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2019年05月29日 13:51

九州企業の衰退・勃興 平成を振り返る(6)

事業意欲への執着ではなく、金持ちへの執着に共通する経営者

再春館製薬所

 長谷川常雄氏の青汁との出会いを前述したが、本音を推測すると、「いやー凄い儲け口に出会った。この青汁でバシバシ稼ぐぞ!」であり、「日本人同胞の健康を守るための使命感に燃えねば」という考えは、まるでなかったのではないか!

 キューサイと同様、通販パイオニア・石鹸のヴァーナルの太田勝氏の生き様も刹那的なもので、その生涯は短命であった。その点、長谷川氏は賢く、金への執着が人の1万倍あり、上手に資金移転に成功した。ただし500億円を握ったとみられるのに85歳での逝去はもったいない。「はたして青汁は健康に役に立ったのか?」という疑問が湧いてくる。

 長谷川氏を師と仰いだ(株)やずやの創業者・矢頭宣男氏も「香醋」で当てた。本人は若くして急逝したが、残された妻女が事業を拡大させた。現金を300億円貯めたともいわれる(グローバル的資金活用もされている)。

 (株)エバーライフの創業者も企業売却で最低200億円を握ったと囁かれている。新日本製薬(株)のオーナーも的確な不動産を得ながら、多額の資産を形成した。青汁若葉の(株)アサヒ緑健も博多駅東にビルを買い占めている。この業種での成功の第一人者たちは、他業種と比較すると短期間でケタ違いの財産を貯め込んだ。

 この経営者たちに共通する面を挙げてみよう。(1)健康に貢献するという理念は皆無。健食=通販ブームに乗じてひと山当てようという意識が優先していた、(2)たまたま最初の商品がヒットしたが、次のヒット商品を発掘することができなかった、(3)だから職替え・廃業・企業転売も考えている、(4)環境が激変。機能性表示食品の整備は、結局のところ大手の独走を許すようになってしまった。中小企業が台頭できる可能性は薄れてしまったといえる。

 ただし、業界の名誉のために付け足すと、熊本にある(株)再春館製薬所は、ただ1社のみダントツの好調を維持している。『社会貢献、地位貢献』を本気で考える唯一の企業であろう。

 福岡では新日本製薬一社のみが上場に向けて気勢を発している。とにかく、この業種で成功した経営者たちは、福岡では過去に例がないほど短期間で莫大な蓄財をなした。しかし、今後は、もう二度とチャンスは来ないだろう。

ラーメン・もつ鍋・調味料と博多食が続々と日本、世界を席巻する

 明太子、健食=通販が下火になったとしても、嬉しいことに博多は次から次に食文化のスターが登場してくる。まず何よりも食材が豊富で、値段の割にクオリティーが高い。たとえば東京のお客さんの接待にイカの生きづくりをふるまうする。すると「イカがこんなに甘いとは知りませんでした」と皆さん感謝してくれる。さらに値段の面では「私の為に1.2万円のコース料理でもてなしてくれた」と勝手に思い込んでくれる。実際は6,500円コースなのだが――

 これが東京に行くと逆になる。東京側は「1.2万円の和食で接待してやっている。うまいだろう」という恩に着せた態度になる。こちらとしては「何かくさい。それに素材が新鮮さに欠けるな」と思わず嫌味を言いたくなる。東京の名誉のために追記する。価格帯が数段上のコースになれば、ご馳走が食べられ、「さすが江戸の料理はどこか違う。品格がある」と感心できる。福岡の6,500円コースの4倍の金額を払えば、満足するメニューに遭遇できるのである。要は博多・福岡の人たちは食材に恵まれているので、結果的に舌が肥えることになる。だから、博多で繁盛した店は東京で絶対に成功する。

 舌が肥えていない方々は、必ずと言っていいほど、博多の料理に感動する。そして、東京は福岡より市場が桁違いに大きいので、儲ける可能性が高い。福岡市中央区の警固で営業していた広島風お好み焼き店が20年前に東京赤坂に移転した。筆者は上京した際、2カ月に1回は、この店を覗くことにしている。店長はこの間、まったくかわらない。この店長は「警固時代から売上が3倍になりました」と自慢げに漏らす。

 そういうものなのだ。博多発の食べ物屋を東京のあちこちで見かける。新橋界隈を歩けば一蘭の看板がある。博多もつ鍋も目立つ。「博多を制した者は東京で成功する」というのが鉄則になりつつある。

 明太子が下降線をたどってきたからといって、博多の食文化が衰退し始めたとみるのは大間違い。博多ラーメンの人気は、明太子の落ち込みをカバーしている。「一風堂」「一蘭」の2大巨頭の動きだけではない。多種多様の博多ラーメン屋が活躍している。ニューヨーク・マンハッタンには博多ラーメン5社が進出しているようだ。東京を始め日本国内だけではないのである。海外へ飛翔している現実からみても、「福岡・博多」の名前を海外に知らしめる貢献度が博多ラーメンは高い。

 続いて東京を賑わせているのは「博多もつ鍋」で、通販でも人気を博している。地味ではあるが調味料も堅調である。東京でブランドを高めて全国的に普及させるという常套手段をとって人気沸騰なのが、「茅乃舎だし」である。販売するのは福岡近郊にある久山町の(株)久原本家だ。この調味料部門で福岡の企業が3社ほど活躍している。今や博多料理・食材の安全・信用・人気は絶頂である。さらなる上昇を促す意味でも、行政・民間が一体となって強化する戦略をとるべき業種といえる。

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