2024年11月05日( 火 )

TSMC日本工場、経済安保担当相設置~経済安保の重要性とは?

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高まる経済安保の重要性

 今月発足した岸田内閣が経済安全保障担当大臣を新設、経済安保が政府の重要課題に浮上している。先月の自民党総裁選で経済安保は争点の1つとなり、岸田首相は「経済安全保障推進法」の制定を公約の1つに掲げていた。

 もともと、経済と安全保障は異質の概念であり、安全保障は主に政治や国際関係の領域で語られるものであった。経済は主に市場での行為で、安全保障は国家が主体となる行為。この両者が結び付き、政府の重要課題となっている。

 近年、経済安保が取り沙汰されるようになった背景には、米中間の貿易摩擦や、技術覇権をめぐる争いの先鋭化がある。事態は、米国が通信機器大手ファーウェイや動画共有アプリ「TikTok」のバイトダンスなどに対して制裁を発動するまでに発展した。

 日本国内でも、今年3月にLINE利用者の個人情報に、中国の関連会社がアクセス可能な状態にあったことが判明。LINEは個人だけでなく、企業の経済活動や自治体の市民サービスにも活用される公共的な基盤となっている。

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 このように、外交・軍事の領域にとどまらず、経済領域に対しても注意を払わないと国家の安全を保障できない状況にある一方で、国の基盤となる経済にとっても発展を維持するために、安全保障上の観点から措置を講じることの重要性が高まっている。

TSMCの新工場建設

TSMC 世界的な半導体ファウンドリーの台湾積体電路製造(TSMC)による「日本工場」設置をめぐり、国内半導体産業の再建に加え、経済安保の観点からもその重要性が指摘されている。

 熊本県に建設される予定の新工場は、ソニーなど国内の顧客向けに半導体を提供するとみられている。

 IoTの進展などにより、多くの産業で半導体の需要が高まっている一方で、コロナ禍によって半導体工場の稼働が影響を受け、供給量が不足する傾向にある。新工場の設置は国内半導体産業にプラスの効果をもたらし、経済活動を安定化させることにつながる。

 国際的な経済安保の観点から見ると、中国との間で緊張が高まる台湾に半導体工場が集中することによるリスクを分散させる必要もある。有事の際には台湾内の工場が被害を受けたり、物流ルートが遮断されたりして、半導体の調達が困難になる恐れがあるからだ。

 TSMCの日本工場が最新の半導体を製造するわけではないとしても、サプライチェーンの確保という点で意義は大きい。TSMCはもともと中国に工場を保有しているが、米国にも工場を建設中で2024年から生産を開始する予定。さらに、ドイツでも工場の建設を検討しており、海外での生産を本格化させる方針だ。

 経済安保で要となるのが、自国産業の競争力を維持するうえで重要な先端技術の国外流出の防止と、安全保障上、基幹となる産業への外資参入の防止。このため、19年11月に外国為替及び外国貿易法(外為法)を改正し、安全保障上、重要な日本企業への外資の出資に対して行う事前審査の基準について、従来の持ち株比率「10%以上」から「1%以上」に引き下げるなど厳格化した。

 それにもかかわらず、今年3月に中国のIT大手テンセント(騰訊控股)子会社による楽天グループへの出資(3.65%)が行われた。米国が懸念を示し、日米両国で楽天グループを共同で監視することになったが、携帯通信事業に携わる楽天グループに外資が入ったことの衝撃は小さくない。

【茅野 雅弘】

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