2024年04月26日( 金 )

3代目社長が苦戦する印刷業界に挑む~巧文社印刷(後)

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同友会で経営力に磨きをかける

 藤島社長が同友会に入会したのは、今から7、8年前とのこと。これまでに同友会青年支部の副ブロック長を2年、ブロック長を1年、副支部長を2年経験し、今年の4月から支部長を務めている。任期は来年の3月までだ。1年という短い任期だけに、やるべきことを凝縮して執り行っていく必要がある。「経営の手法を先輩方から学び、経営についての話をできる仲間ができたことは、非常に大きな収穫です。経営手法で“いいな”と感じたものを自社で活用する方法などを考え、実行しています」(藤島社長)

 藤島社長が掲げる今年の同支部の運営方針は“まず楽しむ、そして活かす”。同友会での学びを自社へ転換活用する藤島社長らしい方針だ。

 「会に参加してもらうには、まずメンバー1人1人が楽しめる場を作る必要があります。しかし、楽しむだけでは意味がない。同友会はあくまで会社を、ひいては地域をよくするための学びの場です。せっかく経営に関する知識が豊富な先輩方、意欲に燃える仲間たちが集まっているのですから、自社経営に生かしていかなければもったいない」(藤島社長)。

 来年、同支部は設立40周年を迎える。節目の年を前に、支部内の結束をより固めることも大事な役割だと顔を引き締める。

逆境の印刷業界。地場企業としてどう生き残るか

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 近年、インターネットの普及や電子書籍の登場などによって、縮小傾向にある出版・印刷業界。市場が縮小するなか、業者間でパイの取り合いや価格競争が激化。倒産を余儀なくされる会社も少なくない。

 そのような状況下で、藤島社長もまた生き残る策を模索する。「やはり、生き残るには従来の強みを生かしつつ、他社との差別化を図ることが不可欠です。どこの会社でも作れる商品では、価格競争に巻き込まれて衰弱してしまう」と藤島社長は話す。「弊社の強みは、事務用印刷物に特化していること。他の分野に無理やり進出するよりも、この分野を強めていく方が良い。大手ならば資金もあるので新しい事業への設備投資も可能でしょうが、中小企業となるとそうはいきません。弊社だけでなく、多くの印刷会社が同じ状況でしょう」。

 地場の印刷会社を蝕むのは、市場の縮小だけではない。後継者不足問題も、企業の存続に深刻な影響を与える。「同業者を救済するという意味においても、今後M&Aや経営統合の動きは加速していくでしょう。また、統合までには至らずとも、我々のような小さな印刷会社が生き残るには、同業者との結束を固め、提携していくことが必要ではないかと考えています」。生き残るために、クライアントのニーズに広く答える必要があるが、ニーズに沿った機能を充実させるために自社だけですべて賄おうとすると、設備投資は免れ得ない。他社と連携することで、不足する部分を補うという。

 また、若い人材の育成も課題の1つだ。「長く印刷業界にいることは、専門性が高いという意味では非常に価値が高いですが、どうしても固定観念に縛られてしまいがちです」と苦笑する。「印刷業界は厳しい状況にありますが、ぜひ若い人に挑戦して欲しい。厳しい状況にあるからこそ、若い人独自のアイデアが求められるのです」。

 無理のない範囲で、新商品も打ち出していく。最も新しい商品は、スーパーやドラッグストアなどの床に貼ることができる、マットタイプの広告だ。「FLOOR WINDO(フロアウィンド)」というこの商品は、透明なマットのなかに広告を挟みこむことができ、買い物客の目にとまりやすい。挟む広告は月に1回変更することも可能だという。

 低迷する印刷業界。老舗の看板を背負う新社長は、常に学びの姿勢で立ち向かい続ける。

(了)
【中尾 眞幸】

<COMPANY INFORMATION>
巧文社印刷(株)
代 表:藤島 修平
所在地:福岡県福岡市博多区古門戸町9-16
設 立:1953年
資本金:1,000万円

 

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