「無料お試し」のはずが高額請求!?求人サイト型の無料広告詐欺の手口と「サインの重み」
人手不足に悩む中小企業を狙った、「求人サイト型の無料広告詐欺」の被害が増加しています。「無料なら」と申し込んだ結果、後から数十万円の高額請求が届き、頭を抱える経営者からのご相談が後を絶ちません。今回は、このような被害に遭った場合に、泣き寝入りしないための現実的な対処法について解説します。
悪質なサイン誘導
悪質業者は、電話やFAX、メールなどで「求人サイトに2週間無料で掲載します」などと勧誘してきます。
担当者が申込書にサインして返信すると、実は枠外などに極小の文字で「※解約の申し出がない場合、自動的に有料プラン(月額数十万円)へ移行する」と書かれています。業者は解約期限が過ぎるまで連絡をせず、有料期間に入った途端に高額な請求書を送ってくるのです。
事業者間取引の法的な壁
相談窓口などに駆け込んでも、「書面にサインした以上、認めざるを得ない」と説明されるケースが少なくありません。
①クーリング・オフ制度が適用されない:消費者保護のためのクーリング・オフ(特定商取引法)は、原則として「事業者間の取引」には適用されません。
②「署名・押印」による強い契約成立の推定:事業者が署名・押印した書面は、「その内容を理解したうえで、納得して契約した」と強く推定されます。「よく読まなかった」「無料だと思った」という事情は、ビジネス上の取引においては自己責任とされ、原則として契約の有効性を認めざるを得ないのが実務上の前提になります。
泣き寝入りしないために
しかし、絶対に支払わなければならないわけではありません。あまりに悪質な勧誘実態がある場合、例外的に以下の主張が可能です。
①詐欺による意思表示の取消(民法第96条):業者側が「完全無料」であると欺罔し、有料移行の条件を故意に隠して錯覚させた場合。
②錯誤による意思表示の取消(民法第95条): 契約の重要部分(有料か無料か)について重大な勘違いがあり、かつ事業者に重大な過失がない場合。
裁判例でも、業者の不当な誘引手法を重視し、契約成立を否定したり取り消しを認めた判決が出されています。
具体的な対処法は?
もし高額な請求書が届いた場合、以下の手順で毅然と対応することが重要です。
①絶対にお金を払わない:一度でも支払ったり、「分割なら払う」といった約束をしたりすると、追認(契約を認めたこと)とみなされ、反論することが困難になります。
②証拠の保存:FAX、申込書控え、メール、録音によって、相手が「無料」を強調していた証拠や、見にくい文字で書かれた申込書自体が、相手の悪質性を証明する重要なカギになります。
③早めに弁護士へ相談:悪質業者は「裁判を起こす」「売掛金を差し押さえる」などと脅してきますが、弁護士が法的な反論(詐欺・錯誤の主張)を記した内容証明郵便を送ると、裁判での敗訴や悪事の露見を恐れて請求を断念することが多いです。
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事業者間の取引において「書面へのサイン」は極めて重大な意味をもちます。この点は十分認識していただき、日常的に慎重な対応が必要です。だからこそ、相手は「サインさえ取れば勝ち」と考えて攻撃してくるのです。
しかし、悪質な詐欺的手法に対しては、法的対抗策が存在します。サインしてしまったからと1人で抱え込み、支払ってしまう前に、ぜひ一度弁護士にご相談ください。
<INFORMATION>
岡本綜合法律事務所
所在地:福岡市中央区天神3-3-5 天神大産ビル6F
TEL:092-718-1580
URL: https://okamoto-law.com/
<プロフィール>
岡本成史(おかもと・しげふみ)
弁護士・税理士
岡本綜合法律事務所 代表
1971年生まれ。京都大学法学部卒。97年弁護士登録。大阪の法律事務所で弁護士活動をスタートさせ、2006年に岡本綜合法律事務所を開所。経営革新等支援機関、(一社)相続診断協会パートナー事務所/宅地建物取引士、家族信託専門士。ケア・イノベーション事業協同組合理事。

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