2024年04月26日( 金 )

泥沼化する縁者同士の企業間トラブル(中)

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 現在、B社の経営は存亡の危機に瀕している。直近の売上高は約9,700万円で、ピーク時の5分の1にまで減収。また、現在の借入金は2~3億円で、周辺からは「法的手続きで会社を整理すべき」と進言されている状況だ。だが、B社代表はまだ事業継続を諦めていない。

 B社代表は、自身の苦しい胸中を次のように語る。

work 「旧知のお客さまからも、励ましの言葉をいただいております。その声に応えるべく、必ず経営を再建していく方向に変わりはありません。ですがそのためには、販売力のある商材が不可欠です。このシーズン(10~12月)に必ず売れる商材があり、A社に対してその商品を卸してほしいと依頼しているのですが、応えてくれません。昨年からこの状態です。あまり言いたくはありませんが、我が息子です。A社代表が会社を設立するときには、資本金や運転資金、事務所の経費など、トータルにして約1億円超の支援を行ってきました。ですが、約3年前に、私の知らないところで、私が手がけ開発してきたノウハウを用い、商品の製造・販売を始めました。しかも、私の兄であるC社の代表と一緒に、です。さらに、私の会社の社員を引き抜くことも行っておりました。それでも、そうしたことは不問にして、「商品を卸してほしい」とA社代表に依頼したのです。残念ながら、我が社はもはや自社で企画・製造する資金力がなかったため、息子の会社から商品を納入して、それで事業を再建する意向でした。A社に対し、これまで支援してきたことを恩着せがましくするつもりはありません。投資した金銭を返してくれということでもありません。ただ、今までのお客さまに対して迷惑をかけたくないので、商品を卸してほしいだけです。そして事業を再建して、支払などが滞っているお取引先に対して、少しずつでも返していきたいのです」。

 現在、B社代表は実兄であるC社代表からも、商品の供給を断られている状況にあるという。
 なお、A社がB社への商品の卸を行わない理由は、B社の取引行である地場の大手地銀の力が働いているという。というのも、同行はA社に対して、「B社に商品を卸すのであれば、取引を終了させる」と宣告したというのだ。

 B社代表は、A社に対して約1,200万円の債権を有していると主張している。これについては、B社代表が提示した台帳で確認している。だが一方で、B社の決算報告書によると、A社への買掛金1,171万円が存在することも判明。これは、A社からB社に対して商品を卸した実績が存在するという証である。すなわちA社にとっては、未回収の売掛金となる。

 かつてB社代表が、A社の会社設立の際にどれだけの金額を、どのようにしてサポートしたのかは定かではない。それが、実の親としての援助なのか、それとも投資したのか、あるいは貸し付けたのか――。だが、そのいずれであったにせよ、A社の事業へのサポートであったことは確かである。であればこそ、相互間金銭の出し入れは、客観的な方法で明らかにしておくべきだったのではないだろうか。

(つづく)
【河原 清明】

 
(前)
(後)

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