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2016年10月31日 16:04

世界はITによる第3次産業革命のまっただ中!(後)

大国で成功している国は1つもありません

 ――日本は今年から、マイナンバー制度を開始しました。しかし、決してうまくいっていないというのが、多くの識者の見解です。この点に関しては、どうご覧になられていますか。

net_img-min 山口 実はいわゆる大国で、現状、マイナンバーなどのID制度が成功している国は1つもありません。デジタル化に先進的に取り組んでいる国に、D5(英国、エストニア、イスラエル、韓国、ニュージーランド)があります。しかし、英国は成功までの道のりはまだかなり遠く、韓国もうまくいっていません。このほかに、ドイツなども積極的に取り組んでいますが、日本と同じように、人に番号を付けることにアレルギーがあり、うまくいっていません。

 ただし、どの国においてもデジタル社会が目前に迫っている現実は変わりなく、それを乗り越えるためには、現状ではID制度しかありません。日本のマイナンバー制度は、他国より遅れているイメージがありますが、成功すれば、先進国のなかでは初めての成功事例になります。

重要な取引の際には、匿名性が逆に問題に

 成功というのは、国民皆が使うようになることです。使わなければ、その利便性を感じることができません。しかし、それをどのような場面で、どのように使っていくのかは、既存社会とのバランスになってくると思います。

 「どんな便利が感じられるか」はもちろん大切ですが、今後のデジタル社会では、「あなたが誰であるか」を証明できることが非常に重要になってきます。対面であれば問題ありませんが、デジタル上で、重要な取引をするときには、匿名性は逆に問題になります。今後は、既存のビジネスでは仲介を通していたものの多くが、直接的取引になっていきます。大きくビジネス構造は変わってくるのです。そこでは、IDはとても重要になってきます。

過去のレガシーがなくデジタルからスタート

 ――電子国家や電子認証システムなどの運営に、国の規模や国民の人数は関係ないことは理解できました。しかし国民の合意を形成するのには、やはり、国民の人数の多さや国民のメンタリティなどは、大きく影響しそうです。

 山口 国民の人数が130万人のエストニアでさえ、「eIDカード」の価値が国民に認められるまでに、5年、6年かかっています。その100倍の国民を抱える日本においては、よりじっくり取り組んでいく必要があります。さらに言えば、エストニアの場合は過去のレガシー・テクノロジーがなく、デジタルからスタートしました。日本のように多くのレガシー・テクノロジーがあり、それに関する既得権益が存在している国では、事情は異なってくると思います。

置かれていた状況は今の日本とよく似ている

 しかし、実はエストニアがデジタル化に進んだ理由は、2つの点で今の日本の状況によく似ているのです。1つ目は、人口が一極集中していたことです。人口130万人のうち、首都タリンに40万人、周辺地域を合わせると約50万人が住んでいます。このような状態で、国民全部に等しくユニバーサルサービスを提供することは不可能に近く、IT化できるところはすべてIT化しなければなりませんでした。

 2つ目は少子高齢化です。エストニアでも少子高齢化が進んでおり、高齢者が外に出られない状況のなかで、行政サービスをどう使っていただけるかを考えると、IT化を進めるしか方法がなかったわけです。

 このように、置かれていた状況は今の日本ととてもよく似ているので、エストニアの事例は日本にとって、大いに参考になると思います。

革命では一夜で社会構造そのものが変化します

 ――最後になりました。読者にメッセージをいただけますか。

 山口 今、世界はITによる第3次産業革命のまっただ中にあります。「進化」とは、時間を経て、質が向上、変化していくことを言います。しかし、「革命」は一夜にして、社会構造そのもの、ビジネスそのものが大きくガラッと変わることを意味するのです。
 私はことあるごとに、「皆さんは今、第3次産業革命の帯のなかにいる」と申し上げています。今、それを認識できれば、自分のビジネスのなかで、将来に向けてできることがたくさんあります。しかし、それが認識できないと、反対に、大きな波に飲み込まれてしまう危険があるからです。

 日本は今年からマイナンバー制度を導入しました。それが今後、どのように利活用されていくのか、1億3,000万人という大きなマーケットで実証していくことは大変です。法律などを、特例的に1つひとつ変えていくことも、なかなか難しい作業です。
 しかし、エストニアにはすでにそのプラットホームがあります。今後、日本が開発した技術や手段を、デジタル社会のなかで、どのように使っていけるのか、また外国に輸出することは可能なのか――など、その指標づくりにはエストニアは最適の場所だと思います。
 このような過程のなかで、具体的には、2020年の東京オリンピックに向けて、IT分野でエストニアが協力できる点も多く出てくると思います。私も、エストニアと日本の架け橋になるべく、尽力を惜しまないつもりです。

(了)
【金木 亮憲】

 
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