2024年03月29日( 金 )

道の駅運営業者、行政から破産申し立てられる~背景に経営権をめぐるトラブル

記事を保存する

保存した記事はマイページからいつでも閲覧いただけます。

印刷
お問い合わせ
三興の入居していたビル

 ビル管理や不動産賃貸、レストラン経営などを手がけていた(株)三興(本社:大阪府豊中市、櫻田好士社長)が2018年12月21日に債権者の奈良市より大阪地裁へ破産手続きを申し立てられた。負債総額は約14億5700万円。地元メディアがこの破産を報じたのは、三興とその関連会社が長年、奈良市針町の道の駅「針テラス」の運営・維持管理を担っていたためだ。三興は道の駅の土地所有者である奈良市に対し、土地使用料の支払いを滞納していたことから、債権者である奈良市から事業契約を解除されるとともに、破産を申し立てられる事態となった。

 ビルメンテナンスと賃貸業を軸に安定した事業基盤を構築していたが、近年、収益面は低調に推移。過年度の赤字経営により行き詰まったのは間違いないが、その裏では納税を目的とした資金調達を発端としたトラブルが発生していた。昨年4月に大幅な役員交代が行われていたが、元代表は「事実上の乗っ取りだ」と真相を語った。

 三興は兵庫県三田市の市議経験のあるAが創業。建物賃貸業や建物管理、清掃などビルメンテナンスを軸に業歴を重ね、道路清掃や道の駅運営にも参入した。創業者の子息が代表取締役に就任して以降、2人代表として、会社経営に関わることになったが、実権を握っていたのはあくまで創業者のAだった。

 複数の関係者によると、長年のワンマン経営が結果的に会社を苦しめることになったという。近年は消費増税や人件費の高騰の影響を受け、コストがかさみ収益面が低調に推移していた。経営立て直しを図ろうとしていた矢先に発覚したのが、税金滞納による資産差し押さえ通告。

 2017年秋、対応のため資金調達を画策していたが、金融機関からの調達が頓挫。知人を通じて、民間からの資金調達を行い、差し押さえは逃れたのだが、そこからトラブルは拡大していった。

 資金調達先への返済をめぐり、さらに別のところから借り入れを繰り返すことになり、雪だるま式に借金が膨らんだ。さらには担保として不動産のほかに、株式を譲渡。株式の譲渡先が別会社に債権を譲渡したことで、株式は取引のない第3者へ移ってしまい、創業一族は経営権を失うことになった。一族は役員から退任させられることになるが、元代表は「全株式を担保提供した覚えはない」などとして、提訴(後に取り下げされている)。

 新たに舵取りを始めた経営陣は従業員に対し、再建を公言していたというが、実態は不明。昨年4月に一新された役員らは、マンション管理業者登録や建設業許可など事業に必要とされる許認可において、役員などの変更届を怠っていたことも判明しており、事業継続の意志があったのかについても大きな疑問が残ったままだった。この破産の裏で何が起きていたのか、後日、関係者の証言を基に詳報したい。

【東城 洋平】

関連記事