2024年03月28日( 木 )

日本国民として弾劾する日本相撲協会の違法行為(1)

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青沼隆郎の法律講座 第18回

国民は、公益財団法人が所轄庁の管理監督を受けるということは知っているが、具体的に、どのような法令・定款の規定に基づき、どのような方法手順によって行われるかまでは知らない。私は、それを具体的に解説し、日本相撲協会(以下、協会)がいかに違法行為を行っているかを法律・論理で証明したい。

1 公益法人の管理監督の一般的構造
一 定款における事業年度の規定
 
協会の定款には事業年度の規定がある。それによれば、協会の事業年度は1月1日に開始し、12月31日に終了する(定款第7条)。

二 事業計画書・予算と事業報告書・決算の作成提出義務
 
理事長は、事業年度の開始前に年度事業計画書を理事会および所轄庁に提出し(定款第8条)、年度終了後速やかに事業報告書を同様に提出する義務がある(定款第9条)。ただし、定款上の文言では所轄庁への提出義務までは読み取れないが、公益認定法第22条には、提出義務が規定されている。

 つまり、監督官庁は公法人に事前および事後に業務執行に関する書類資料のすべてを提出報告させ、これにより、公法人の管理監督を行っている。とくに、事後報告である事業報告書と決算書には監事の監査報告書の添付が義務づけられている。

 法令上はこれらの書類(とくに附属明細書類を含むことが重要)を「財産目録など」と称し、一般の閲覧に供することが義務づけられている(認定法第21条)。

 つまり、監督官庁は公法人に事前および事後に業務執行に関する書類資料のすべてを提出報告させ、これにより、公法人の管理監督を行っている。とくに、事後報告である事業報告書と決算書には監事の監査報告書の添付が義務づけられている。

 以上の法令・定款の規定に基づき、協会が本年7月に制定したとされる「全親方が5つの一門に所属すべき義務を定めた規則」について考察する。

 念のため、同規則の法性決定(法的には何に該当するかの判断)をすれば、それは事業計画書に関する附属明細書類に該当する。

 協会の弁明によれば、同規則は一門への助成金の透明化のために必要な規定として制定したというから、本年度の事業計画書の一項目に一門への助成金の管理強化目標とそのための規則制定が記述されていなければならない。

 従って理事長以外の者、とくに貴乃花親方(当時は理事)が知らないということや、規則の正確な内容をいまだに誰も知らないということ(つまり事務所に備置し一般の閲覧に供する義務の不履行)などあり得ない。これは、同規則が、制定手続において法令定款違反であることを明白に示す。

 このように、同規則はその出自に違法犯罪の可能性があるところ、その事後報告である事業報告書には、その制定合理性の説明、とくに、法的には正体不明である一門への助成金支給の正当な理由をいかに監督官庁に説明報告するかが残っている。

 私見では、同規則制定の事実すら隠蔽して事業報告する可能性が高い。なぜなら、同規則の「一門への助成金の支給」そのものが法令定款違反であるうえ、百歩ゆずって、助成金の管理と全親方の一門所属義務とは論理的には無関係だからである。

 結局、同規則の“非公開・隠密裏”の制定は、貴乃花親方に対する「告発状は事実無根との自白強要」の手段にすぎない犯罪行為と断定せざるを得ない。

 かくして、取り下げたにも拘わらず、協会が告発状を事実無根としなければならない隠された事情が存在することが判明した(その事情は第10項で詳論する)。

 さて、上記の監督官庁による不正防止手段の最大の欠点は何か。それは2つある。1つは、不正犯罪が行われた時点、発覚した時点で、監督官庁がそれを認知できないこと、被害者や第三者などからの告知手段が法律で明定されていないことである。そのため不正理事・理事会に犯罪の隠蔽加工の時間的余裕があることである。まさに事実無根自白強制はこの一例である。

 2つは、これが致命的な欠陥であるが、事業報告書で協会が虚偽報告、事実隠蔽をした場合、それを見抜く手段がないということである。つまり、一般社団財団法・公益認定法などの法制は完全なザル法ということである。

 しかし、今回このザル法の法治国家に鋭い批判の矢を向けた人が出た。それが貴乃花親方であり、親方の告発状である。親方はこのザル法の横行する法治国家に、どの国会議員もなしえない批判の一矢を放ったという意味でもうすでに国民の期待する国会議員である。

(つづく)

<プロフィール>
青沼 隆郎(あおぬま・たかお)

福岡県大牟田市出身。東京大学法学士。長年、医療機関で法務責任者を務め、数多くの医療訴訟を経験。医療関連の法務業務を受託する小六研究所の代表を務める。

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