2024年04月26日( 金 )

「脱・下請」へ 1枚のFAXから生まれたRC住宅事業~(株)崎田工務店

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 小さなきっかけから成功事例が生まれることもある。型枠工事で実績のある(株)崎田工務店(本社:福岡市西区、小林好盛社長)が「脱・下請」を掲げ、鉄筋コンクリート(RC)住宅事業を始めたのは8年前。ゼロからスタートした事業だったが、着実に実績を伸ばしている。型枠技術を生かしたRC住宅建築に踏み切ったきっかけは、1枚のFAXからだった。

 構想は、すでに20年も前からあったもの――そう切り出した小林社長が語り始めた。

 下請一本では、将来が見えない。そう感じていた最中、熊本の建設会社から1枚のFAXが届いた。RC住宅を紹介するセミナーの案内だった。型枠工事では実績がある。しかし、型枠はあくまで下請。自社で何も決められない。ほかにも同業者はいる。金額面で折り合いをつけるしかなかった。

 腹のなかで「畜生」と繰り返していた日々もあった。せっかくこれだけの技術があり、技術者がいる。なにかできないものか。しかし、今さら、元請になるほどの資金はない。それならもっとニッチな分野に出るべきだ。これがセミナーに参加したきっかけだ。

 セミナーで話を聞いて、今後自社の事業として本格的に取り組みたいと強く思うようになった。施工は何とかなるが、営業や設計などのソフト面に課題があった。セミナー初回は福岡、その後熊本にも行った。RC住宅の見学会にも行った。住民の感想も聞いた。そして神戸のセミナーには株主を連れて行った。小林社長の熱意は株主を納得させた。「やってみろ」、株主はそう言った。

 RC住宅事業の正式な立ち上げは、今から8年前。事業部はたった2人から始まった。監督もいない、設計士と営業だけだった。これまでの営業は元請から受注をもらうシステムで、個人への営業のノウハウはなかった。まさにゼロからのスタートだった。

 念願の初契約は3階建てRC住宅だった。2010年のことだ。記念すべき一棟目を引き渡した際には、自然と涙が溢れてきた。年末ぎりぎりに契約がまとまり、年始に地鎮祭を行った。今でも鮮明に覚えている。

 ここ1,2年で受注が増えてきている。今期は受注だけで5億円を超える見込みだ。ラジオやテレビでの宣伝効果も多少あったと思うが、やはりこれまで取引してきた元請からの紹介が大きい。モデルハウスも2棟建設し、見学者から受注につながったこともある。

 今期の売上で見れば、住宅事業は本業の型枠工事と肩を並べる。問い合わせのなかには、資金面に不安があるが、それでもRCで建てたいという声もある。打ち合わせの段階で、現実的に資金調達できないことで、あきらめる場合もある。それでも一定のニーズはあると確信している。事業としては、まだまだ始まったばかりだ。崎田工務店と聞いたら、「RC住宅ですね」といわれる会社を目指したい。元請になってみて、初めて元請の気持ちがわかった。この10年、本当に勉強になった。楽はなかった。苦しいことがほとんどだが、一瞬の感動を社員と共有し続けていきたい。

 「安心をありがとう」――これまで引き渡してきたお客さまからの言葉を胸に、今日も現場へ向かう。

【東城 洋平】

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・福岡の鉄筋コンクリート住宅は崎田工務店へ

 

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