【予告】伊勢彦信氏に関する記事を、経済事件簿として連載予定

 養鶏業の覇者であり稀代の美術コレクターとして知られる伊勢彦信氏に関する記事を、明日から経済事件簿として連載してお届けする。

 それに先立って、伊勢氏の経歴を簡単に振り返っておこう。

 伊勢彦信は富山県出身で、旧制富山県立福野農学校(現・南砺福野高校)を卒業後、父が営む鶏の育種改良事業を継ぎ、52年にイセ(株)を創業した。

 71年に埼玉県鴻巣市にイセ食品を設立し、飼料づくりから種鶏や親鶏の育成、採卵、その後の出荷、配送に至るまでを自社で一貫して管理するイセ・インテグレーションシステムを構築。業容を急拡大させるとともに、ブランド卵として「森のたまご」、高級卵「伊勢の卵」、機能性卵「伊勢の卵プラス」などのシリーズを開発した。

 80年代には積極的に海外進出も行い、とくにアメリカでは80年に米国法人イセアメリカを設立。不動産の買収などを行い、ニューヨーク・タイムズから「The U.S. EGG KING」と称された。2015年には東海岸6州で65%のシェアを獲得するまでに至ったとされる。アメリカの他にも、中国やシンガポールでも事業を展開し、世界最大の卵メーカーとなった。

 また世界的な美術品コレクターとしても著名で、イセコレクションと呼ばれる。コレクションは西洋近代の絵画美術、中国陶磁器、日本美術まで広範におよぶ。また、文化財団を通じて美術・音楽支援や文化交流にも尽力した。その功績からフランス政府芸術文化勲章(シュヴァリエ)や外務大臣表彰を受賞した。

 2022年、イセ食品が会社更生手続きに入った。

【寺村朋輝】

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