谷村新司さん死去。広く愛された総合的なエンターテイナー。

　シンガーソングライターの谷村新司さん（以下、敬称略）が10月8日に死去していたことが分かった。享年74歳。今年3月に急性腸炎で手術を行い、療養を続けていた。

　高校在学中からフォーク・グループを結成して活動し、1968年にレコードデビュー。71年に堀内孝雄らと「アリス」を結成、アリスは81年まで活動した。その後、ソロ活動のかたわら、他のアーティストへ楽曲提供も行い、山口百恵の「いい日旅立ち」などが知られる。92年から日本テレビの24時間テレビのテーマソングとして加山雄三さんと共同制作した「サライ」なども代表曲の1つだ。

　中国との縁は、「アリス」として初めて北京公演を行った81年に始まり、2004年､上海音楽学院常任教授に就任､10年の上海万博開幕式で日本代表として登場し、「昴」の歌唱は中国人に非常に大きな感動を与えた。訃報は中国でも速報され、中国共産党系の有力紙「環球時報」は、中国国営・新華社通信の表現を引用するかたちで、「日本音楽界の人間国宝として知られ、彼の歌は中国国民にも愛されている」と紹介した。

　谷村新司の魅力は歌ばかりではない。美声でありながら大阪人らしい軽妙なトークも聴衆を魅了した。自ら楽曲を制作し、歌もトークも優れた総合的なエンターテイナーだった。合掌。

【寺村　朋輝】