2024年04月25日( 木 )

現場の声を聞け!「障がい者雇用」水増し問題を考える(2)

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 障がい者雇用を促進する側にある、中央省庁の障がい者雇用水増し問題。8月28日、厚生労働省が公表した調査結果では約8割の中央省庁で「水増し」などが確認された。障がい者支援の名の下、なぜ平然と偽りの数がカウントされていたのか。この問題に対する現場の声を拾った。いずれも福岡県内で障がい者の就労支援を行う方々の声である。

本当は声を大にして言いたい

 企業には罰則まで設けて障害者の雇用を推進していながら、本当に障がい者雇用のことを考えているのか不安に思う。「行政機関は本来、お手本であり、クリアして当然と思っていたため残念だ」というコメントも目にするが、我々から見るとありえない。民間企業に対して、あまりにも無責任な謝罪だと思う。企業で同じようなことがあれば、信用問題になり確実に倒産してしまう。

 また弊社のような移行支援事業所やA型事業所が障がい者手帳の確認をせず、国保連に請求をあげていたら、即不正請求となる。新聞沙汰になり、事業停止、今までの請求の返金、事業主の刑罰などがあることを考えると本当に憤りを感じる。声を大にして、怒りを発信していきたいが、残念ながら仕事柄発信すると後々の事業所運営に影響が出てきそうなのでできない。

行政機関の求人を発信してほしい

 とくに行政は罰則もなく、障がい者の能力に理解がないままであれば、おそらく改善は見られない。体裁の為に数字を合わせる策を試行錯誤するのだと思う。障がいがあっても、多方面の分野で活躍できるということを行政機関の多様な仕事内容のなかで、自ら企業に向けて発信すべきだと考えるが、そういった意識がまったく感じられない。

 明らかになった3,000人以上の障がい者雇用不足により、障がい者にはチャンスが生まれる。やりがいのある職場で能力が発揮できるようになると思うと、移行支援事業所としては行政機関の求人を移行支援事業所向けに発信して貰いたいと思う。就職してからの定着を重きに法改定があった今年度だが、定着の為の企業努力、支援スタッフの努力、障がい者当人の努力を直接感じてもらえたらと思う。そしてともに働くことで、障がいがあっても、業務の細分化、役割分担によって活躍できる場が想像以上に多いことを実感してもらいたい。

基準をクリアした企業により一層の手当を!

 そもそも業界や業種に関係なく、法定雇用率が定められている。雇用率に満たなかったら罰則(納付金)があることが、むしろ障がい者雇用に対してマイナスの意識をもたせている要因ではないかと思う。罰金を支払うのが嫌だから、雇用するという考え方ははたして正しいのか。雇用率以上に障がい者雇用に取り組んでいる意識が高い企業にむしろ補助金を積極的に出す方が、サポートや協力体制もより充実して、障がい者もやりがいをもって仕事ができる環境になるのではないか。雇用率を満たすために雇われた障がい者は、簡単な雑務をさせられたり、責任感を実感できるような仕事をさせてもらえなかったりする可能性が高く、その職場での定着は難しいと感じる。

(つづく)
【東城 洋平】

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