筑紫野のJT工場跡 市とJTの協議は不調に

市長自ら取得へ動く

　平井一三市長は、JT工場跡地について次のように話していた。

　「やはりあれだけ広大な土地ですし、市役所に近いだけでなく、周辺には国や県、市のさまざまな施設が集積しており、筑紫野市の中心的なロケーションに位置しています。それだけポテンシャルの高い土地ですから、筑紫野市の将来のまちづくりを考えていく場合、非常に重要な場所になるという認識ももっております」（2023年12月8日取材時）。

　また、市民から寄せられた「プールなどのスポーツ施設をつくってほしい」「公園をつくって緑地を残してほしい」「福祉サービスの施設を集積してほしい」といった声を平井市長自らJT本社に届けるなど、跡地取得への意欲を見せていた。

　そして、平井市長は今年2月29日の市議会会派代表質問で、「公有地の拡大の推進に関する法律」（公拡法）に基づいて、JT側からの売却の意思が伝えられたことを明らかにし、「用地取得に向けた交渉を行っていきたい」と表明。「市役所から線路を挟んだ隣地であり、さまざまな施策を行ううえで大変魅力的な土地です。これまで寄せられた多くの市民の皆さんの多くの意見を大切にしながら、議会とも歩調をそろえ、市として最適解を導き出せるよう、慎重に進めていきたいと考えています」（平井市長）と、改めて土地取得に対する思いを語っていた。

　JT側も3月26日、当社の取材に対し「当社の基本方針としては、未利用部分の土地については売却する方針。現時点で時期、方法など具体的なことは決まっておりません。なお先般、公拡法に基づき、筑紫野市から買取希望のご意向が示されましたので、適切に協議をしてまいる所存です」とコメントしていた。

価格折り合わず

    4月9日、筑紫野市長・平井一三氏とJT不動産室長らとの協議交渉が行われた。平井市長からは「筑紫野市の将来のまちづくりに欠かせない用地」として、改めて購入の意思が示されたという。

　しかし4月11日、「市が提示する価格と、JTが求める価格に相当な開きがある」として、協議交渉が不調となったことが発表された。

　筑紫野市は金額について、「地価公示価格を基準としつつ、不動産鑑定による評価額を超えることができない」旨を伝達していたという。それに対してJTは、「資産の適切な処分という点を踏まえると、実際の取引価格（時価）を基準とせざるを得ず、その額を地価公示価格などの市が希望する金額まで引き下げることはできない。また、JTとしては早期の売却を希望しており、市との売却協議については、この場をもって不調（協議不成立）とさせていただきたい」との申し入れがあったようだ。

　これを受けて、筑紫野市とJTとの用地交渉の協議は終了となった。ただし、筑紫野市からJTに対しては、JTが今後、民間においての土地利用を図る際には、市とも十分な協議を希望する旨の申し入れを行ったとしている。

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　同工場跡地は、筑紫野市役所からJR鹿児島本線の線路を挟んで向かいにある好立地。過去に閉鎖された国内のJT工場跡地では、鹿児島工場（05年3月閉鎖）跡地が分譲マンションと市立病院となったケースや、浜松工場（15年3月閉鎖）跡地が宅地や分譲マンション、公園、商業施設となったケースもある。筑紫野市による整備の可能性がなくなったなかで、JT九州工場跡地でどのような再開発が進められていくのか、注目したい。

【内山 義之】