牧場直送の新鮮なミルクを使用　こだわりぬいた糸島ブランド『伊都物語』

（株）糸島みるくぷらんと

　糸島を拠点に活躍する酪農家が、知恵を出し合い、牛乳の消費拡大事業に取り組んでいる。その成果物の1つが、国内外で多くのファンを獲得しているのむヨーグルト『伊都物語』だ。人気商品の誕生までに、一体どのような物語があったのだろうか―。

糸島みるくぷらんと物語

代表取締役　宮﨑 英文 氏

　牛乳の過剰供給を律する目的で、1979年、生産調整が実施された。酪農家は余剰牛乳を廃棄せねばならず、苦しい状況に立たされてしまう。「搾りたてのおいしい牛乳を、消費者に直接届けたい」―自分たちの力で苦境を乗り越えようとする強い意思は、糸島の酪農家の間で共有され、消費者と交流の機会を得るために、「牧場まつり」が企画・開催された。89年のことである。そして、1万人を超える消費者を集めたこの牧場まつりの成功体験が、（株）糸島みるくぷらんとの設立へとつながっていく。
　「糸島みるくぷらんとは92年、34名の酪農家と、ふくおか県酪（農協）協力のもと設立されました。最初の10年間は、商品は牛乳のみ。1種類だけの商品構成でしたが、その分、品質には徹底的にこだわり抜きました。搾りたての生乳に近い風味を残すために、低温殺菌（63℃30分）で脂肪破壊を行わないノンホモジナイズの牛乳をつくることにして、製造はノウハウをお持ちの『村山みるくぷらんと（所在地：佐賀県唐津市）』にお願いしました」（宮崎代表）。

　糸島の酪農家による牛乳の販売会社として活動をスタートした同社は、設立20周年となる2012年に株式会社化をはたした。企業理念として「本物」=おいしさの追求、「安心」=人々の健康を担う、「優しさ」=環境に配慮した商品づくりを掲げ、18年現在、高品質の牛乳を原料とした多種多様な商品を提供するほか、製造も自社で手がけられるまでに成長した。

2017年6月に竣工した糸島工場

　「新潟県に本社を置くヤスダヨーグルトとの出会いが、のむヨーグルト『伊都物語』誕生のきっかけになりました。そして、のむヨーグルトの販売開始が、ヘルスケアブームの市況にうまく乗ったことで、弊社の業績も向上していきました。本社工場での直売を始め、JA糸島産直市場『伊都菜彩』での販売など、商品の提供場所は徐々に増えていき、自社ホームページの充実を図ることでネット販売も強化。販売網は糸島から全国へと広がっていき、05年からは香港、台湾、シンガポールと、順次アジア市場を見据えて海外への販路拡大にも注力しています。1つひとつの取り組みが功を奏し、17年には国の6次産業化ネットワーク活動交付金事業を活用するかたちで糸島に工場を新設し、念願の自社製造が可能になりました。これからも、こだわりの商品の製造・販売を通じて、1人でも多くの方に糸島の牛乳のおいしさを知ってもらえるように尽力していきます」（宮崎代表）。

広がりをみせる伊都物語

　糸島工場では、1日に4tのヨーグルトを製造することができる。伊都物語の生産体制の強化は、“糸島ブランド”の知名度アップに間違いなく貢献するものだ。
　「糸島工場で生産を開始してから、容器をこれまでの紙パックから、プラスチック製のボトルタイプに切り替えました。ちょっとした変更点ではありますが、『飲みやすくなった』『保管しやすくなった』と好評です。これからも感謝の気持ちを忘れずに、お客さま目線で、こだわりの商品づくりを続けていきます。新商品に関しては、定期的に役員・社員で新しい商品案を出し合いながら取り込んでいます。牛乳焼酎や、同じ糸島の特産品である『あまおう』とコラボしたのむヨーグルト、珍しいところで、ヨーグルト石鹸などのスキンケア商品も提供させていただきました」（宮崎代表）。

　糸島産の新鮮でおいしい牛乳を基に、6次産業化も着実に進める糸島みるくぷらんと。「搾りたてのおいしい牛乳を、消費者に直接届けたい」という酪農家たちの思いは、伊都物語として結実し、国内外で認められるブランドにまで成長した。その成果は、糸島の農畜産物の消費拡大というかたちで、地元へ還元されていく。『日本一おいしいヨーグルト』を目指す同社の物語は、これまでも、これからも、糸島とともに続いていく。

充実のラインナップ

【代　源太朗】

＜Company Information＞
代　表：宮崎　英文
所在地：福岡市西区周船寺1-13-4
糸島工場：福岡県糸島市篠原283-1
設　立：1992年1月
資本金：2,000万円
U R L：http://www.itomonogatari.com​