非日常空間の演出にある商業施設のカギを握るエクスペリエンス（２）

（株）花形商売研究所　代表取締役　濱田　浩昭　氏

テーマ性をもった空間演出が見どころの都心型施設

　SCは、都心立地のファッションビルタイプと郊外立地の巨大モール型に2分される。

　まず、前者については、日本一のショッピング街である銀座・有楽町エリアに近年相次いで誕生した3つの施設が注目だ。「東急プラザ銀座」「銀座シックス」、そして今年オープンした「東京ミッドタウン日比谷」である。

　3施設のなかでは先行した「東急プラザ銀座」は、訪日外国人が伸び始めた2016年に開業したこともあって、中国人観光客の“爆買い”を意識した店づくりになっている。下層階にプレミアムブランドを集め、和モダンテイストの雑貨店なども出店。レストランエリアにも日本の郷土料理を集めた。外国人にアピールする構成になっている。

　昨年開業した「銀座シックス」は、銀座の歴史や文化を凝縮したハイエンドな構成。そして、中央吹き抜けのエントランスにしつらえたつづら折りの階段など、かつて「銀ブラ」と呼ばれたように、ウィンドーショッピングしながらそぞろ歩く楽しさを意識したつくりになっている。

▲銀座シックス

　今年オープンした「東京ミッドタウン日比谷」は、商業施設としてはほかの2施設よりスケールとして小さいものの、シネマコンプレックスや歌舞伎演舞場、音楽ホールなど文化施設を多く取り入れるなど、よりコト重視の施設となっている。
　3施設とも、単にテナントが並んでいるだけの箱ではなく、はっきりとしたテーマ性をもった施設の設計、インテリアの演出が凝らされているのが見どころだ。

▲東京ミッドタウン日比谷

（つづく）

銀座シックス（GINZA SIX）

　J.フロント リテイリング、森ビル、L Real Estate、住友商事による共同プロジェクト。旧松坂屋銀座跡地だけでなく、隣接する2街区を新たに加えて再開発した大型商業施設。2017年4月20日に開業。地下2階、地上13階（商業施設は6階まで）、延床面積約14万8,700m²、商業施設面積は銀座エリア最大の約4万7,000m²、241店舗（開業時点）が出店。中央通りに面した全長115mの間口に、6つのラグジュアリーブランドの旗艦店が2～5層の大型メゾネット方式で出店。地上6階の屋上庭園からは銀座の街が360度見渡せる。全体的にシックな空間演出が印象的。中央エントランスは開放的だが、天井高は意外に低く、通路もさほど広くない。訪れている客は外国人が多く、日本人も買い物客というより観光客が多い印象。全体的に外国人を意識した和テイストのインテリアと品ぞろえ、日本刀も販売されている。

東京ミッドタウン日比谷

　三井不動産が開発を手がける都心型大規模複合開発の一環として2018年3月開業。地上35階、地下4階建て、延床面積約18万9,000m²で、9階から上がオフィスフロア。地下1階から7 階の商業フロアに、レストラン、ショップ、シネマコンプレックスなど60店舗が出店。オフィスやレストランエリアからは、隣接する日比谷公園や皇居外苑のロケーションが一望できる。
　商業施設にも力をいれているが、ビジネスや文化のベースを創出することにも重点を置いている。施設内には、ベンチャー企業や大手企業の事業担当、クリエーターなどジャンルの異なる人々の交流「BASE Q」を併設。開業記念イベントとして、18年4月26日から5月20日までの25日間にわたり、演劇やダンス、舞踊、ミュージカル、オペラなど総合舞台芸術が楽しめる「Hibiya Festival」を開催した。
　客層は、比較的に若いビジネスパーソン風の人たち、買い物客が多い印象。訪れたのが平日の昼時だったこともあり、ランチがてらにくつろぐ人たちが多かった。買い物や観光を楽しむというより普段使いの施設のようだ。

＜プロフィール＞
濱田　浩昭
（株）花形商売研究所代表取締役。1960年広島市生まれ。関西学院大学社会学部卒業。広島の地元紙系列広告代理店、東京のSP/PRエージェンシー勤務を経て1994年、（株）花形商品研究所を大阪で設立。商品・サービスや各種プロジェクトの開発から広告・販促などマーケティング&コミュニケーション活動について、トータルなプランづくりをサポート。提案先は多彩な業種におよぶが、とくに、流通小売業や不動産業といった“商圏”をもつ業種での実績が豊富。2014年秋に拠点を東京に移転するとともに現社名に変更。日本人による海外起業を啓発・支援する（一社）海外起業情報センターを設立し、100名を超える日本人起業家を訪ねて、世界30都市をめぐる取材を敢行した。アジア経営学会所属。