2024年04月26日( 金 )

良好な住環境を促進する地域ルール「建築協定」(前)

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 建築基準法や都市計画法とは別に、地域住民合意のうえで、まちの形成に関わる地域独自のルールを定めた「建築協定」。福岡市における建築協定の現状と事業者が注意しておきたいポイント、建築協定の活用例を紹介していく。

知っておきたい建築協定の基本

 「建築協定」とは、地域住民がその地区の実情にあったルールを定めることで、地域の特性を生かしたまちづくりを促進する制度のこと。

 建物を建てる場合、建築基準法や都市計画法などの法律を守る必要があるが、建築協定地区では、その他にも区域内における建築物の「敷地」「位置」「構造」「用途」「形態」「意匠」「建築設備」に関する独自の基準が設けられている。具体的には「敷地の分割ができない」「外壁の柄をそろえる」「建築物の用途は専用住宅に限る」「2階建てまで」などだ。

 建築協定を締結するには、土地所有者など関係権利者全員の合意に基づき、特定行政庁の認可を受ける必要がある。建築協定地区になると、地権者らによって構成される「建築協定運営委員会(以下、運営委員会)」が設けられ、運営委員会は協定地区内に起こる建築行為に対して審査を行うことになる。これは協定締結時に合意した土地所有者が土地を手放し、別の者が建築行為を行う場合にも適用される。そのため、建築協定地区で新たに建築を行う場合は、その地区の運営委員会へ建築計画承認申請書を提出し、承認を受けなければ建築を行うことができない。

福岡市の建築協定の現状

 2008年3月時点で48地区だった福岡市内の建築協定地区は、17年2月時点で86地区まで増加している。福岡市の住宅都市局建築指導部開発・建築調整課によると、建築協定地区が増加した背景には大きく2種類あるという。

 最も多い事例は、マンション建設計画が持ち上がった地区の住民が開発・建築調整課に相談するなかで、建築紛争解決の手段として建築協定締結に向けて動き出すケース。

 もう1つは、「一人協定」を利用するケース。一人協定とは、住宅地を新規に開発するデベロッパーが分譲を開始する前に建築協定を締結し、建築協定付き住宅地として販売できる制度。土地所有者であるデベロッパー1者のみで協定を締結することから一人協定と呼ばれる。分譲前に建築協定を設定することで、「良好な生活環境が保全されている地区」とアピールできる利点がある。福岡市で一人協定制度を利用した地区は86地区中26地区。国土交通省によると、全国の建築協定地区のうち約半数が一人協定によって認可されたものということで、福岡市ではまだ活用例が少ないといえる。福岡市では、戸建分譲計画が提出された際に事業者に対してこの制度を勧めるなど、建築協定の利用を推進しているという。

(つづく)
【犬童 範亮】

 
(後)

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