2024年05月02日( 木 )

「建物」「人」「財産」を守る防水工事業

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(一社)全国防水工事業協会 九州沖縄支部 支部長 津上 和由 氏

(一社)全国防水工事業協会
九州沖縄支部 支部長
津上 和由 氏

「人間の文化遺産」を後世に、重要な役割を担う防水工事

 ──防水工事とは、どのようなものでしょうか。

 津上 人間社会において建物というものがなぜ建てられるかというと、雨や風といった自然の脅威から人間を守ることが、そもそもの大きな目的ですよね。その建物における防水工事の大きな役割は、降雨水や生活用水などを遮断して漏水を防ぐことで、建物の耐久性を高め、建物内部の生活空間にいる人間を守るだけでなく、建物に収められたさまざまな財産までも守ることです。つまり、少々大げさな言い方をすれば、防水工事は人間の文化遺産を後世に伝える役割をはたしているものだと自負しております。

 ──防水工事といっても、さまざまな工法があります。

 津上 建物のなかで、陸屋根や勾配屋根、バルコニーをはじめ、開放廊下や庇、外階段など、雨のかかる場所には防水処理が必要となります。そのため、防水工事にはあらゆる条件や用途に対応できるように、アスファルト防水やウレタン防水、合成高分子系ルーフィングシート防水、セメント系防水など、多種多様な工法があります。

アスファルト防水(冷熱工法)
アスファルト防水(冷熱工法)

    アスファルト防水は、主に合成繊維不織布にアスファルトを含浸・コーティングしたシート状のルーフィングを貼り重ねて形成する工法です。さらに細分化され、熱工法、トーチ工法、常温工法などに分類されます。ウレタン防水は、液体状のウレタン樹脂を塗り付けて固める(硬化する)ことによって、弾性でゴム状の防水層をつくる工法で、密着工法と通気緩衝工法があります。高分子系ルーフィングシート防水は、加硫ゴム系と塩化ビニル樹脂系に分かれており、接着工法と機械的固定工法があります。セメント系防水は、ケイ酸質系塗布防水とポリマーセメント系防水の2種類。その他、外壁の目地に充填するシーリングもあります。

 ──防水工事の業界環境などはいかがですか。

 津上 工法や材料によっても異なりますが、防水層が常に雨風に晒されて劣化しやすい環境下にあるため、漏水を防ぐためにも一般的には約10年が過ぎた段階で防水工事のやり替えが必要となります。つまり、絶えずメンテナンスや更新の需要がありますので、先の見込める業種です。現在、建物の新築工事だけでなく、リノベーションなどの改修工事が増加しているのも、業界環境として追い風になっています。

 実際、防水工事業の許可を受ける業者も増えています。国土交通省不動産・建設経済局の建設業許可業者数調査によると、2000年3月末には約1万5,000社だったのが、22年3月末には約3万7,500社まで増加しており、ずっと増加傾向で推移しています。もちろん、塗装業者が業種追加で許可をもらうケースも多いので、すべてが防水工事の専門業者とは限りませんが、新規参入が多いのは大きな特徴だといえます。

【内山 義之】


<プロフィール>
津上 和由
(つがみ・かずよし)
1954年3月生まれ。78年3月山口大学経済学部卒業後、同年4月より住友不動産(株)に入社。80年4月に津上産業(株)に入社し、2年間、中村瀝青工業(株)に出向。94年11月、津上産業(株)代表取締役に就任。2008年に(一社)全国防水工事業協会九州沖縄支部長に就任。 

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