県外企業の計画目立つ
福岡市内に設置された標識情報を基に、市内における2025年上半期(1~6月)の開発動向を追った。共同住宅(木造を除く)の計画戸数は4,499戸で、24年下半期(7~12月)比で199戸の増加。24年下半期は総戸数100戸超の計画が6棟だったのに対して、25年上半期は7棟と大型物件の計画件数が増加したことも一因となった。100戸超の計画に関しては、サムティ(株)(大阪)による(仮称)福岡市博多区博多駅前4丁目(ワンルーム96戸・ワンルーム外24戸)や(仮称)福岡市博多区博多駅南3丁目新築工事(ワンルーム外176戸)、(株)タカラレーベン(東京)による(仮称)レーベン平尾新築工事(ワンルーム外145戸)など、県外企業による計画が目立った。また、エリアごとに見ると博多区4棟、中央区1棟、南区1棟、西区1棟と、大型物件の計画が博多区に集中する結果となった。
24年下半期比で計画戸数が増加したのは、市内7区中5区。博多区の計画戸数は同下半期比で345戸増となり、1,600戸を突破。東区は5戸増にとどまったが、南区131戸増、城南区37戸増、早良区18戸増となり、城南区は23年下半期以来の100戸超えとなった。一方で、中央区の計画戸数は再び1,000戸割れとなり、同エリアにおけるマンション開発用地の取得が厳しさを増している様子がうかがわれる。
博多区では、人気エリアがJR博多駅周辺から竹下、那珂、諸岡などのららぽーと福岡近隣エリアや、西鉄天神大牟田線・雑餉隈駅、桜並木駅(24年3月開業の新駅)近隣エリアなどの南東部へと広がりを見せている。昨年からは祇園町や下呉服町など、JR博多駅から徒歩圏内でありながら、寺社仏閣が連なる静謐な街並みが残る博多旧市街エリアでの開発も活発化しており、周縁部と中心部でバランス良くまちづくりが進んでいる。21年以降は計画戸数が1,000戸を割り込むこともなく、博多区の人気は市内7区内において抜きん出ている。(【表1】参照)。
マンション以外では、新築から増築まで、ホテルの計画が20件確認された。(株)エムズファリト(長崎)による(仮称)福岡市博多区博多駅前4丁目ホテル(S造・地上4階建、延床面積498.76m2)や(同)清かわ(熊本)による(仮称)福岡市中央区清川二丁目ホテル(S造・地上4階建、延床面積293.20m2)など、マンションと同様に県外企業による計画が増えてきている。このほか、個人による((学)天野未来学園設立予定)日本IT国際ビジネス学園(RC造・地上5階建、延床面積997.82m2)、(学)時習学館による中央区渡辺通5丁目計画(S造・地上8階建、延床面積1,391.16m2)など、新たな専修学校の設置も進む。
病院や診療所、有料老人ホームの計画件数は、個人による(仮称)井相田ホスピス(S造・4階建、延床面積1,927m2)など3件。倉庫開発の計画件数は、(株)ロジネットジャパン(北海道)による(仮称)LNJ福岡センター(S造・地上4階建、延床面積16,186.70m2)や(株)高田屋(大阪)による(仮称)箱崎ふ頭5丁目計画(SRC造(一部S造)・地上4階建、延床面積50,481m2)など5件だった。
延床面積の合計は24年下半期比で4万6,116.13m2減となったが(【表2】参照)、(株)ジオカンパニーによるバー・キャバレー、(仮称)ジオガーデン中洲2丁目(S造(一部RC造)・地上7階建、延床面積2,500m2)や、(株)エー・ディーワークス(東京)によるテナントビル、(仮称)博多駅前3丁目計画(S造・地上12階建、延床面積1,250m2)など、多彩な物件が計画されており、当面、県内外の企業による福岡市内への旺盛な不動産投資は続いていくものと推察される。
博多区
計画は1,600戸を突破
25年上半期の計画戸数は1,604戸で、24年下半期比で345戸増となった。総戸数100戸超の計画は、市内7区中で最多の4棟となった。旧市街エリアを含むJR博多駅徒歩圏での計画はもちろんのこと、麦野や井相田など南東部エリアでの計画も散見され、エリア全体を対象に、企業や投資家の開発機運が高まっている。また、博多コネクティッドの対象物件も続々と竣工・着工を迎えており、呼応するように博多駅周辺でのオフィスビルやホテルの開発もコロナ禍以前の勢いを取り戻している。
注目されるのは、JR博多駅・筑紫口から徒歩5分圏内の場所で計画されている、HOTEL LA FORESTA ANNEX。(株)プレジデントハカタ運営の新たなホテルで、建築物の概要はRC造・地上11階建、延床面積1,984.84m2、客室数は115室を予定している。福岡市地下鉄空港線・中洲川端駅から徒歩5分程度の、KSコモンドビル側では、(株)recens(東京)による(仮称)modern palazzo古門戸町が計画されている。建築物の概要は、RC造・地上14階建、延床面積1,027.19m2のワンルーム外23戸。設計者は(株)m's planningとなっている。recensはこのほかにも、複合商業施設・キャナルシティ博多にも近い住吉2丁目で、テナントビル・(仮称)modern palazzo住吉2丁目(RC造・地上7階建、延床面積880m2)を計画している。
JR博多駅、地下鉄空港線・東比恵駅の両駅から徒歩20分圏内の博多駅南3丁目では、サムティが(仮称)福岡市博多区博多駅南三丁目Ⅱを計画。建築物の概要は、RC造・地上12階建、延床面積1,795.95m2のワンルーム30戸・ワンルーム外7戸で、8月頃の着工を予定している。このほか、中洲川端駅から徒歩5分程度の、OCHIホールディングス(株)店屋町オフィス側では、(株)ダイキ・ジャパンによる(仮称)店屋町賃貸マンションが計画されている。建築物の概要は、RC造・地上10階建、延床面積2,022.01m2のワンルーム30戸・ワンルーム外6戸で、10月頃の着工を予定している。
東区
市内最多の人口34万人
24年下半期比で5戸増の758戸にとどまった東区だが、区内の人口は市内最多の34万414人(福岡市推計人口・25年7月1日現在)で、出生数も市内最多の246人(福岡市人口動態・25年6月中)と、依然、市内におけるボリュームゾーンとして存在感を発揮し続けている。
注目されるのは、地下鉄箱崎線・箱崎宮前駅から徒歩5分圏内の筥崎商店街側で(株)グッドライフカンパニーが計画している(仮称)LIBTH箱崎1丁目_209。建築物の概要は、RC造・地上15階建、延床面積3,100m2のワンルーム70戸。JR箱崎駅および箱崎宮前駅から徒歩10分圏内の筥崎宮にも近い場所では、(株)オープンハウス・ディベロップメント(東京)が(仮称)東区箱崎1丁目を計画。建築物の概要は、RC造・地上14階建、延床面積4,992.38m2のワンルーム13戸・ワンルーム外60戸の計73戸。設計者は(株)セカンド設計で、10月頃の着工を予定している。
アイランドシティでは近年、マンション開発のほか、福岡高速6号線の開通や照葉はばたき小学校の開校など、まちづくりが順次進み、人工島のイメージは過去のものになりつつある。また、九州大学・箱崎キャンパス跡地は住友商事グループによってスマートシティへと生まれ変わろうとしており、東区でも今後は博多区のように、エリア全体で再開発機運が高まっていく可能性が高い。
(つづく)
【代源太朗】

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