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2019年11月07日 09:30

イオンが描く戦略 パラダイムシフトの先に見据える未来(後) イオンの逆襲 

彌方策に明日はない

 いま、米国の百貨店や専門店の大量閉店や倒産が取りざたされているが、その理由は時代遅れになったビジネスモデルに改善という手段でしか対応しなかったからである。たとえば、普通にメーカーや問屋から仕入れて販売する小売業は40%の値入率を確保するのがやっとである。一方、販売管理費率は売り場面積あたりの売上が最盛期の半分程度に低下したこともあり、30%を大きく超える。逆に売上総利益率は30%に満たない。これに商品の減耗ロスなどが加わるからとても利益は見込めない。ここが50%程度の売上総利益を確保しているユニクロやニトリなどの製造小売業との決定的な違いだ。

 そんな従来型の仕入れ小売業が改善対策として、真っ先に思いつくのは安売りと経費節減である。しかし、それで状況が改善するほど現代の競争は甘くない。手にする結果は「縮小再生産」という先細りであり、その先には破綻が待っている。

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 【表2】はイオンのセグメント別の収益である。売上の75%近くを占める小売業の営業利益は全体の20%にも満たない。しかし、収益の大部分を占める小売がこのままでは問題が大きい。イオンが少子高齢化が進む国内市場の頭打ちを見込んでアセアン事業を立ち上げたのもまさに大黒柱に車の発想である。とくに南アジアの国々は若い世代が多く、今後の高い経済成長も見込める。中国同様カントリーリスクの問題もあるが、それを押し切って挑戦する勇気があるのがイオンである。

 2007年、イオンはカンボジアのアンコールワットの近くにシハヌーク・イオン博物館という施設をつくり、カンボジア政府に寄贈した。そこにはアンコールワットから発掘された280体近くの仏像が展示されている。そのあと14年、カンボジア王国の首相フン・センとの約束通り、首都プノンペンにイオンモールを出店した。さらに23年には3号店を出店する予定だ。

 2000年当時は大型小売施設が成立するための必要な国民所得3,000ドル以上の割合が10%程度のカンボジアだったが、近年のそれは50%を超え、今後も都市部を中心に大きな経済成長が見込まれる。多くの企業が注視しなかった途上国カンボジアに文化施設で地縁をつくり、それを事業に結びつける。ここにもイオンの強かな先見性が見て取れる。

さらに続くパラダイムシフト

 いま、先進国では店舗に行かない傾向が顕著である。リアルよりネット。そしてこの傾向は今後ますます強くなる。米国では遠くない将来、ショッピングセンター全体の20%が消滅するといわれている。ウォルマートやホームデポは店舗からECや配送センターへ主投資をシフトしている。逆にアマゾンはリアル店舗に手を伸ばしている。

 イオンの海外シフトや積極的なM&Aは「従来常識と成功体験を否定する」という抜本的な視点の変更を意味している。海外出店のような潜在リスクをともなうイオンの新たな試みは既存事業の単純継続のリスクに比べればそれを補って余りあるという見方もできる。

 本業のPB会社や商品部の独立、部門の分社化など組織責任をより明確にした新たな試みに着手している。売上規模としては世界に伍していくだけのポジションを確保したイオンの今後は注目に値する。問題は世界最大の小売業ウォルマートやHC最大手のホームデポなどが思い切った投資で積極的に取り組みを進めるネットショッピングへの挑戦だ。この部分ではイオンは現在のところ、後手に回っている。この部分の戦略が海外戦略の成否とともに、イオンの将来の命運を握っている。

(了)

【神戸 彲】

<プロフィール>
神戸 彲(かんべ・みずち)

1947年、宮崎県生まれ。74年寿屋入社、えじまや社長、ハロー専務などを経て、2003年ハローデイに入社。取締役、常務を経て、09年に同社を退社。10年1月に(株)ハイマートの顧問に就任し、同5月に代表取締役社長に就任。流通コンサルタント業「スーパーマーケットプランニング未来」の代表を経て、現在は流通アナリスト。

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