2024年05月09日( 木 )

21世紀は東西・南北逆転して「アジア力の世紀」へ!(後)

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筑波大学大学院名誉教授 進藤 榮一 氏 

「一帯一路」構想で空間オーナスを空間ボーナスに変える

 ――17年11月30日に「一帯一路日本研究センター」が設立されました。その主旨について簡単に教えていただけますか。

▲筑波大学大学院 進藤 榮一 名誉教授

 進藤 「一帯一路」構想がもつ意味は大きく3つあります。1つは、2008年のリーマン・ショック、09年の世界通貨危機の戦後処理としてアジアを軸に生まれたマーシャルプラン(※1)の21世紀版です。2つ目は、マーシャルプランとの相違点です。マーシャルプランは基本的に軍事同盟(NATOなど)とセットになっていました。しかし、「一帯一路」構想は軍事同盟ではありません。21世紀型の経済社会的Win-Winのパートナーシップを基軸としています。1955年のバンドン会議(※2)の精神「世界平和と協力の推進」を受け継いでいます。3つ目は「社会ボーナス」という側面です。アジア、ユーラシア大陸の国々は、政治、経済、教育、文化などの面で、発展が遅れています。中国でも、沿岸地域といわれるところだけが発展し内陸部はまだ遅れています。

 習近平主席は、2013年にカザフスタンで「陸のシルクロード」、インドネシアで「海のシルクロード」構想を打ち上げました。一帯一路構想は、国境を越えた連結性(コネクティビティ)の建設強化を基軸に、遅れた地域と進んだ地域を連結させます。「ヒト・モノ・カネ」そして知識を運び、人口など遅れた地域のさまざまな空間・社会オーナス(重荷・負担)を空間・社会ボーナス(財産)へと転換させることができます。ユーラシア大陸復興の起点となって、アジア繁栄のための不戦共同体構築の道を拓こうとしているのです。

 一帯一路日本研究センターも、そのような大きな流れのなかで、(一財)国際貿易投資研究所(ITT 国際貿易投資分野における日本随一の政策シンクタンク)と提携し、一帯一路建設への国際政策協力と啓蒙戦略研究、法務ビジネス支援の日本における結節点としての役割をはたしていくつもりです。 

(了)
【金木 亮憲】

※1【マーシャルプラン】
第2次世界大戦で被災した欧州諸国のために、アメリカ合衆国が推進した復興援助計画。
※2【バンドン会議】
1955年インドネシアのバンドンで開かれたアジア・アフリカの29カ国による会議。「世界平和と協力の促進」の共同宣言(バンドン10原則)を決議し、民族解放、国際連帯の運動に寄与した。

<プロフィール>
進藤榮一(しんどう・えいいち)
北海道生まれ。1963年京都大学法学部卒業。同大学大学院法学研究科博士課程修了。法学博士。筑波大学教授、ハーバード大学、プリンストン大学などの上級研究員、早稲田大学アジア研究機構客員教授などを歴任。現在は、筑波大学名誉教授、アジア連合大学院機構理事長。専門はアメリカ外交、国際政治経済学。著書に『アジア力の世紀』、『分割された領土』(ともに岩波書店)、『東アジア共同体をどうつくるか』(筑摩書房)、『現代アメリカ外交序説』(創文社、吉田茂賞受賞)、『アメリカ帝国の終焉』(講談社)など多数。

(前)

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