2024年04月29日( 月 )

国道3号 博多バイパス 全線開通、渋滞緩和や安全性向上に期待の声(後)

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期待される3つの効果

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 今回の博多バイパス全線開通には、大きく分けて3つの効果が期待されている。
 まず、「交通混雑の緩和による暮らしの快適性の向上」が挙げられる。博多バイパスと並行する国道3号の交通量は、15年には1日あたり約7万3,000台に達し、香椎参道口交差点付近や御島橋交差点付近など、慢性的な渋滞箇所が点在。仮に博多バイパスが開通せずにこのままいけば、30年には1日あたり10万台を超すという推計もなされていた。それが博多バイパスの開通により交通量が分散されることで、現在の国道3号の1日あたりの交通量は30年には4万6,400台程度と大幅に減少すると試算。国道3号の旅行速度(※)も、15年の18km/hから30年には30km/hと、12km/h向上する見込みとなっている。これにより、交通混雑が緩和するとともに、通勤や買い物などの日常的な移動の円滑化も図られ、暮らしの快適性向上が期待されている。

 次に、「生活道路の安全性の向上」。これまでは、前述した国道3号における慢性的な交通混雑により、それを避けるべく周辺の生活道路を迂回ルートとして通行するドライバーも多く、それによって周辺の生活道路における交通事故件数も増加傾向にあった。それが今回の開通により、生活道路に流入していた通過交通量が分散されることにより、通学路としても使われている生活道路の安全性向上が期待されている。

 最後に「業務・物流の生産性の向上」が挙げられる。福岡市東区における物流関連企業進出数は、81年には441社だったものが、16年には628社と約4割増加。今後も博多バイパスの沿線地域には、さらなる物流企業の進出が見込まれる。交通混雑の緩和により、博多港や博多駅、福岡空港などの九州を代表する交通・物流拠点へのアクセス時間が短縮され、業務や物流などの生産性向上が期待される。たとえば、九州自動車道・古賀ICから福岡空港までのアクセス時間は、博多バイパス未整備時には国道3号を利用して約65分かかっていたものが、開通後は約32分と半分の時間にまで短縮されることが想定されており、輸送効率の向上が期待されている。

世代を超えて福岡都市圏の発展に寄与

 さらに、周辺の地域開発が促進することも期待される。博多バイパス周辺には、近年急速に開発が進行した千早エリアがあるほか、アイランドシティや香椎浜、香椎駅周辺など、いずれも都市開発の動きが活発なエリアが多い。現在も香椎駅周辺土地区画整理事業や香椎副都心土地区画整理事業などの都市開発が進んでおり、今回の博多バイパス全線開通により、「東部広域拠点」である香椎・千早の地域開発にさらなる拍車がかかることが期待されている。

 また、博多バイパスの終点となる下原中央交差点付近には、16年2月に閉場した東部市場跡地がある。約2.2haの広さの同跡地においては、すでに大和リース(株)(大阪市中央区)が事業者に決定。商業施設「BRANCH福岡下原(仮称)」の開発が計画されている。同社の提案によれば、「Community Terrace SHIMOBARU」をコンセプトに商業施設のほか、広場やイベント空間などのコミュニティスペース、医療施設などが整備されていく予定となっており、オープン予定日は今年7月31日だが、テナントは未定。完成すれば、東区にまた1つ新たなランドマークが誕生することになる。

 道路を始めとするインフラは、完成してそれで終わりというものではない。移動時間の短縮や輸送費の低下などによって経済活動の生産性を向上させ、経済成長をもたらす「生産力効果」と、災害安全性の向上などを含めた生活水準の向上に寄与し経済厚生を高める「厚生効果」の大きく分けて2つのストック効果が期待されており、完成後50年、100年と機能を発揮し続けることで、世代を超えて長期にわたって人々の生活を豊かにしていくものだ。今回の博多バイパス全線開通が、周辺の福岡都市圏のさらなる発展に寄与していくことを期待したい。

(了)
【坂田 憲治】

※旅行速度:区間の総延長を、走行に要した時間(信号待ちや交通渋滞による停止時間を含む)で割った平均速度のこと

 
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