2024年05月03日( 金 )

資生堂・福岡久留米工場が6月に稼働

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アジア向け製品の生産工場

 国内最大手化粧品メーカー・(株)資生堂の福岡久留米工場が5月20日に竣工し、6月から本稼働を始めた。

 工場の敷地は9.7万m2。建物はS造・地上4階建て。真っ白な壁に「SHISEIDO」の赤いロゴが映える。生産効率と製品均質化のため、最先端のIoT設備を導入した。国内外向け中価格帯のスキンケア製品を生産し、26年以降の最大年産量は約1.4億個が目標。アジアに近い立地を生かし、製品は博多港経由でアジア市場にも出荷する。

 予約制の無料見学施設「BEAUTY PLANET」と製品体感エリアを設けて、地域に開かれた工場を目指す。見学では大釜でつくられる化粧水などが検査や容器詰めなどを経て商品化される工程を公開し、その後実際に使ってもらう。オープンは23年春の予定。

 同工場は、大分自動車道・朝倉ICから南に5kmほどの久留米市田主丸町鷹取に立地する。一帯は、久留米市田主丸町鷹取とうきは市吉井町鷹取にまたがる「久留米・うきは工業団地」として整備が進んでおり、福岡県が19年1月に分譲を開始。今年1月に分譲可能な全約26haの売買契約を終えた。資生堂を含めて計7社の立地が決まり、建築工事や地盤の基礎工事が急ピッチで進む。

1-1_久留米・うきは工業団地に進出した資生堂福岡久留米工場。=久留米市田主丸町鷹取
久留米・うきは工業団地に進出した資生堂福岡久留米工場。
=久留米市田主丸町鷹取

平坦ではなかった道のり

 工業団地の造成事業は税収などに頼る一般会計と切り離し、地方公営企業法を適用する福岡県の特別会計で独立採算制だ。久留米・うきは工業団地は17年5月に造成工事に着手し、来年3月にすべての工事を終える。総事業費は74億円を見込む。ただし、ここまでの道のりは、平坦ではなかった。

 当初は、久留米市とうきは市がそれぞれ分譲する工業団地の開発を計画していた。ところが、一帯は圃(ほ)場整備が実施された優良農地で、農業振興地域整備法(農振法)に基づく農用地区内農地(青地農地)だった。区域内の農地は、工業団地などへの転用が原則禁止されるため、両市は07年ごろから福岡県に対し、一帯の農振地域からの除外と農地転用許可を要望し続けた。

 「県の担当者からは、県庁に足を運ぶたびに、『工業団地は、どうしてもこの地域じゃないとダメなのか。ほかに適地はないのか』と言われていた」と、久留米市企業誘致推進課長補佐の倉富和也氏は振り返る。

 頑なだった県の姿勢が、16年になると変化した。用地交渉を両市に任せ、県が事業主体となって工業団地を造成・分譲する方針がそれぞれの市側に伝えられた。担当する県企業立地課の職員は、「両市の要望に沿った判断だったと聞いている」と話す。

 農地の売買や転用を規制する農地法は、知事による農地転用許可が不要な例外を設けているが、その1つが国、都道府県、農林水産大臣指定の市町村による「地域振興上の必要性が高いと認められる施設を建設するための転用」だ。福岡県が事業主体となり、工業団地を地域振興上の必要性が高い施設として知事が転用を許可すれば、両市は許可手続き抜きで用地交渉を進められる。

 こうして工業団地開発の道がやっと拓けた。県が分譲開始した翌19年2月、資生堂が同団地への進出を発表。団地内には約1haの未買収農地を残していたものの、同社が駐車場として借り上げることでまとまった。

【南里 秀之】

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