開業するという狙いがあるのだが、これはいってみれば新たに門前薬局を開く、ということと同義になる。集中率(調剤薬局が特定の医療機関から受ける処方箋の率)が95%を超えると、調剤薬局の収入のベースとなる調剤基本料は20点しか加算されない。これは門前ではない調剤薬局と比べると半分以下である。クリニック開業支援にとくに力を入れ、それを特色としている総合メディカルには厳しい制度変更であったことがわかる。

(つづく)
【深水 央】

 

<COMPANY INFORMATION>
代 表:坂本 健治
所在地:福岡市中央区天神2-14-8
設 立:1978年6月
資本金:35億1,300万円
売上高:(16/3連結)1,207億7,600万円

 

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