2024年04月29日( 月 )

復活した「日本最強の談合軍団」大林組!!

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 “鬼の特捜”こと東京地検特捜部が動いた。JR東海が進めるリニア中央新幹線建設工事の談合事件である。標的は大林組。かつて「日本最強の談合軍団」と評されたが、相次ぐ摘発で、壊滅状態に追い込まれていた。談合の大林組が復活した!

リニア中央新幹線9兆円のメガプロジェクトをめぐる談合

 リニア中央新幹線の建設工事をめぐり、東京地検特捜部と公正取引委員会は合同で独占禁止法違反(不当な取引制限)の疑いで、12月18日に鹿島と清水建設、19日に大成建設と大林組を家宅捜索した。大林組は同社の共同体企業体(JV)が受注した名古屋市の非常口工事の入札で不正をしたとして偽計業務妨害の容疑で12月8日に特捜部の捜査を受けている。

 リニア中央新幹線は、JR東海が2027年に品川-名古屋間の開業、37年の新大阪延伸を目指す。総事業費9兆円。JR東海の低利融資として、国債発行で集めた3兆円の財政投融資が使われる。官民一体のオールジャパンで取り組む今世紀最大のメガプロジェクトだ。

 談合の容疑の対象は、リニア関連工事でこれまでに発注された22件のすべて工事。4社はこのうち3~4件ずつ計15件を受注しており、それぞれ自社が希望する工事などについて事前協議し、受注調整していた疑いがもたれている。

 大林組は、大手ゼネコン4社で受注調整していたことを認め、課徴金減免制度に基づき、公正取引委員会に違反を自主申告したという。最初に自主申告をした社は、課徴金を全額免除されるほか、刑事告発を免れる。

 報道によると、大林組の土木部門のトップの土屋幸三郎副社長が受注を調整していた。競争入札で、受注予定の会社をあらかじめ決めておき、その会社が入札参加者の最低価格で応札するよう事前に受注調整することを談合という。調整担当者が仕切り役。仕切り役である大林組は、特捜部に完敗した過去の経験から、最初に談合を自主申告して、課徴金や刑事告発を免れることが得策と考えたのだろう。
 特捜部が、リニア新幹線の談合の摘発に本腰を入れたのには前段階がある。

外環道の1.6兆円の工事を大手4社で分け合う

〈東京外郭環状道路(外環道)の工事をめぐり、大手ゼネコンによる談合の疑いが払拭できないとして、工事を発注した東日本高速道路(NEXCO東日本)と中日本高速道路(NEXCO中日本)が、業者との契約手続きを中止した〉(産経ニュース17年9月15日付)

 外環道は1兆6,000億円が発注されるビッグプロジェクトだ。14年4月、4工区に分けられて入札が行われた。4工区は大手ゼネコン4社が分け合った。大林組(1,510億円)、鹿島(1,412億円)、清水建設(1,138億円)、大成建設(1,254億円)がそれぞれ落札した。

 日本共産党の宮本徹代議士は今年3月の衆議院決算行政監視委員会で、談合疑惑を取り上げた。「4件は1社が1件しか受注できない仕組みで、大手ゼネコン4社がそれぞれ幹事社の4つのJV(共同企業体)が受注を分け合う談合が疑われる」として、国の調査を求めた。

 普通は、「調べた結果、談合の事実はありません」と否定して一件落着するところだが、発注元のNEXCO東日本と中日本が「談合の疑いが払拭できない」として、契約手続きを中止した。公正取引委員会と警視庁の捜査機関に委ねた。

 外環道の談合疑惑の解明に連動して、東京地検特捜部は、リニア新幹線建設工事の談合に切り込んだ。大林組にとって悪夢の再来である。10年前大林組は特捜部に完敗したからだ。

特捜部の摘発で、大林組の談合軍団が壊滅状態に

検察庁

 高度経済成長期は、大物仕切り屋の時代だった。建設族のドン、田中角栄元首相と結びついた飛島建設会長の植良祐政氏は「談合の総元締め」と呼ばれた。ゼネコン利権を引き継いだ金丸信・自民党副総裁の後ろ盾を得た大林組常務の平島栄氏は「談合の帝王」として君臨した。だが、今や大物政治家は政界の表舞台から消え、大物仕切り屋の時代は終わった。

 そして官製談合の時代を迎える。企業が地方公共団体の幹部から予定価格を聞き出して、受注調整を行い入札することを官製談合という。

 大林組は公共工事をめぐる談合の発言高めるため、中国から東海に仕切り役を送込んだ。各地で摘発された談合事件では、大林組が中心だった。2006年以降、大林組顧問の肩書きをもつ仕切り役の摘発が相次いだ。

 和歌山県発注のトンネル工事をめぐる談合事件で大阪地検特捜部は仕切り役を立件。名古屋地検特捜部が手がけた名古屋市発注の地下鉄工事の談合事件では、仕切り役を逮捕。副社長ら取締役3人が辞任。07年の大阪府枚方市発注の清掃工事の談合事件では、仕切り役が逮捕。創業家出身の大林剛郎会長、脇村典夫社長が引責辞任した。

 スーパーゼネコンの大林組、鹿島、大成建設、清水建設の4社は、制裁強化の改正独占禁止法が施行される直前の15年12月に談合決別宣言を行った。だが、談合は継続していた。

 07年6月に社長に就いた現社長の白石達氏は、就任会見で「談合を認める社風があった」と認めた。2度と談合を起さないようにするため、定款に「刑法および独占禁止法に違反する行為など、入札の公正、公平を阻害する行為を一切行わない」との規定を盛り込んだ。定款に談合禁止を謳うのは異例なことだ。これで「日本最強の談合軍団」と称された大林組の談合組織は活動停止に追い込まれた。

東日本大震災の復興工事で、談合が復活

 談合が復活するのは11年3月の東日本大震災である。公共事業費の減少で苦境に喘いでいた建設業界は復興・復旧工事で息をついた。さらに東京五輪がある2020年に向けた大都市の再開発ラッシュで工事は急増。建設費高騰や公共工事増加による人手不足が起り、入札不調が相次いだ。入札不調を避けるために、官製談合が復活した。発注先の官公庁、幹事社の大手ゼネコンを筆頭に準大手ゼネコンから地元業者まで巻き込み、談合組織が蘇った。

 リニア関連工事で「談合破り」が1件だけあった。名古屋のリニア新駅工事だ。当初の協議では大成建設が希望したが、結果的に大林組が受注した。異例の大逆転に、何があったのか。日刊ゲンダイ電子版(12月20日付)は、安倍晋三首相と大林組の大林剛郎会長との親交の深さを報じている。過去の大型プロジェクトには大物政治家が介入してきた。はたして今回、「忖度」があったのだろうか。

【森村 和男】

 

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