2024年03月29日( 金 )

ポイントオブケア検査(POCT)市場の有望性(後)

記事を保存する

保存した記事はマイページからいつでも閲覧いただけます。

印刷
お問い合わせ

日韓ビジネスコンサルタント 劉明鎬(在日経歴20年)

 ところが、技術の進歩で医療現場が大きく変わってきた。機器の小型化、軽量化、ネットワーク化が可能になり、今までのような高額装置の代わりに、患者の近くで簡単に検査ができるようになった。それだけではない。今までの医療機器は専門家が必要になるので、運営、維持にも高いコストがかかった。しかし、ポイントオブケア検査の場合には、チップをセットしただけで、ボタンを押すと、検査結果が出てくる。今後ポイントオブケア検査が大きく伸びていくことは間違いない。

 その要因の第一に、世界的に高齢化が進んでいることと新しい感染症が出現していることが挙げられる。各国は高齢化が進むことによる医療費の増大を懸念している。そのためコストと診断時間を減らし、効率性を最大化していく必要に迫られている。第二に、患者が病院にいる時間を最小化すると同時に、医者には意思決定の効率を上げる方法が求められている。第三に、費用を減らすとともに、医療へのアクセスを増やす方法であるPOCTは体外診断分野のなかでも最も有望視されている。

 それでは、ポイントオブケア検査にはどのようなものがあるだろうか。 医療現場では必要に応じて検査情報がリアルタイムで求められる場合も多い。検査結果は問診や身体的所見とともに医者が診療の方向性を決定するうえで大事な役割をはたす。

 リアルタイム検査の種類としては、救急検査、緊急検査、感染症迅速診断、在宅医療、災害医療などがある。現在のポイントオブケア検査は血糖検査、血液凝固検査など血液検査がメインになっているが、今後、血液検査の比重は減らされ、感染症検査、妊娠診断などのそのほかの比重が増えていくことが予測されている。

 ポイントオブケア検査の最も大きな市場の1つである中国の市場規模は7億4,000ドル(2015年)で、毎年20%の成長を記録している。中国の医療機関の合計は98万7,000カ所であるが、これらの医療機関に従来のような機器よりポイントオブケア検査の機器の需要が多いのは明確である。

 従来の医療機器を代表する企業としては、ロシュ(スイス)、アボット(米)、シーメンス(独)などがある。しかし、まだ市場は導入期で、今後大きな成長が見込まれているなかで、絶対的な強者は世界的にまだ存在しない。中国では、この分野に進出して上場をはたした企業もすでにある。しかし、市場は大きいが、中国企業の実力はまだグローバル企業と勝負するほどではない。ところが、このニッチ分野で世界ナンバーワンを目指す企業が韓国にある。(株)ゼットバイオ社である。

 「代表は金東園(キン・ドンウォン)議長」。同社の強みは機器を一番効率よく、コストも安く、大量生産できる技術を確保していることだ。業界最高の品質を実現しながら、通常の3分1くらいの価格で提供できる。ポイントオブケア検査は人体だけが対象ではなく、動物の検査にも大きなメリットがあるという。1回の検査費用は100円くらいで、すでにいろいろな検査ができる機器を生産している。検査方法としては、抗体抗原反応を利用しているが、検査に使われている抗体も自社で開発したもので、高い価格競争力の源泉になっているようだ。いつでも、どこでも検査ができるような環境が整った今、手ごろな価格で医療サービスができるように世界を変えて行きたいと金議長は抱負を明かした。

(了)

 
(前)

関連記事