アビスパ福岡、清水に無念のスコアレスドロー。9戦負けなしは好調か否か

残り11試合、上位進出のカギは決定力

ベスト電器スタジアムには、今季4番目に多い1万1,434人の観客が訪れた
ベスト電器スタジアムには、今季4番目に多い1万1,434人の観客が訪れた

 8月23日(土)、明治安田生命J1リーグ第27節が行われ、アビスパ福岡はホームのベスト電器スタジアムで清水エスパルスと対戦し、果敢に攻めながらも得点を決められず0-0のスコアレスドローに終わった。この結果、福岡はリーグ戦9試合無敗(3勝6分)を記録したが、勝利を逃したことで試合後の選手らの表情からは複雑な感情が見てとれた。

 試合立ち上がりは、福岡と清水の双方が相手ゴールへ攻め込むアグレッシブな展開。しかし、徐々に福岡が攻め込む時間が増え、怪我から久々のスタメン復帰をはたしたMF見木友哉とFWナッシム・ベン・カリファ、そして最近調子を上げているMF名古新太郎らを中心にボールをつなぎ、前半は福岡ペースの時間帯が続く。

 後半に入ってからも攻撃の手をゆるめない福岡は、右サイドからMF紺野和也がドリブルやセットプレーから得点を狙うも、清水のGK梅田透吾の好守に阻まれ得点ならず。福岡ペースで試合が進むなか、82分に清水のDFマテウス・ブルネッティが2枚目の警告を受け、退場となる。数的優位に立った福岡は、松岡大起に代えてFWウェリントンを投入し、攻撃のギアを上げて勝負に出るが、結局最後まで清水のゴールを奪うことはできず、スコアレスドローで試合を終えた。

 第27節終了現在、福岡は9勝8敗10分の11位。直近9試合無敗という勝点を着実に積み上げる結果は決してネガティブになる必要のあるものではなく、むしろこれまでの福岡の成績を考えると好調もいえる成績だ。

 しかし、なぜかスッキリしない9戦無敗となっているのはなぜか。思い起こせばシーズン開幕当初から続いている攻撃面での決定力不足の課題がなかなか改善されていないことに起因しているように思う。

 9戦無敗のなかには、直近のホームでの京都戦で後半アディショナルタイムの2得点で同点に追いついた試合や、8月9日のアウェー川崎戦で2-5の快勝した試合など、劇的な試合展開で勝点を得ているにもかかわらず、あのシュートが決まっていたら…そんなタラレバの場面ばかりが浮かんでしまうのだ。

 残り11試合、シーズン前に掲げた目標の6位以内という順位を狙うためにも、決定力を強化して確実に勝利を手にして順位を上げていきたい。

見木友哉とベン・カリファがスタメン復帰

怪我から復帰の見木友哉とナッシム・ベン・カリファが今季初スタメン
怪我から復帰の見木友哉とナッシム・ベン・カリファが今季初スタメン

 清水戦では、福岡の心臓部ともいえる見木が約3カ月半ぶりにスタメンに名を連ねた。5月10日の横浜FC戦で途中交代して以降、ベンチ外が続いていた見木だが、8月16日の鹿島戦で途中出場し、復帰を待ち望んできたファン・サポーターを喜ばせた。鹿島戦では選手間の連携など、スムーズにいかないシーンもあったが、清水戦では解消され、見木らしい多彩で華麗なプレーの数々にスタジアムからはどよめきが起きた。技術力が高い見木がボランチに入ることにより、攻撃のバリエーションが増え、今後さらに得点チャンスの広がりが期待できる。

 昨年の加入以降、離脱が続いていたベン・カリファも復調の兆しを見せ、4カ月半ぶりとなるスタメンに復帰した。ベン・カリファもまた、高いスキルをもっており、自身のゴールはもちろん、アシストなど得点に絡むプレーが見もの。

 また、清水戦では出場機会こそなかったものの、右膝外側半月板損傷の手術で長期離脱を余儀なくされていたDF小田逸稀が今季初のベンチ入りをはたすなど、チームを悩ませてきた怪我による離脱者の復帰が好材料となりそうだ。

 厳しい夏場の戦いを乗り越えて、まずはJ1残留を確定させたいところ。

攻守ともに存在感を増す上島拓巳

 今季より横浜F・マリノスからの完全移籍で再加入したDF上島拓巳は、2020年のJ2リーグで福岡の一員としてJ1昇格に大きく貢献した(2020年当時は柏レイソルより期限付き移籍)。翌年、福岡を離れ、柏レイソルと横浜F・マリノスで5年間、リーグ戦やカップ戦のほか、アジア・チャンピオンズリーグ(ACL)などの国際舞台も経験し、プレーも身体もたくましくなって戻ってきた。今季の福岡では、開幕から守備の要としてJ1リーグ20試合に出場し、スタメンにも定着している。リーグ戦9戦負けなしの11位の成績も、徐々に調子をあげている上島の安定感も大きく寄与している。

 フル出場した清水戦でも、清水のセットプレーやロングボールを高い身体能力で跳ね返し、空中戦勝率74.7%(リーグ32位)の強さを見せつけた。

 試合を重ねるごとに存在感が増している上島は、試合後のインタビューで「ここ最近、攻守において狙い通りのかたちを出せていることについては“積み上がっている”と感じます。戦術に自分自身がフィットしてきた実感もありますし、今、コンディションも良く、90分を通じて自分の持ち味を出せていたかなと思います。今日の試合内容に関しては、決定機もたくさんあって、僕自身もセットプレーで決められなかったので、そこさえ決められたらパーフェクトだったかなと思います」と話した。

 次節、福岡は8月31日(日)に敵地で、首位と勝点1差の4位につける好調の柏レイソルと対戦する。柏は上島がユース時代を過ごし、プロ生活をスタートさせた古巣。上島は「この前の試合(浦和戦)も見ましたが、柏は勢いもあり、自分たちのスタイルに自信をもっているチーム。柏と対戦することは僕自身も楽しみにしているし、好調のチーム相手に福岡がどこまでやれるかというところも楽しみにしている」と古巣対戦への思いを語った。

 J1昇格が目標だった2020年とは異なり、今の福岡はJ1定着とともにJ1上位を目指すチームに成長している。チーム目標である6位以内を達成するためには、上島の経験とリーダーシップが不可欠だ。

【川添道子】

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