スーパーゼネコン襲う「原価高騰」（後）

大成建設（株）
受注高・完工高は堅調

    23年3月期中間は売上高7,185億円（前年同期比14.4％増）、経常利益277億円（同2.1％減）、当期利益185億円（同5.5％減）を計上。手持工事の順調な進捗から増収をはたすも、土木は道路舗装子会社、建築は単体建築の利益率低下により粗利が減少したほか、販管費の支出増から減益となった。受注高は、土木事業・建築事業とも国内大型案件の受注により3,364億円増と大幅に増加している。10月にはシンガポール地下鉄の関連工事を中国企業とのJVで受注。さらに、等々力緑地再編整備・運営等事業（神奈川県川崎市）を11月8日に落札したコンソーシアム「Todoroki Park and Link」の構成企業にも名を連ねるなど、国内外の大型工事に数多く携わる。

　通期では売上高1兆7,700億円、経常利益1,000億円を予想。利益面こそ当初予想を維持したが、売上高は国内大型建築工事の受注時期の遅れ・海外建築工事の中断から、300億円の下方修正とした。21年3月期以降は増収傾向で推移しており、今期も近年最大規模の売上高を見込む。しかし、資材高騰などから粗利益は減少傾向にある一方で販管費は増加傾向にあり、経常利益率は近年最低水準となる見通し。

　福岡市では8月に「博多イーストテラス」を完工したほか、9月には「福岡空港事務所新庁舎・管制塔新築工事」を受注した。

鹿島建設（株）
収益はゼネコントップ

    大型工事が順調に進捗したことなどから、23年3月期中間は売上高1兆1,374億円（前年同期比19.0％増）、経常利益7,915億円（同20.9％増）、当期利益5,474億円（同9.8％増）を計上。土木、建築いずれのセグメントも増収増益となり、開発はわずかに減益となった。通期では、順調な受注と施工状況から売上高、利益ともに予想を上昇修正。経常利益は前回予想から15.6％増とした。

　前期は3月決算の4社で唯一の増収増益をはたし、売上高も唯一の2兆円台、当期利益も1,000億円を確保していた。今期も売上高、利益ともに竹中工務店を加えた5社中トップとなる見通し。売上高は2兆4,300億円と過去最高を予想するが、利益率の低下は避けられず、経常利益率（5.8％）は近年最低レベルとなる見通しだ。それでも、5社中トップの利益率で、収益では頭1つ抜きん出た格好となった。虎ノ門や渋谷駅における大型再開発のほか、福岡市では「福ビル街区建替プロジェクト」の施工を手がけている。

（株）竹中工務店
通期は利益率2％割れへ

　8月発表の22年12月期中間決算は、売上高6,363億円（同6.8％増）、経常利益226億円（同18.0％減）、当期利益174億円（同8.4％減）を計上。開発事業が増収増益となったものの、建設事業の利益が半減した結果、増収減益となった。

　「国内建設市場は、原油高や資材価格高騰による建設コストの増加を受け、大型工事を中心に厳しい競争環境にあります。国内開発事業においては、宿泊需要の減少、オフィス空室率の上昇および賃料の下落は継続しており、今後も長期的に影響を受ける可能性があります」とし、通期では売上高、受注高ともに増加を予想するが、利益面では軒並み減少予想とした。前期は利益半減となった前々期から持ち直していたが、今期は再び減少に転じ、経常利益率は2％を割り込む見通しだ。

　福岡市では今期中間で完工した「ららぽーと福岡」のほか、「（仮称）住友生命福岡ビル・西通りビジネスセンター建替計画」も手がける。

（了）

【永上　隼人】