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2019年01月16日 08:01

雄大な富士山を眺めながらココロとカラダをリフレッシュ 静寂さのなかで、マインドフルネスを体感(中)

 ―山本先生は、「現代人が抱えているストレス性疾患、不定愁訴などの原因の1つに自然欠乏症候群がある」と指摘されています。その治療の場として大自然のフィールドを生かせる朝霧高原を選んだわけですね。

 山本 ご指摘の通りです。欧州を視察している際、現地の医療スタッフから疑問を投げかけられたことがあります。それは「日本は自然が豊かなのに、なぜ自然療法施設が少ないのか?」というものでした。確かに日本は、国土の70%が森林であり、3万カ所以上の源泉があり、しかも海に囲まれ、河川が豊富な国です。この豊かな自然を医療に生かしていない。欧州の医療人はこう見ていたようです。

朝霧高原診療所 院長 山本 竜隆 氏

 「人間は、自然から遠ざかるほど、病気に近づく」―。医学の父、ヒポクラテスはこんな言葉を残しています。これは医療哲学の原点であり、欧州の自然療法施設が掲げる理念の基盤となっている言葉といえます。自然環境に身を置き、自然治癒力を取り戻す医療を志向し始めた私が、注目したのがフランスの「ミリューセラピー」です。「ミリュー」とはフランス語のMikieuから派生したもので、真ん中、中間、環境とか境遇、社会、空間として自然環境や地球環境を指す場合もありますが、とくに人間を中心として取り巻かれる環境、人間の行動を志向させる空間といった意味があります。つまり、人間を取り巻く文化や生活を基盤とする風土、それに基づいて生きられる環境と言っても良いでしょう。

 ミリューセラピーにおいて重要な要素は、「時間の経過が感じられる」「自然の循環が感じられる」「五感を刺激して知覚を開き、心を開く」「瞑想できる」「人との交流を促進できる」などが挙げられます。『あなたの子どもには自然が足りない』の著者で、米国の著名なコラムニストであるリチャード・ルーブ氏は、ミリューの対極にあるのが、「自然欠乏症候群」だと提唱しました。これはヒポクラテスの考えに通じるものがありますが、それほど自然環境と病気とは、切っても切り離せない関係にあるといえるのです。

 ―自然との調和が崩れたことが、病気の温床になっているということでしょうか。

 山本 一言でいえばそういうことになります。自然欠乏症候群についてルーブ氏は、「自然から離れることで、人間が支払う代償として、感覚の収縮、注意力散漫、心身の病気、慢性疲労、衝動的行動、苛立ち、焦燥感などが現れる」と指摘しています。

 では、自然欠乏症候群にはどのような背景があるのでしょうか。人間は数千年、数万年という長きにわたって自然のリズムに従い生きてきた動物で、遺伝子にもその影響が深く刻まれています。太陽や月のリズム、四季の変化、自然素材の食材と衣服での生活。このように人工物がほとんどない生活様式をとってきました。

 しかし、産業革命を経て、近代化を推し進めてきた結果、自然界には存在しない化学物質が生活のなかに溢れてきました。今やどこに行っても電子音が鳴り、電磁波が私たちの周囲を覆っています。とくに東京などの大都会では、その傾向が顕著で、自然欠乏症候群も増加しています。

 私は現在、標高700mに広がる朝霧高原の山中で暮らし、近くに開設した朝霧高原診療所の院長として地域医療に携わっています。自宅には水道やガスはなく、薪ストーブで身体を温め、湧き水、井戸水で生活し、地場でとれた野菜で食事をしています。朝は日の出とともに目覚め、日が落ちるころには仕事をやめ、夜10時には就寝する。そんな自然と一体化した毎日を送っています。

 こうした自然と調和した過ごし方を皆さまに味わっていただきたいとの思いから、診療所とは別に滞在型施設を2カ所開設しました。1つは一般のほうが保養地として利用できる「日月倶楽部」。もう1つは、とくに企業の経営者の方などが個人的に利用いただける「富士山静養園」です。

 それぞれ2万坪の山林を整備したものですが、自然環境に抱かれる施設を目指していますので、極力手を加えないで自然の姿を生かしてつくりました。自然林や湧き水に恵まれた“自然とのつながりを戻す場”となっていますので、経営者や従業員の健康づくり、心身のリフレッシュに、ぜひ一度体験していただきたいと思います。

(つづく)

【取材・文・構成:吉村 敏】

<プロフィール>
朝霧高原診療所 院長 山本 竜隆(やまもと・たつたか)氏
医師、医学博士。専門は、一般内科、東洋医学、予防医学、統合医療。聖マリアンナ医科大学医学部医学科卒業、昭和大学大学院医学研究科博士課程修了。米国アリゾナ州アリゾナ大学医学部「統合医療プログラム Associate Fellow」修了。統合医療ビレッジチーフプロデューサー兼院長、聖マリアンナ医科大学予防医学非常勤講師、昭和大学医学部第一生理学非常勤講師、中伊豆温泉病院内科医長、(株)小糸製作所統括産業医・静岡工場診療所所長を経て現職。日本東方医学会学術委員、日本統合医療学会指導医、日本ホリスティック医学協会理事、メディカルハーブ広報センター理事、日本人間ドッグ学会認定指定医、日本医師会認定産業医、日本東洋医学会認定専門医、(一社)リラクゼーション業協会顧問医師、ほか。

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