米中首脳会談で明らかになったお土産合戦 “パンダvs白頭鷲”で勝利したのは中国か?(前)

国際未来科学研究所
代表 浜田和幸 氏

 世界の注目を集めた米中首脳会談は、AI対話の枠組みの創設や両国が第2次世界大戦で「同盟国」として戦った歴史を明記したうえで、レアアースの輸出規制などを含む貿易戦争の「休戦」期限を2カ月延長することで合意しました。双方は勝利宣言をしたものの、ウクライナ戦争やイラン戦争の終結や台湾問題の解決は先送りになり、成果は限定的と言わざるを得ません。

白頭鷲とパンダが象徴する
米中首脳の「お土産合戦」

 11月の中間選挙で苦戦が伝えられているトランプ大統領は、従来の厳しい対中政策を自ら封印して米中首脳会談に臨んだように見えました。そんななか、話題となったのは、トランプ大統領と習近平国家主席の「お土産合戦」でした。外交の舞台では「お土産」が欠かせません。相手側をなびかせるため、各国とも工夫を凝らします。今回は、両国の緊張関係も懸念されていたため、その懐柔策として、どのようなお土産が交換されるのか、世界が固唾を飲んで見守ったわけです。

 そのハイライトはトランプ大統領が主催した国賓待遇で招いた習近平夫妻の歓迎夕食会の席で、アメリカの国鳥である「白頭鷲」の彫り物を中国側にプレゼントした場面でした。トランプ氏曰く「この鷲の彫り物は自分とメラニア夫人のアイデアに基づき製作された貴重な飾り物だ。中国の最も相応しい場所に飾って欲しい」。確かに巨大な鷲の彫り物は参加者の目を惹きつけ、迫力満点でした。

アトランタへ渡った「平平」と「福双」

 もちろん、習主席夫妻もご満悦の様子。習主席は、4月に締結済みの協力協定に基づき、2頭のパンダが数日中にアトランタ動物園へ到着すると発表しました。これこそ、中国の得意とする「パンダ外交」に他なりません。

 2頭のパンダは「平平(ピンピン)」と「福双(フーシュアン)」と命名されています。オスの「平平」の名前は「習近平」から取ったものではなく、1957年に当時の毛沢東主席が旧ソ連に初めて贈った、中国のパンダ外交第1号となった歴史的なパンダと同じ名前です。今後の米中関係の進展を期待し、この伝統的な名前が付けられたものと思われます。

 首脳会談が終わるや否や、早速、2頭のパンダは特別機の「パンダ・エキスプレス」で成都からアトランタに到着。16時間のノンストップの旅でした。この特別機はフェデックスが無償提供したもので、機内には多くの新鮮な竹に水、そしてパンダの大好物のリンゴやパンダ団子も大量に積まれていたとのこと。現地では11月のお披露目を想定しての準備が着々と進んでいるようです。

 なお、日本ではあまり知られていませんが、オスの「平平」は日本生まれのパイオニアを父に持つ木登り名人なのです。2020年3月17日生まれ(到着時6歳)。成都ジャイアントパンダ繁育研究基地で双子の兄として生まれました。出生時の名前としては、「熱干麺」という中国・武漢の名物麺料理にちなんだユニークな名前が付けられていました。双子の弟は「蛋烘糕」というお菓子の名前があてがわれたとのこと。

 メスの「福双」はカンフー・パンダの血を引くハチミツ好きで知られています。20年10月18日生まれ(到着時5歳)で、「平平」の7カ月後に同じく成都の繁殖基地で誕生しました。実は、彼女の父親は、大ヒット映画『カンフー・パンダ』の主人公「ポー」のモデルになったことで世界的に有名な「功仔(ゴンザイ)」です。また、彼女の妹である「福菀(フーワン)」は、生まれつき足が少し不自由ながら懸命に生きる姿が中国のSNSで大人気となった国民的アイドルパンダです。そうした背景もあり、「福双」もまた、スターの血筋を引いていると言っても過言ではありません。

 2頭は、アトランタ動物園に新しく用意された施設で約1カ月間の検疫(隔離)期間を過ごす予定です。新設された「バイオセキュア・エリア」で厳しい衛生管理が行われています。感染症対策も万全のようです。環境への適応能力は非常に高く、すでに現地の竹をモリモリ食べて元気に過ごしていると報告されています。

 アトランタ動物園では今後10年間にわたり共同繁殖研究が行われる予定で、園の担当者は「将来的に2頭が自然交配して、アトランタに新しい赤ちゃんが誕生することを期待している」と語っています。というのも、アトランタ動物園は過去25年間で7頭の赤ちゃんパンダを無事に誕生、育成させており、世界でも指折りの繁殖実績をもっているのです。

日本から消えた「友好の象徴」パンダ

 アメリカとは対照的に、高市首相の台湾有事をめぐる発言で日中関係が悪化するなか、日本ではパンダ不在が続いています。いわば、日中関係は戦後最悪の状態に陥っていると言っても過言ではありません。

 とはいえ、中国は米国との交渉を最優先させているに過ぎません。中国から見れば、日本は米国のいうなりの属国のような存在なのですから。

 そのため、習近平国家主席の観点からすれば、トランプ大統領の首根っこさえ押さえておけば、「日本は何とでもいうことを聞かせることができる」と高を括っているフシも感じられるほどです。

 その象徴が「パンダ外交」です。

 去る1月27日、双子の「暁暁(シャオシャオ)」と「蕾蕾(レイレイ)」が上野動物園から中国へ返還されました。その結果、日中が国交を正常化した1972年以来、初めて日本にはパンダが1頭もない状態となったわけです。

(つづく)


浜田和幸(はまだ・かずゆき)
国際未来科学研究所主宰。国際政治経済学者。東京外国語大学中国科卒。米ジョージ・ワシントン大学政治学博士。新日本製鐵、米戦略国際問題研究所、米議会調査局などを経て現職。2010年7月、参議院議員選挙・鳥取選挙区で初当選をはたした。11年6月自民党を離党、無所属で総務大臣政務官に就任し震災復興に尽力。外務大臣政務官、東日本大震災復興対策本部員も務めた。著作に『イーロン・マスク 次の標的』(祥伝社)、『封印されたノストラダムス』(ビジネス社)など。

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