2024年04月30日( 火 )

4,000億円挑戦企業・九電工~株価高騰の悲喜こもごも(3)

記事を保存する

保存した記事はマイページからいつでも閲覧いただけます。

印刷
お問い合わせ

プロパー色強い経営陣

 6月26日、福岡商工会議所の議員総会で、同社代表取締役会長を務めた藤永憲一氏(現・相談役)を副会頭から会頭に昇格することが決定。藤永氏は、九州商工会議所連合会の会長と、日本商工会議所副会頭も兼務する。

 藤永氏は、12年に九州電力の取締役常務執行役員から同社取締役執行役員に就任。14年6月、同社副社長を経て同社代表取締役会長に就任した。なお、今年6月で会長を退任し、後任には、九電の佐藤尚文副社長が取締役会長として就任。同社代表は、社長・西村松次氏、副社長(東京本社代表)の猪野生紀氏、副社長(経営管理全般担当)の檜垣博紀氏の3人代表体制となっている。

 西村、猪野の両氏は、ともに同社のプロパー。檜垣氏は、新日本製鐵(株)(1999年4月入社)の原料部長を経て、08年7月に同社経営企画部部長として入社した。監査役2名含む常勤役員12名のうち、九電出身は、佐藤氏のほか、電力本部長安全担当の取締役専務執行役員・前田敬治氏のみ。代表取締役以下、9名が同社入社組というプロパー色の強い経営陣となっている。

 首都圏営業強化の原動力となった生え抜きコンビ、西村社長、猪野副社長をツートップに引き上げたのは、九電出身の前社長・橋田紘一氏。橋田氏は、先々代社長・河部氏が進めた多角経営化に待ったをかけ、「選択と集中」の方針を打ち出し、本業である設備工事業での収益性向上と営業強化が基本路線となった。2011年3月の福島第一原発事故に端を発した“原発ショック”で九電からの受注が減るなか、同社は、民間からの受注を伸ばし、原発ショック直前の11年3月期から、売上高を1,122億9,500万円増(45.1%増)、経常利益を294億6,800万円増(374%増)と逞しく業績を伸ばしている。
依存体質からの脱却

 1951年、特殊法人日本発送電を9つの電力会社に分ける分割民営化(9電力体制)で誕生した九電。九電工は、第2次世界大戦中、国策で各地区の電気工事業者が再編されるなかで誕生した。戦後、9つの「〇〇電気工事(株)」(〇〇は地区名)は、それぞれ同じ地区の電力会社から配電工事を受注することで、事業基盤を構築してきたのである。

 弊誌では、九電工が民間企業として、どのような進化を遂げているのかを計るうえで、同じ設立背景をもつ9つの設備工事会社(9電工)との比較を行っている。【表Ⅲ】は、2018年3月期決算における売上高ランキングと経営比較。表では省略したが、旧名は、関東電気工事(株)(関電工)、近畿電気工事(株)(きんでん)、九州電気工事(株)(九電工)、東北電気工事(株)(ユアテック)、東海電気工事(株)(トーエネック)、中国電気工事(株)(中電工)、四国電気工事(株)(四電工)である。

 同期における売上高は、東京オリンピックと都市再開発で活況の首都圏需要を背景に関電工が前期比7.7%の増収(売上高5,072億500万円)を遂げ、首位のきんでんを抜いた。この「二強」を猛追しているのが九電工。九電工と同じく、首都圏での営業強化を戦略として打ち出すきんでんと、地元・関電工で3つ巴の競争が起きている。

 そのようななか、九電工は、「9電工」上位のなかでトップの営業利益率9.6%を誇る。また、「9電力」(九電工は九電)からの売上高のシェアは、「9電工」で最も低い14.4%。九電からの売上高は、12年3月期に落ち込んでから、概ね500億円前後で推移。他方、九電以外の売上高を伸ばしたことによってシェアが下がるかたちとなった。いまだ3割以上の売上高を「9電力」に依存しているところが多いなかで、民間からの受注を増やし、依存体質から脱却したことがわかるデータとなっている。

※クリックで拡大

(つづく)

<COMPANY INFORMATION>
代 表:西村 松次ほか2名
所在地:福岡市南区那の川1-23-35
設 立:1944年12月
資本金:125億5,506万円
売上高:(18/3連結)3,608億7,200万円

 
(2)

関連記事