2024年04月26日( 金 )

新局面を迎えた中国の「一帯一路」経済圏構想(後編)

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 NetIB-Newsでは、「未来トレンド分析シリーズ」の連載でもお馴染みの国際政治経済学者の浜田和幸氏のメルマガ「浜田和幸の世界最新トレンドとビジネスチャンス」から、一部を抜粋して紹介する。今回は、2018年7月6日付の記事を紹介する。


 言うまでもなく、中国の目指す「一帯一路」新経済圏にはヨーロッパに限らず、中東やアフリカも含まれる。昨年、1500人のお供を連れて日本を訪問したサウジアラビアのサルマン国王だが、東京から北京に移動すると、中国との間で日本以上に経済、軍事の両面にわたる協力関係の強化に努めた。

 特に、新疆ウイグル自治区などにイスラム教徒を多数抱える中国にとってはサウジアラビアの持つ治安関連情報と影響力は是が非でも手に入れたいもの。既にテロ対策を専門にする特殊部隊の合同演習も始まった。現代版シルクロードの成功には周辺の治安維持が欠かせないからだ。

 他方、脱石油社会への変革を模索するサウジは「サウジ・ビジョン2030」を打ち出している。実は、この中期・長期計画にとって、習近平の「一帯一路」は補完効果が期待できるため、両国は50を越える協力プロジェクトに合意した。

 独裁的な王室体制には内外から懸念の声も上がっているサウジとは共通点も多く、サルマン国王は習近平主席との間では日本で見せた以上の笑顔を振りまいていた。トランプ大統領の下で、「アメリカ第一主義」と銘打った孤立主義に走りそうなアメリカと対照的に、サウジアラビアも中国もこの「一帯一路」と「サウジ・ビジョン2030」を合体させることで、より開かれた通商貿易体制をアピールしようと試みている。

 昨年、北京で開催された「一帯一路」国際サミットを成功させるため、習近平指導部は準備に万全を期してきた。日本からは経団連の榊原会長はじめ、安倍総理の補佐官も二階氏に同行する形で参加。これまで日本企業はこの「一帯一路計画」には関心は寄せてきたものの、具体的な関与については「様子見」状態であった。しかし、前回のサミットをきっかけに流れが変わり始めた。

 日本では認識されていないが、中国が標榜する「パートナーシップ相手国」に日本は含まれていないのである。習近平国家主席が海外を訪問する際、訪問先の国との間で「パートナーシップ関係」にあるかどうかが、常に話題となる。残念ながら、日本と中国は「戦略互恵関係」にはなっているが、「パートナーシップ相手国」にはなっていない。

 実は、「一帯一路」計画こそ、そうしたパートナーシップ相手国を増やしたい中国にとっては、是が非でも参加国を更に増やす上での最大の外交上の武器と位置付けられているのである。いわゆる経済大国でパートナーシップ相手国となっていないのは日本を除けばアメリカのみである。

※続きは7月6日のメルマガ版「新局面を迎えた中国の「一帯一路」経済圏構想(後編)」で。


著者:浜田和幸
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