営業力と人材育成で業界の逆風を突破 総合販促支援、その先を見据えた進化|アド印刷

<COMPANY INFORMATION>
アド印刷(株)

代 表:古賀照也
所在地:福岡市博多区榎田1-3-23
設 立:1978年7月
資本金:4,000万円
TEL:092-472-9871
URL:https://www.ad-printing.co.jp


 印刷市場が縮小するなか、福岡のアド印刷(株)は2025年2月期に売上高82億円と過去最高を更新した。22年8月に社長に就任した古賀照也氏は、創業者・田平保男会長から受け継いだ「営業力」と「チャレンジスピリット」を武器に、印刷会社から総合販促支援企業への転換を加速させている。

【目次】

コロナ禍の仕込み結実
過去最高売上高82億円

古賀照也代表
古賀照也代表

    2024年2月期に74億円で過去最高を記録したアド印刷(株)だが、25年2月期はさらに82億円へと増収。この成長を支えたのは、コロナ禍での地道な取り組みだった。

 「増収の要因は、コロナ期に減少していた旅行系の案件が好調に回復したことが大きい」と代表取締役社長・古賀照也氏は説明する。コロナ禍で打撃を受けた旅行業界の需要が減少するなか、同社は官公庁案件など新規分野の開拓に注力。その底上げ効果に加えて、旅行需要の回復が重なり、大幅な増収につながった。

 さらに注目なのは、年間100〜150社という新規顧客開拓のペースを維持し続けていることだ。「新規のクライアント開拓は会長時代からの文化。これがなければ成長はなかった」と古賀社長は強調する。創業48年、一貫して新規営業を重視してきた姿勢が、業界全体が縮小するなかで同社の成長を支えている。

 26年2月期の業績は横ばいとなる見通しだが、理由は物価高や先行き不透明感から、多くの企業が販促費を抑制しているためだ。ただし、動画事業は前年比倍々ペースで成長しており、新たな収益の柱として育ちつつある。売上構成は、東京・大阪で全体の約半分、九州で約4割となっており、大阪支社は単体で初めて10億円を突破した。全国展開の成果が数字にも表れている。

営業力と人間力がカギ
成長は人材投資から

本社エントランス
本社エントランス

    「同業他社との違いは営業力だと思っています」と古賀社長の言葉は明快だ。印刷業界が厳しい環境にあるなか、200人超の雇用を維持し成長を続ける要因は、創業者・田平保男会長が培ってきた営業文化にある。同業者からも「そんな営業の強い組織をどうやってつくるのか」と問われるほどの営業力。その秘訣は徹底した人材育成にある。

 アド印刷では「カッツ理論」に基づき、ヒューマンスキル、テクニカルスキル、コンセプチュアルスキルの3軸で社員教育を体系化。全社員が就業時間内に月2時間の研修を受講し、年代や役職に応じたプログラムを実施している。

 「ヒューマンスキルは若手もベテランも共通して必要。時間を守る、仕事が早いといった基本的な部分で他社の営業より評価されれば、若手でも仕事を取れるようになる」。古賀社長自らも各拠点を毎月訪問し、若手社員と直接対話を続ける。「社員1人ひとりの魅力が、顧客から選ばれる理由」という信念のもと、内省の時間や発表の場を設けている。

 さらに23年4月からは営業体制を改革。それまで印刷とWeb事業で分かれていた営業を統合し、全営業社員がすべての商品を扱う体制に移行した。継続することで印刷の既存顧客からWebや動画の相談案件が生まれ始めている。

 また、月2時間の学習時間制度、外部講師による研修、AI活用の勉強会など、「社長就任後、教育費は確実に増えている」と古賀社長は認める。短期的な利益を犠牲にしても人材育成に投資する。この姿勢こそ、アド印刷の競争力の源泉だ。

印刷含む総合販促支援
発送から物流まで拡大

本社社屋
本社社屋

    古賀社長は「社名に『印刷』とついているが、私たちは広告代理店であるべき」と語る。

 現在の売上構成は、オフライン事業(印刷・DM)が約9割、Web・動画事業が約1割。通信販売事業者向けが全体の7〜8割を占める。しかし、印刷市場は最盛期の9兆円から4兆円へ縮小し、さらに3兆円まで減少するとの予測もある。

 この構造変化に対応するため、アド印刷は新たな事業領域への挑戦を加速している。その1つが、子会社のMARUO(株)を通じた商品ピッキング・発送代行事業だ。MARUOはもともと紙袋と包装紙の事業を展開していたが、コロナ禍で打撃を受けた。そこで、もともとあった倉庫スペースを活用し、商品発送代行事業へと転換。この事業が軌道に乗れば、規格から印刷、パッケージ、商品発送、顧客管理まで、グループで完結できる体制が完成する。

 「通販事業者のお客さまが困っていることを、もっと支援したい。販売促進から商品の発送まで一貫して請け負えるようになれば、お客さまとの関係はより強固になる」(古賀社長)。

 さらにアド印刷は、これまで培ってきた販促ノウハウと実績を生かし、リスティング広告やSNS広告配信、ランディングページ制作など、デジタル領域においても顧客の課題をワンストップで支援する総合力を備える。販促支援の手法が多様化するなか、従来の紙媒体にとどまらず、デジタル領域でもその強みを発揮している。

 クリエイティブ部門では、生成AIの活用が急速に進む。デザイナーや動画制作スタッフ約70人が積極的にAIツールを導入し、絵コンテ作成などの工数を3分の1に短縮。「AIはライバルにもなり得るが、だからこそ自分たちが使いこなさなければ」と、全社でAIリテラシー向上に取り組んでいる。

 「5年後、10年後のアド印刷は、さらに徹底した販促支援と企業支援ができる組織になっていたい」と古賀社長は展望を語る。顧客のあらゆる販促ニーズに応える企業へ。その実現に向けた挑戦は、すでに始まっている。


<求人情報>
アド印刷(株)

アド印刷(株) 求人情報業 種 :広告代理業・製造業(印刷)
職 種 :営業職
勤務地 :本社(福岡市博多区榎田)
採用担当:謝敷咲江
TEL :092-472-4736
採用ページ:https://www.ad-printing.co.jp/recruit/

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