建設業の残業（時間外労働）の上限規制

　働き方改革関連法案の一環として、大企業では2019年4月1日から「時間外労働の上限規制」が適用され、中小企業でも、1年間の猶予後の20年4月1日から適用されています。一方で、人手不足や深夜業などの理由により、慢性的な長時間労働が課題となっている建設事業、自動車運転の業務、医師などは、上限規制の適用が5年間猶予されていました。

　建設業では、20年時点で実労働時間が従前よりも低減されてはいますが、全産業平均よりも年間364時間多い1,985時間の長時間労働が行われていました。休日についても、4週8休を取得している企業が19.5％（建築工事に関しては14.2％）、4週4休以下が36.3％（建築工事に関しては45.2％）となっており、他産業では一般的となっている週休2日を実現できていないことが報告されています。

　日本全体の生産年齢人口が減少し、団塊世代の大量離職が見込まれている状況で、建設業も持続可能性が危ぶまれる状況です。将来の担い手を確保するため、国土交通省は「建設業働き方改革加速化プログラム」を策定し、その1項目として「長時間労働の是正」を挙げています。

　このようななか、来年24年4月1日から、建設業についても「時間外労働の上限規制」が適用されることになります。この規制については、本誌14号（19年4月末発刊）、29号（20年10月末発刊）において解説しておりますが、改めてポイントを説明いたします。

　労働時間は原則として、1日8時間、1週40時間以内（法定労働時間）であり、法定労働時間を超えて労働者に時間外労働をさせる場合や法定休日に労働させる場合には、36協定の締結および労基署長への届出が必要です。

　36協定では、「時間外労働の上限」などを決めないといけませんが、次の通りの規制を受けることになります。

　そして、上記の内容に違反した場合の罰則（6カ月以下の懲役または30万円以下の罰金）も定められています。

　ただし、建設事業に関しては24年4月以降も、災害の復旧・復興の事業に関しては、時間外労働と休日労働の合計について、月100時間未満、2～6カ月平均80時間以内とする規制は適用されません。

    来年4月に向けて、建設事業等においても、長時間労働をしないで済む環境整備が必要です。具体的には勤怠管理を徹底して、自社での残業時間を把握したうえで、業務の効率化やノー残業デー制度を導入するなど、残業時間を減らす取り組みを検討してはいかがでしょうか。また、法に適合するために36協定の内容を再点検することも必要です。

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＜プロフィール＞
岡本  成史（おかもと・しげふみ）
弁護士・税理士
岡本綜合法律事務所 代表
1971年生まれ。京都大学法学部卒。97年弁護士登録。大阪の法律事務所で弁護士活動をスタートさせ、2006年に岡本綜合法律事務所を開所。経営革新等支援機関、（一社）相続診断協会パートナー事務所／宅地建物取引士、家族信託専門士。ケア･イノベーション事業協同組合理事。