2024年04月29日( 月 )

【日建連九州支部】建設業を魅力ある産業へ(後)

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(一社)日本建設業連合会 九州支部
支部長 西河 誠 氏

 (一社)日本建設業連合会(以下、日建連)九州支部はスーパーゼネコンをはじめ、九州管内で施工を行うゼネコン59社が所属する団体。九州支部では現在、大成建設(株)九州支店理事支店長・西河誠氏が支部長を務めている。当会はどのような目的で設立され、九州支部では現在どのような活動を行っているのか。西河支部長に話をうかがった。

建設業に触れる、機会を創出する(つづく)

(一社)日本建設業連合会 九州支部 支部長 西河 誠 氏
(一社)日本建設業連合会 九州支部
支部長 西河 誠 氏

    ──今の建設業界は、どのような状態でしょうか。

 西河 ご存知の通り、ここ数年は建設資材の高騰が顕著となっています。官庁工事の場合は「単品スライド」が工事請負契約書に記載されていますが、民間工事の場合、ゼネコンから施主への説明が必要になります。しかし、単体では業界全体の価格を把握し、状況を伝えることは困難であることから、会員から共通の資料作成を要望する声が多く寄せられました。

 これを受け、日建連本部では最新の資材価格に関する民間事業者施主向けの共通資料を作成しました。こちらは毎月更新しています。実際にこの資料によって、資材価格の上昇分を施工代金に反映させることを一部認めてもらったり、設計変更や追加工事に対応することが決定したりしたという会員企業もあると聞いています。

 資材不足は、施工側であるゼネコンの企業努力だけでは吸収しきれないレベルに到達しています。この状態が続くと、業界全体に多大な影響が出てしまいます。

 さらに、人材不足も喫緊の課題となりつつあります。現在の建設業界において、現場を任せられるリーダーが40代後半~50代となっていますが、その次の世代となる30代~40代前半の世代が元来、人口分布としても少なく、建設業においても自ずと就業者が少ないのです。そのため、さらに次の世代となる10~20代の作業員が気軽に相談できる先輩・上司がおらず、精神的な負担が高くなる傾向にあります。

 また、作業所長から伝えたいことがあっても、言葉選びや感覚が異なるために、30歳近く離れた若手世代にその本意が正しく伝わらないというケースもあります。このようなコミュニケーションギャップが作業所の組織のなかで発生しやすく、歪みが生まれる原因となっています。私たちとしては「建設業」で働く人が増えてくれたらと考えています。

 建設業界の問題は1つひとつの会社単位ではなく、業界全体で解決していかなければいけません。この解決なしには建設業界の明るい未来は見込めませんので、日建連全体の課題として捉え、取り組んでまいります。

「新4K」打ち出しイメージアップへ

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    ──人材について、課題は感じられていますか。

 西河 やはり「若者の入職促進と定着」の部分が、どの企業においても課題として見られています。建設業就業者に占める55歳以上の割合は35.3%と、約20年の間で上昇している一方で、29歳以下は12.0%と右肩下がりとなってしまっています(日建連デジタルハンドブック参照)。そもそもの入職者が少ないことに加え、離職の多さも原因となっています。このことから、日建連としても「働き方改革」は重要視しています。

 3Kと呼ばれる昔のイメージをどうにか払拭できないかと、現在は「新4K」を打ち出しています。これは①「給与が良い」、②「休暇が取れる」、③「希望がもてる」、④「かっこいい」の4つを今後の建設業界が目指す姿として掲げたものです。

 1つ目の「給与が良い」については、前述したように、時代の変化にともなう適正価格の実現も取り組みの1つとなりますが、国交省が推進するキャリアアップシステム(CCUS)にも期待しています。これは建設業における技能者の技能や経験に基づいて4種のレベル分けを行うことで、個人のスキルの現状を知ることができるだけでなく、将来的にはそれに見合った評価や待遇を受けることができるような検討がされていると聞いております。国交省は23年度末にはすべての現場で導入されることを目標にしており、日建連もこの活動に協力しています。

 2つ目の「休暇が取れる」では、週休2日制の実現を目指しています。会員企業に対して毎年アンケートを取り、その現状を確認しています。九地整発注の21年5月~6月竣工の工事においては、8割が週休2日制を実現したという結果が得られました。もちろん、災害復旧工事においてはその実現が困難となりますので、「4週8閉所」ではなく「4週8休」として、現場は動いているけれど人は休むことができているという状況を、1つでも多くつくることを目指しています。

 今回のアンケートは公共工事のみとなっており、民間工事を入れるとその実現率は大きく下がってしまっています。現状としては、工期を終えた後にまとめて代休を消化するなどして年間の休暇を確保するかたちが多いため、工期の設定について施主と見直しを行うなどして改善を図っていきます。

土木の日ファミリーフェスタ2022
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    最後の2つ、「希望がもてる」「かっこいい」という部分については、最新の建設機材や技術による「建設業の進化」で魅力を発信したいと考えています。近年は作業現場のDXが積極的に行われており、ドローンでの測量や掘削機械の無人化など、見た目のかっこよさだけでなく、作業員の負担を減少させる工夫が各所で見られるようになりました。

 やはり、働く方々にとって魅力のある作業所にならないことには、人材は集まりません。「建設業をやりたい」と志してもらえるよう、これらの活動はとくに力を入れていきたいと考えています。

 ──最後に、今後の活動についてお聞かせください。

 西河 私は日本の最重要課題は少子高齢化だと捉えています。この状況下で建設業が魅力ある産業であり続けるための活動は惜しみなくやっていかなければ、この状況は変えられません。そのため建設業界が団結して魅力に溢れた作業所をつくり、若手の入職者を迎え入れていきたい。もちろん、女性入職者なども含めて担い手確保を行うこと。また、建設業の魅力向上のために、さまざまな活動についても継続して取り組んでいく所存です。

(了)

【杉町 彩紗】


<プロフィール>
西河 誠
(にしかわ・まこと)
1962年8月福岡県生まれ。大成建設(株)九州支店建築部長などを経て、2022年4月より同社九州支店理事支店長、(一社)日本建設業連合会九州支部支部長に就任。

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