2024年05月05日( 日 )

J.フロントリテイリング相談役・奥田務氏が講演

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奥田 務 氏<

奥田 務 氏

 「大丸松坂屋百貨店」「パルコ」などを傘下に持つJ.フロントリテイリング(株)の相談役・奥田務氏が28日、福岡市内のホテルで講演会を行った。主催は福岡商工会議所小売商業部会。奥田氏は1997年に(株)大丸の代表取締役社長に就任。当時高コスト・低収益だった同社の立て直しをけん引した経験から、「経営改革を考える」をテーマにいま経営者に求められる要素について語った。

 奥田氏は小売業の変遷について、百貨店は戦後から1970年代半ばまで隆盛を誇っていたが、その後GMSに取って代わられ、さらに2000年代以降はコンビニやディスカウントストア、ネット通販など多種多様な業態が台頭し、「小売は個々の企業間の競争になった」と説明。業態間の壁が崩壊したなかで、百貨店はマーケットの変化に対応できず、大丸もそうしたなかで苦境に陥った。今に至るまで、経営改革には「大丸の再建」「松坂屋との経営統合」「J.フロントリテイリングとしてマルチリテイラーへ」と3つのステージがあり、今後の成長は選択と集中による事業ポートフォリオの最適化、つまり適切なM&Aにかかっていると話した。

 少子化で市場が縮小し、グローバル化、ICT化の流れが加速する現在、経営者には時代の変化の先取り、短期的成果と中長期の成長のバランス、そして絶えず変化し続けることが求められるとした。

 参加者から「大丸の経営改革でもっとも難航したこと」について問われた奥田氏は、会社の現状を認識した上で、成長に向かって進んでいくための「健全な危機感」を社員に持ってもらうことだったと振り返った。

 J.フロントリテイリングの2015年度連結売上高は1兆1,635億円。奥田氏は今後の成長について、「業態の多様化で、百貨店がいままでのように一人勝ちすることはないが、なくなることもない。M&Aで事業の枠をいかに拡大していけるかがポイントとなる」と話した。

 

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