現代アートフェア「Born New Art vol.3」開催～山田ゆかり氏の新作展示

明るくポップな作品が並ぶ

　新たなアートの世界を体感できるアートフェア「Born New Art vol.3」が23日まで渋谷スクランブルスクエア（東京・渋谷）の14階の「+ART GALLERY」で開催されている。同フェアでは、「人生のきらめく瞬間を切り取る」をコンセプトに活動している現代アート作家の山田ゆかり氏の作品が16日まで展示されている。

　今回の展覧会では、これから訪れる初夏にかけての明るく楽しい季節の雰囲気を共有できる山田氏の作品が、その作品の世界観を表現した詩とともに展示されている。山田氏は「渋谷スクランブルスクエアならではの明るくポップな印象に焦点を当てて制作しました。季節の風をモチーフにした作品もあり、眺めが良い14階に吹いている季節の風を意識できることで、日常のときめきにつながってほしいという思いを表現しました」と語る。

モールス信号を生かしたデザイン

　展示されている新作は、モールス信号によるメッセージがデザインに生かされている。青と黒を基調に夜空を描いた作品「月華」には、「親愛なる（Dear）」という意味の「DR」「あなた（You）」を表す「U」「ありがとう（Thank you）」の「TU」のモールス信号が白色で描かれ、「親愛なるあなたへ。いつもありがとう」という意味が込められている。

　また、生きているとさまざまな気持ちがあるからこそ、うれしい気持ちや楽しい気持ちをより実感できることを描いた「夏端月」には、「正しい（Correct）」という意味の「C」「あなた（You）」を表す「U」により「あなたは正しい」というメッセージが描かれている。山田氏は「自己肯定感が高いと、日常のなかでよりときめきを感じることができます。眺めていると無意識のうちに自己肯定感の上がる前向きなメッセージのある作品をつくりたいと感じています」と語っており、作品を見て元気になってほしいという思いが込められている。

「夏端月」

どの選択肢も人生の可能性が広がる

　山田氏の作品で、なかでもユニークなのは「夏端月」などの直線を格子状に組み合わせたデザインだ。「私たちは生きているとさまざまな選択肢に出会い、毎日選びながら生きています。しかし、どの選択肢を選んでも人生の可能性は広がっていて、違った選択肢を選び直すこともできます。いろいろな選択肢が交わりつつできている毎日を楽しんでほしいと感じています」（山田氏）。

これから訪れる季節を描いた作品

　「春霞」は、春が連れてくる明るく楽しい気持ち、これからやってくる楽しいわくわくした気持ちを表現した作品だ。円と直線をモチーフにしたデザインを生かし、円形のキャンバスに描かれた「花信風」は花たちが咲いた後の初夏にかけての緑の柔らかさや強さを表現した作品。「光風」は明るい気持ちがやってくる春に吹く風を表現した作品だ。「夕映え」は日が沈む時に生まれる切ない気持ちを描いている。この切ない気持ちがあるからこそ、次の日が輝く。

　季節の雰囲気を先取りして楽しむことはもちろん、好きな季節の雰囲気をそばに置いておくことで、ときめく気持ちを感じてほしいという思いが込められている。山田氏は初心者に向けた抽象画の楽しみ方として、「アートは見る人それぞれの感性で鑑賞してほしいと考えていますが、新たな表現をしている作品に出合うと、こういった絵画があるのかという発見になります。また、作家が作品を描いた思いを想像することで、感受性の幅も広がります」と提案している。毎日を生きるなかで大切な心のアンテナが鋭くなるきっかけにもなるだろう。

つくり手の思いを聞くことができる

　Born New Art vol.3は毎週異なる5名のアーティストの作品が展示されている。誰でも気軽に足を運び、さまざまなアーティストの作品を見ることができるため、自分の好みを見つけることができ、自分がどういった作品に心を惹かれるかを試すことができる場となっている。

　アーティストが在廊している日は、作品についての思いをつくり手から聞くことができる。なかでも、土日には在廊している可能性が高い。作品を見るだけでは分からない裏話も聞けるかもしれない。

　また、山田ゆかり氏の個展「Blue in the Forest」が、6月2日～30日までの土屋グループ札幌ショールーム（札幌駅）で開催される。初夏をテーマにした作品や北海道の土地からインスピレーションを得た作品など新作20点前後が展示される予定だ。次なる新作も期待される。

【石井　ゆかり】