2024年04月26日( 金 )

厳しさを増す調剤薬局業界 1,200億円企業の次の一手は(後)

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薬局部門のウエイト増 売上は増加の一途

 総合メディカルの16年3月期連結決算は、売上高1,207億7,600万円(前期比10.6%増)、営業利益60億8,700万円(同17.5%増)、経常利益61億9,600万円(同15.6%増)で3期連続の増収増益、過去最高益を更新した。

 長期借入金は92億400万円と、前期の68億3,500万円より増加している。しかしこの金額は月商(100億6,400万円)よりも少なく、危惧するには当たらない。流動負債は11億2,800万円増加して312億3,700万円となった。これは1年内返済予定の長期借入金が11億4,300万円増加したことによるものである。

 16年3月期の売上比率は薬局経営部門が79.8%(964億500万円)、医業支援部門が19.3%(233億200万円)、その他(老人ホーム運営など介護事業)が0.9%(10億6,800万円)となっている。12年3月期と比較すると、薬局経営が73.6%→79.8%、医業支援が25.1%→19.3%となっており、薬局経営が占めるウエイトがより増加していることがわかる。

 薬局の売上高増はM&Aや新規出店に依るところが大きいが、既存店の売上も9.9%増となり、より高収益体質へと転換しつつある。医業支援部門の売上のうち47.4%を占める医療器具のリース・割賦部門は医療機器販売が大幅に減少したために前期比27.6%のマイナスとなり、全体の売上のバランスが薬局経営に大きく傾く要因の1つになっている。

 しかしその一方で、医業支援事業の一環として進めている医師の転職・開業支援(DtoD)は、売上こそ大きく計上されてはいないものの登録している医師数は12年3月の3万2,054人から16年3月の6万2,429人へとほぼ倍増し、事業としての注目度は上がっている。開業支援セミナーを全国で22回開催し、また医業継承による開業を74件行っている。転職支援件数は5,863件となった。継承者不足に苦しむ個人クリニックと、開業のための初期投資が難しい若手勤務医を結び付ける仕組みとして、今後の伸長が期待される。DtoDの売上は前期比4.8%増の6億6,200万円であった。この分野は同社が注力しているところではあるが、先に挙げた通り処方箋集中率95%規制とバッティングするところでもあり、今後の行方が注視される。

カリスマ創業者退任今後の舵取りは

 17年2月24日、総合メディカルは役員の異動を発表した。注目が集まったのが、創業者の小山田浩定取締役相談役が6月の株主総会を機に、任期満了で役職を引くとされていること。小山田氏は1990年に社長に就任、2004年には代表権のある会長に就任した。12年には現職となり代表から外れたが、この異動でいよいよ経営の表舞台から手を引くかたちとなる。改めて相談役に就任する予定というアナウンスが行われているが、取締役には就かない模様だ。小山田氏以下「6人のサムライ」によって創業された同社は、いよいよ創業メンバーの手を完全に離れて歩みだすことになる。同社プロパーの叩き上げである坂本賢治代表取締役社長を中心とした現経営陣がどのような舵取りを見せるのか。業績好調の勢いを殺さずに、より厳しく手綱が絞られる保健行政に対応して新しい調剤薬局の姿を描けるかが問われるところである。

(了)

【深水 央】

 
(中)

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