2024年04月24日( 水 )

会計の見える化・自動化 イノベーションが導く新世代の企業経営(前)

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(株)マネーフォワード

 オープンで公正な「お金のプラットフォーム」を構築すること、本質的なサービスを提供して個人や法人すべての人のお金の課題を解決することを目指し、2012年に設立された(株)マネーフォワード。17年9月、東証マザーズ上場をはたした。変わりゆくお金を取り巻く環境と、企業価値を高めるイノベーションの重要性について、辻庸介社長に聞いた。

(聞き手:データ・マックス執行役員 緒方克美)

個人の財布も会社の経理も自動で「見える化」

 ――マネーフォワードでは、個人向けのサービスと、法人向けのサービスを展開されていますね。

 辻庸介社長(以下、辻) 個人向けの自動家計簿・資産管理サービス「マネーフォワード」は、現在550万人のユーザーに使っていただいており、日本でシェア一番のサービスとなっています。スマホでご自身のさまざまな口座やクレジットカードなどを連携させれば、自分がいくらの資産をもっていて、今日いくら使ったかをいつでも自動で把握することができます。この「自動」というのがとても重要で、これによってお金の使い方を最適化することにつながります。さらに、お金には「管理する」だけでなく、「貯める」といったニーズがあります。次はそれに対応したサービスを提供しようということで、知らずにたまる自動貯金アプリ「しらたま」をリリースしました。

 このように、現在はお金の見える化から課題解決型のサービスの提供を進めています。弊社のサービスを使うことで、自動的にお金の心配をしなくてよくなるようなサービスを展開していきます。

 個人事業主・法人向けには、クラウド型の「MFクラウドシリーズ」を提供しています。会計ソフトや、給与計算ソフトといったバックオフィス業務を自動化するサービスですね。今までであれば100回の手入力が必要だった作業を30回程度に削減しましたから、単純計算で生産性が3.3倍向上できているということになります。バックオフィスの無駄な作業を削減し、効率化して生産性を高められるような提案をしていきます。

 これによって大きく変わるのが、経営数字の見える化が実現できることです。自社の経営状態を確認しようとすると、従来は会計事務所に依頼して、1~2カ月の時間が必要だったのではないでしょうか。弊社のサービスを使うことによって、リアルタイムでスマホ上から現在の経営状況を把握することができます。

 ――会社の会計状況をダイレクトに、リアルタイムに見ることができるとなると、大きく変わることが出てきますね。

 辻 経営の見える化、数字の見える化を行うことで経営のPDCAサイクルのスピードを上げていくということが可能になってきました。さらに次の展開として、そのデータを基に、お金を簡単に借りられる「MFクラウドファイナンス」というサービスを金融機関と一緒に展開しています。

 さらにバックオフィスの請求書発行や入金消込といった煩雑な作業についてはBPO(ビジネス・プロセス・アウトソーシング)的な考え方を推し進めています。少子化の進行にともない余分な人材は確保できない事態が続いていくでしょう。そこで、自分たちのビジネスのコアな部分以外はアウトソーシングすべきではないかという考え方の下、「MF KESSAI」というサービスを開発するなど、さらに新たな展開を進めています。これからも、中小企業が自分たちの強みにフォーカスできるような環境づくりをお手伝いするサービスを提供して行きます。

 経営を良くするには、収益を上げてコストを下げるしかありません。そのためにコックピット経営という数字の見える化、合理化を推進している企業もありますが、生き残る企業というのはすでにそうした取り組みを行っています。中小企業でそれらをすべて自社でできるところは少ないため、サービスを提供するだけでなく、その先にある会計事務所や地方自治体など、企業のサポーターといわれる方たちと一緒に、成功に導くためのサービスの活用方法を考えながら進めています。

 また、情報格差で損をしている人がたくさんいらっしゃいます。インターネットの普及で検索すれば情報を得られるようになったとはいえ、検索する時間がない、検索するための知識がないという方もまだまだたくさんいらっしゃいます。そういう方に、知識がなくても情報を得られるようなサービスを提供したいと考えています。

 ――起業しようと思われた理由は何ですか?

 辻 私の前職はマネックス証券です。マネックスを始めとしたネット証券の登場で手数料が10分の1以下になるなどイノベーションが起きました。情報も機関投資家並みに拾えるようになりました。にもかかわらず、ユーザーは数百万人にしか増えない。一部の人にしかリーチできていないことにもどかしさを感じました。テクノロジーを活用して、すべての人のお金の悩みを解決する手段を提供したいというのがマネーフォワードを立ち上げた理由です。料理だとクックパッド、飲食店だと食べログのような良いサービスが世の中に受け入れられているなか、お金に関するサービスを自らでつくろうと思いました。

(つづく)
【文・構成:藤田 勇一】

<COMPANY INFORMATION>
代 表:辻 庸介
所在地:東京都港区芝5-33-1
    森永プラザビル本館17F
設 立:2012年5月
資本金:18億6,592万1,000円
売上高:(16/11)15億4,200万円

<プロフィール>
(株)マネーフォワード 代表取締役社長CEO 辻 庸介 氏
京都大学農学部を卒業後、ペンシルバニア大学ウォートン校MBA修了。ソニー(株)、マネックス証券(株)を経て、2012年に(株)マネーフォワード設立。新経済連盟の幹事、経済産業省FinTech検討会合の委員も務める。14年1月、「日本起業家賞2014(The Entrepreneur Awards Japan = TEAJ)」で米国大使館賞受賞。同年2月、「ジャパンベンチャーアワード2014」にて、JVA審査委員長賞受賞。同3月、「金融イノベーションビジネスカンファレンスFIBC2014」にて大賞受賞。16年11月、Forbes Japan「日本のベスト起業家ランキング」にて7位を受賞。同年12月、日経ビジネス「2017年日本に最も影響を与える100人」として選出。

 
(中)

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