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コダマの核心

企業・人、再生シリーズ(31)~自己破産で負の遺産相続を断つ
コダマの核心
2013年12月24日 11:29

<1通の死亡通知>
 大野城市にあるA住宅から『新年挨拶のお断り』の通知がやってきたのが、11月20日のことだった。お断りの理由として、「この会社の社長が11月初めに亡くなった」ということであった。昔はA住宅とは親しい関係にあったのだが、ある事情があってこの10年はまったく疎遠になってしまった。1年に1回、会社をのぞく程度であった。だからA社長の逝去は、ハガキをいただくまでは知る由もなかった。また、会社は四苦八苦しているし、83歳で故人になったことで、葬儀も盛大には行なわれなかったと察する。

 さっそく、故人の自宅の仏壇へお参りにうかがったのは11月24日であったか。自宅は会社の裏にある。非常に気になったことは、2人の息子たちが片付けに忙しく動き回っていたことだ。
 未亡人に経緯を聞くと、今年の正月に前立腺の癌が発見されてから容態が悪化していたそうだ。本人は薬剤師の資格を持っていた人で、健康に気を使いよく歩いていた。ただ、男83歳にもなれば、何が起きても不思議でない。未亡人には「2人の息子さんたちで事業継承してください」と激励したが、芳しい返事がなかった。こちらとしても「借金が過多であるから、事業存続は難しいな」と予測はしていた。

<突然の自己破産情報が届く>
sora_10.jpg 12月半ばになって、A社の自己破産申請の情報が飛び込んできた。「あーやっぱりな」と即座に理解できた。「兄弟が事務所・倉庫回りを整理整頓で飛び回っていたのは、この破産整理の準備のためか」と納得したのである。社長あってのA社であったから、亡くなれば会社が終わりになるのは自明の理である。「だが、打つ手はあったはずだ」と悔やまれる。たしかにA社社長の放漫経営で借金を抱えていたのも事実である。しかし、所有不動産も売却して、借入はピーク時よりも圧縮できていたはずなのだ。
 この程度の借入ならば、兄弟で力を合わせて事業を盛りたてられたと思う。弟の方は持ち分の領域をこなしてきたが、トップの器ではない。兄貴が当然、立つべきであったのだが、その能力をいつの日か失っていた。平成の初頭に初めて長男に会った。そのときはサラリーマンを辞めて『家業を継ぐ』と宣言していた。「この男ならばやれる」という印象を持ったのだが、いつ頃から怠惰になったのか。後継者育成は、スムーズにはいかない。

 一番、懸念した最悪の事態となった。社長が70歳くらいで死んでいたら、経営者保険で少しは借入返済充当できていたことだろう。83歳という年齢であれば、その死亡保険金も当てにはできない。何故ならば、資金繰りに切羽詰まっていたのだから、もうとっくの昔に掛け金をストップしていたはずである。加えること、金融機関は75歳を超えた経営者の連帯保証には、若手の身内の追加保証を求めてくる。長男は負の資産相続=連帯保証人として、個人でも個人破産を申し立てたのである。50歳に達する長男の個人再生の前途は、茨の道である。また、この地区でのA社長時代の同業者は、大半が潰れてしまったという厳然たる事実もある。

(つづく)

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